日常生活と赤ちゃんへの影響(にちじょうせいかつとあかちゃんへのえいきょう)

妊婦さんのからだは劇的に変化しています


 妊娠は病気ではありませんが、からだには急激な変化が起きています。
 胎盤ができるまでの妊娠初期(~4か月)はまだ不安定。流産(妊娠初期のトラブルと対処法)の心配もあり、赤ちゃんが無事育つかどうか、不安な時期です。ホルモンのバランスも大きく変わります。
 中期(5~7か月)は比較的安定していますが、しだいに赤血球や白血球、血小板がふえ、中性脂肪やコレステロール値が高くなります。
 後期(8~10か月)になると、赤ちゃんの体重は1日30~40gふえ、お母さんの体重は、妊娠前より10kg程度増加します。
 こうしたからだの変化は、心筋梗塞を起こす前のからだの状態と似ているほどです。多くの場合、妊娠中、なにごともなくすぎますが、妊娠したからだは妊娠前とはかなり変化していることを自覚して、日常生活では無理をしないことがたいせつです。

胎盤は赤ちゃんの生命の源、へその緒は命綱です


 子宮の中の赤ちゃんは、胎盤とへその緒を通して、お母さんの血液から酸素や栄養をもらい、二酸化炭素や不要な老廃物と交換しています。ほかにお母さんが持っている免疫も、胎盤を通して赤ちゃんに移行します。
 胎盤はいわば赤ちゃんの生命の源、お母さんと赤ちゃんをつなぐへその緒は命綱といえます。ただし胎盤は、赤ちゃんにとって迷惑なニコチンやウイルス、アルコール、薬なども通過します。お母さんは、つねにおなかに赤ちゃんがいることを考え、自分の食べたものや飲んだものが、胎盤を通して赤ちゃんに移行することを十分に認識して、赤ちゃんに悪い影響を与えるものは避けるようにします。

薬の影響


 妊娠に気づかずに薬を飲んでしまっても、妊娠4週より前であれば、赤ちゃんへの影響はありません。
 それ以降であっても、用法・用量を守って服用していれば、まず心配はありませんが、妊娠に気がついたらすぐに服用を中止し、薬の種類や量、使用期間を産婦人科医に伝えましょう。
 妊娠中に、かぜや頭痛、便秘など不快なことがあったら医師に相談し、産婦人科で薬を処方してもらうようにします。市販薬は効きめがおだやかなので、妊娠中に飲んでも問題のないものもありますが、自分で勝手に判断するのはよくありません。
 アレルギーやぜんそくなど、持病のために、長期にわたって薬を使用している人は、妊娠前に主治医に相談して、妊娠に向けて薬の使用を調整する必要があります(慢性疾患のある人の妊娠・出産)。
 また、産婦人科では妊娠中に、おなかの張りを止める薬や鉄剤など、妊娠経過や赤ちゃんへの影響を考えて、薬を処方することがあります。副作用を心配しすぎて服用しない人もいますが、それで妊娠に悪影響をおよぼす可能性もあるので、産婦人科でもらった薬はきちんと服用するようにしましょう。
 また、産後、授乳中に薬を服用すると、母乳を介して薬効成分が赤ちゃんに移行する可能性があります。妊娠中と同様、不快な症状があったら、産婦人科医に相談しましょう。


タバコの影響


 タバコに含まれる一酸化炭素やニコチンなどが、胎盤の血流を悪くするので、赤ちゃんに酸素や栄養素が届きにくくなります。その結果、胎内で十分に成長できず、低出生体重児が生まれる確率が高くなります。また、タバコを吸うお母さんには、早産(妊娠中期・後期のトラブルと対処法)、常位胎盤早期剥離、妊娠28週(8か月)以降の死産と、出生後1週間未満の赤ちゃんの死亡のことをいう周産期死亡が起こりやすいともいわれます。
 母親の喫煙はもちろん、まわりの人のタバコの煙も影響します。お母さんは禁煙し、まわりの人にも近くで吸わないよう理解を求めましょう。部屋に煙が充満しないよう、換気もこまめに。


