更年期に起こりやすいからだの不調・トラブル(こうねんきにおこりやすいからだのふちょうとらぶる)

 更年期のからだの変調は、たいしてつらいと思わずにやりすごす人もいれば、日常生活に支障をきたすほどの人もいて、その現れ方はさまざまです。
 更年期障害は女性ホルモンの低下による生殖機能や自律神経の乱れによるだけでなく、人間関係などのストレスを含めた環境的要因も大きく作用し、それらに本人の性格などが複雑にからみ合って起こるのです。
 どんな症状がでることが多いのか、みてみましょう。

月経不順・無月経


 月経周期の乱れから、更年期に入ったことを自覚することが多いものです。しかし、その乱れ方は人によってさまざまで、それまで順調にあったものがある日突然なくなる人、周期が短くなり、頻繁にあってからなくなる人、逆に回数が減り、3か月に1回、半年に1回というふうに、だんだんになくなる人などです。この時期のこうした月経不順は、がんや炎症の心配がなければ気にすることはありません(月経の異常)。
 ただ、完全に閉経するまでは、まだ避妊の注意は必要です。


外陰部・腟の萎縮、乾燥


 ホルモンの減少により腟粘膜が萎縮し、分泌液が減り、乾燥感が起こります。黄色いおりものがふえ、かゆみが生じたりします。また粘膜も弱くなるために、少しの摩擦でも出血しやすくなります。腟内の抵抗力も弱まり、雑菌にも感染しやすく腟炎が起こりやすくなります。
 おりものに血が混じることもありますが、検査して特別な感染がなければ、更年期の症状です。
 気になる症状がある場合は、がまんせずに婦人科を受診し、薬を処方してもらうなど、どのように対処するかを相談しましょう。


性交痛


 性交痛は、エストロゲンの不足により、外陰部や腟が萎縮して起こります。多様な更年期障害のなかでも人に相談しにくく、がまんすることが多い症状といえます。
 しかし、これは治療で解決できる問題です。最初は痛みをがまんしていて、そのうちにセックスの拒否といったことになると、夫婦関係のトラブルにも発展しかねません。ちゅうちょせずに医師と相談し、ホルモン補充療法(更年期障害の治療法のいろいろ)をするとか、性交時にはゼリーを使用するなどの対処をしましょう。


乳房の萎縮・乳腺症


 加齢にともない乳房の張りがなくなり、萎縮がみられます。また乳腺症となり、乳房の痛みやしこりを感じることもあります。乳腺症は、乳汁を分泌する小葉に作用するプロゲステロンと乳汁を乳頭に導く乳管に作用するエストロゲン、この二つの女性ホルモンのバランスがくずれて起こりますが、乳がんとまぎらわしいので受診しましょう。閉経すると、乳腺症による、しこりと痛みはなくなります。


ほてり・のぼせ・発汗


 更年期障害といわれるもののなかで、もっともポピュラーな症状です。昼夜を問わず、突然カーッと顔や頭が熱くなったり、汗がだらだら出ます。数分ごとに起こる、あるいは1日に何回となく起こるという人もあれば、1日に1回ぐらいという具合で、人によりさまざまです。寝汗がひどく、夜中に何度も着替えることで安眠できないという人もいます。
 女性ホルモンの分泌バランスのくずれが、自律神経に影響を与えて起こります。甲状腺機能に異常がなければ、これ自体は心配のない症状ですが、本人にとっては非常につらいものです。婦人科で相談し、治療しましょう。


動悸・息切れ


 走ったり、興奮したりというように、とくに思いあたることがないのに、動悸がしたり、息切れが起こることがあります。ひとりでいるときに呼吸が苦しくなったりすると不安感が増し、日常生活に差しさわりを生じます。
 心臓の動きをコントロールする自律神経の乱れによるものです。しかし、狭心症心筋梗塞など心臓病に注意しなければいけない年齢ですから、検査が必要です。その結果、異常がなければ、睡眠を十分にとり、適度な運動を心がけましょう。


不安感


 更年期の症状は、肉体だけでなく、精神面にもでます。不安になったり、くよくよと考えたり、それらが高じてうつ症状(うつ病)が強くなることも。
 年齢的に、子どもの独立、親の介護、夫との関係の見直し、自分の健康の不安など、ストレスや悩み多き時期です。
 そこに、女性ホルモンの乱れが起こり、心身のバランスをくずすきっかけになるのです。婦人科や心療内科、精神科などで相談しましょう。


不眠


 不眠(睡眠の障害)もよくみられます。精神的な不安、また肉体的な冷えやほてり、発汗も原因だったりします。睡眠が十分でないと日中も体調が悪く、「またきょうも眠れないのでは」という悪循環で不眠が続きます。朝早く目がさめる、早朝覚醒も起こりやすくなります。
 カフェインのとりすぎ、また、元気をだそうとして飲む栄養ドリンクも、夕方以降にとると不眠の原因になります。その症状、原因に応じて、カウンセリングや適切な薬の服用で改善されますから、早めに受診しましょう。


イライラ


 自分ではなかなか気づかないものですが、更年期に入るとイライラして怒りやすくなることが多いようです。ホルモン分泌が急激に変化したときに起こりやすい症状で、月経前に気持ちが不安定になりやすいのと同じことです。
 友人や家族に指摘されたり、あとになってふり返り、気づくこともあります。家庭や職場環境などの心因的な要素もかかわっていますので、周囲の人の理解と協力を得て改善しましょう。


めまい・耳鳴り


 更年期には、血圧が変動しやすくなります。いままで高い人が下がったり、低い人が上がったりします。この血圧の変動にともない、めまいが起きたり、耳鳴りが起きたりします。
 めまいが起きるのではと不安が先立ち、外出をひかえる人もいます。それで、よけい家に閉じ込もることになり、精神的に落ち込んだりすることも多いのです。検査して特別な病気が原因でなければ、婦人科で相談しましょう。