お酒の影響


 アルコールは胎盤を通過するうえ、血液に溶け込むのが非常に速いので、お母さんがお酒を飲むと赤ちゃんもお酒を飲んでいるような状態になります。
 アルコール依存症のお母さんからは、発育異常、知的障害の赤ちゃん(胎児性アルコール症候群)が生まれやすいといった報告や、妊産婦の血液中のアルコール濃度が高いと、胎児や新生児の脳の重さや増加が抑えられることもあるという報告もあります。妊娠中の飲酒は望ましくありません。


予防接種の影響


 風疹(妊娠中に注意したい感染症)、はしか(麻疹)などの生ワクチンは、胎児に影響があるといわれていますが、妊娠中に接種して影響があったという報告はありません。インフルエンザやB型肝炎などの不活化ワクチンは、問題ないとされています。
 しかし、よほどの必要がないかぎり、妊娠中に予防接種はしないほうがいいでしょう。妊娠に気づかずに接種してしまっても、ほとんど問題ないでしょうが、医師には伝えましょう。


ペットの影響


 妊娠中にペットが問題になるのは、イヌやネコ、鳥などに寄生するトキソプラズマ原虫に初感染することです。妊娠初期に初感染すると、胎児が原虫に感染し、水頭症や知的障害を起こす先天性トキソプラズマ症になることもあるといわれます。はじめてペットを飼うのは、ひかえたほうが無難です。
 ペットを飼っている場合は、エサを口移しで与えないこと。糞や尿の始末をしたら、かならず手を洗いましょう。


レントゲン・電磁波の影響


 胸や歯のレントゲン撮影程度であれば、ほとんど胎児に影響ないと考えられますが、妊娠のことはかならず医師に伝えます。レントゲン撮影をするかどうかは医師が判断します。
 電磁波の胎児への影響は、まだ不明ですが、実際に電磁波の影響で形態異常の赤ちゃんが生まれたという報告は、いままでのところありません。


日常生活・レジャーの影響


 妊娠初期(~4か月)と後期(8か月~)は、からだにトラブルが起きやすい時期。はげしい動きや無理は禁物です。中期(5~7か月)は比較的安定期ですので、遊ぶならこの時期に。
 がまんしてストレスをためるのもよくありませんが、おなかに赤ちゃんがいることを自覚し、仕事も遊びも妊娠前の7割ほどにセーブしましょう。


食生活の注意


 妊娠中の食事は、
(1)いろいろな食品を、バランスよくとる、
(2)高たんぱく、低脂肪の食事にする、
(3)カルシウム、鉄分の多い食品をとる、
(4)塩分、糖分はひかえめにする、
(5)緑黄色野菜をとる、などを心がけます。
 こうした栄養バランスのよい食生活をすれば、サプリメント(栄養補助食品)をとる必要はありません。
 妊娠中に積極的にとりたい食品は、牛乳、乳製品、卵、肉類、魚介類、大豆製品、野菜、果物、海藻などです。
 ただ、牛乳や卵にアレルギーがある人は、魚や大豆製品などで代用します。果物は、果糖が多く含まれているので、食べすぎないように注意します。
 また、コーヒー、紅茶など、カフェインを含む飲みものは、1日1~2杯程度飲むぶんには問題ありません。チョコレートにも意外にカフェインが含まれているので食べすぎに注意します。


カロリーのとりすぎは難産のもと


 食生活で問題になるのは、カロリーのとりすぎです。肥満や妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)(妊娠中期・後期のトラブルと対処法)、妊娠糖尿病を引き起こしたり、難産になる可能性が高くなるからです。
 1日に必要なカロリーのめやすは、妊娠前期では1950kcal、後期で2150kcalです。出産時の体重増加のめやすは以下のとおりです。
●標準の人/プラス10kg以内
●太りぎみの人/プラス5~6kg以内
●太りすぎの人/なるべくふやさない
 理想は、標準的な体重の人で1週間の体重増加を300gに抑えることです。太りすぎないために、規則正しく三食とる、脂肪分、糖分が多い食品は避ける、ダラダラと間食をしない、からだを動かしてエネルギーを使うなど、体重管理をしっかりと行いましょう。食事日記をつけると栄養やカロリーの管理がしやすくなります。

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