肩こり・腰痛


 肩こり腰痛はもともと女性に多い障害ですが、更年期に入っていっそう強まるようです。パソコンなど目を使う細かい作業もそれを助長します。また、からだじゅうの関節が痛むという症状がどんどん強くなるようなら検査が必要。関節リウマチが疑われる場合もあります。しかしたいていの場合、女性ホルモンの不足から起こる、典型的な更年期症状といえます。婦人科で治療法を相談しましょう。血行をよくするために、入浴、ストレッチなども効果があります。


頭痛・頭が重い


 これも多い症状です。睡眠が十分にとれないと、悪循環でよけいに頭痛(女性によく起こる頭痛)や頭が重くなったりします。
 年齢的な視力低下での頭痛も考えられます。老眼がはじまっていたり、メガネが合わなかったりということもあるので、一度検査をしてみましょう。
 また高血圧や別の病気での原因も考えられることです。ほかの更年期症状にもいえることですが、症状がひどい場合は、症状が現れた部位の専門科でまず検査し、問題がなければ婦人科を受診し、治療の方法を相談しましょう。


疲労・倦怠感


 からだがだるく、疲れやすいという訴えも多いものです。以前ほどの気力がでないとか、スタミナがなくなったことを実感する時期です。
 この時期の疲労感は、ホルモンバランスの乱れから起こる一過性のものです。いまは休養の時期と割り切り、無理をしないことです。いままでどおりにやらなくてはとがんばり、結局できずに落ち込む場合も多いので、とくにからだに病気がなければ、あせらずに元気が回復するのを待ちましょう。十分な休養をとっても治らなければ「うつ」が起こっていることもあります。


意欲の低下・うつっぽい


 女性ホルモンが減少すると、もの忘れがひどくなったり、いままでのように意欲がわかなかったり、集中力が持続できなかったりすることがよくあります。これは、ちょっと小休止しなさい、無理をしてはいけませんというアラームサインと考えるといいでしょう。
 主婦も、仕事をしている女性も、女性はなかなか休みをとれないのが現実です。友人やまわりの人には休養を勧めても、自分を休ませるのはへた。良妻賢母であろうとがんばったり、職場でも仕事上での責任ある立場などで無理をしがちです。なにをすれば自分の心がいちばん軽くなるかを考えながら、ちょっとゆっくりしましょう。またホルモン補充療法(更年期障害の治療法のいろいろ)などを医師と相談するのもいいでしょう。


仕事の効率の低下


 いままで仕事をバリバリとこなしてきた人が、ふっと自分の仕事ぶりをかえりみると、ちっとも効率よくすすんでいなくてショックを受けたりします。話そうとすることがすぐでてこなかったり、シャキッとしたいのにできないとか、更年期障害のために仕事がスムーズにいかなくなる人がけっこういます。これは当事者には深刻な事態です。
 しかし、そうしたことを、自分に能力がないからとか、いたらないからと責めるのはやめましょう。加齢という年齢的なことだけでなく、ホルモン不足によるものもあります。医師と治療法を相談してみましょう。


冷え


 冷え症は、更年期だけでなく、若い女性にも多い症状ですが、更年期にはいままで冷えを自覚しなかった人までもが、急に感じたりします。
 ホルモンの乱れで、自律神経のはたらきも乱れ、血管の収縮、拡張の調節がうまくいかず血液の循環が悪くなるためです。それも、上半身はのぼせて暑いのに、下半身は冷えて、不快な思いをするのがこの時期の特徴です。
 ただ、貧血(鉄欠乏性貧血)や低血圧(低血圧症)、心臓病や甲状腺機能低下症(慢性甲状腺炎)で冷えがひどくなっている場合もあるので、まず検査をし、そのうえでからだをあたためる食事、入浴やマッサージ、適度な運動など、日常生活の中で血行をよくする対処法を考えます。


頻尿・残尿感


 更年期の冷え症の人によくみられるのが頻尿です。さっき排尿したばかりなのに、またいきたいということが起こります。更年期以降、膀胱や尿道の粘膜が薄くなったり弱くなるため、尿意を感じやすくなるのです。これは加齢とともに起こることで、ある程度しかたがないことですが、ホルモン補充療法((更年期障害の治療法のいろいろ)により症状がやわらぎます。
 しかし、残尿感があったり、排尿時に違和感や、痛みがある場合は、膀胱炎(尿路感染症)などの病気も疑われます。細菌感染がなく、ただトイレが近いというだけなら、冷え対策を含め、婦人科で相談しましょう。


尿失禁


 尿もれは、更年期以降の女性の3人に1人は悩んでいるともいわれます。この時期にみられる尿失禁の多くは、腹圧性尿失禁と呼ばれるもので、くしゃみやせきなどで、急にふんばったりしたときにもれるものです。出産や加齢による、尿道括約筋や、骨盤底の筋肉のゆるみや萎縮が原因です。
 筋肉を強める運動のほかにも治療法があります。医師と相談しましょう。


皮膚のかさつき・かゆみ


 皮膚の乾燥は、外陰部や腟だけでなく、全身に現れます。エストロゲンの不足は、コラーゲンの不足につながり、肌を衰えさせます。また、新陳代謝も低下し、皮膚の再生も鈍化します。そのため、少しの刺激にも反応し、手足、背中、腹などの皮膚がカサカサしたり、かゆくなったりするのです。
 症状がひどい場合は、皮膚科や婦人科を受診し、相談しましょう。アレルギーの場合もありますし、ストレスでかゆみがでる場合もあります。

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掲載された情報を参考に、気になる症状などがあれば、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

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