妊娠中期(5~7か月)は、比較的安定した時期ですが、このころに妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)になると、重症化する危険性があります。またこの時期に早産をすると、赤ちゃんの生存率はかなり低くなります。安定期も無理は禁物です。
妊娠後期(8~10か月)になると、赤ちゃんの体重は1日平均20~30gふえます。子宮が急激に大きくなり、母体にかなりの負担がかかるため、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などのトラブルが起きやすくなります。また、早産や切迫早産も起きやすいので、出血、下腹部や腰の痛み・張りには十分注意しましょう。
妊娠後期(8~10か月)になると、赤ちゃんの体重は1日平均20~30gふえます。子宮が急激に大きくなり、母体にかなりの負担がかかるため、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などのトラブルが起きやすくなります。また、早産や切迫早産も起きやすいので、出血、下腹部や腰の痛み・張りには十分注意しましょう。
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)
妊娠20週以降産後12週までに高血圧を発症した場合を、妊娠高血圧症候群といいます。高血圧、たんぱく尿、むくみが症状としてあげられ、妊婦さんならだれでもかかる可能性がありますが、重症になると母子ともに生命にかかわるトラブルが起こるので軽視できません。定期健診を受け、早期発見につとめましょう。
症状
自覚症状でわかりやすいのはむくみです。1週間に体重が500g以上ふえたときも、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)を疑って受診しましょう。
原因
原因ははっきりわかっていませんが、妊娠によって生じる体内の変化に、母体が対応できずに起こる異常ではないかと考えられています。
母体と胎児への影響
重症になると胎盤の機能が低下して、胎児に十分な栄養や酸素が送れなくなります。そのため、子宮内で胎児が育たなくなったり、死亡したり、2500g以下の低体重児で生まれるおそれがあります。
また重症のケースでは、常位胎盤早期剥離を起こしたり、まれに子癇といって、母体が突然けいれんを起こして昏睡状態になるなど、生命にもかかわります。
治療
軽症の場合は、自宅で安静にします。からだを休めると心臓や腎臓の負担が減り、血流がよくなります。
水分はふつうにとります。とらないと、ますます血管内から水分が失われます。水分をとって、むくむようなら入院が必要です。
ほうっておくと肺に水がたまる肺水腫になり、呼吸ができなくなることもあります。早めの受診がたいせつです。
胎児が危険な状態になったときは、早産になっても人工的に陣痛を起こしたり、帝王切開で出産させます。
予防
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)は、なにより予防がたいせつ。以下のことを守りましょう。
・妊婦健診をかならず受ける。
・低カロリーの食事を心がけ、太りすぎに注意する。
・塩分摂取量を1日10g以下にする。
・青背魚や大豆製品など、高たんぱくの食品をとり、血管を強くする。
・過労やストレスを避け、睡眠を十分にとってからだを休める。
・散歩など、適度な運動をして血液の循環をよくし、肥満防止につとめる。
なお、家族に高血圧が多い人、太りすぎの人、糖尿病や慢性腎炎(慢性腎炎症候群)がある人などは、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)になりやすいので、とくに予防に気を配りましょう。
貧血
胎盤に栄養や酸素がいきやすくなるよう、妊娠9週をすぎると、血液中の水分がふえて、血液がサラサラになります。しかし、赤血球はそれほどふえないので、見かけ上、鉄欠乏性貧血に見えることが多いのです。
貧血かどうかの診断は、血液中のヘモグロビン値と、平均赤血球の容積を見て行います。ヘモグロビン値が9~11g/dl でも、見かけ上の貧血の場合は、鉄剤を飲む必要はなく、食品で鉄分を補えば十分です。
ただし妊娠8週以前で、ヘモグロビン値が12g/dl 以下の人は貧血です。
赤ちゃんへの影響
母体の貧血は、胎児に影響しないという説もあります。しかし、ひどい貧血の場合は、お母さんが疲れやすかったり、動悸・息切れがしたり、分娩時の出血でさらに貧血が悪化することもあります。鉄分を多く含む食品をとり、予防しましょう。
切迫早産・早産
早産は妊娠22週(6か月)以降、37週(10か月)未満に赤ちゃんが生まれることをいいます。切迫早産は、早産の兆候はあるのですが、まだ止められる状態をいいます。
症状
切迫早産の兆候は、おなかの張りと出血です。出血はおしるしくらいの量で、そう多くはありません。
おしるしは、陣痛などにより、子宮の入り口が少しずつ開きはじめ、赤ちゃんを包んでいた卵膜が、子宮の壁からはがれかかって起きる少量の出血のこと。
おなかの張りは、1日10回以上感じ、からだを横にして休んでもおさまりません。張りが陣痛のように規則正しくなると、早産の兆候です。
原因
腟内の雑菌が大きな要因と考えられています。妊娠すると、腟内が酸性から中性になり、雑菌が繁殖しやすくなります。雑菌に感染すると、卵膜が弱くなって破水しやすく、また、感染したことで子宮収縮が起こるともいわれています。
ほかの原因に、子宮口が自然に開いてしまう子宮頸管無力症があります。
赤ちゃんへの影響
切迫早産の場合、安静にすることで早産にならない人も多くいますが、子宮収縮が強くなり、早産してしまうケースもあります。また、胎児の状態が悪くなれば、陣痛を誘発して早産させることもあります。
妊娠22週は、生まれた赤ちゃんが生きられるぎりぎりのラインです。胎内にいる週数が短いほど発育が未熟ですから、生存率は低くなり、また頭蓋内出血、黄疸などの異常も起こりやすくなります。
治療
腟内の雑菌は、抗生物質で感染を抑え、周期的なおなかの張りは、子宮収縮抑制剤で抑えます。
予防
腟内の雑菌が原因の場合、雑菌を排除する自浄作用が弱い人が感染すると考えられます。これに対するあまり有効な予防法はないのですが、おりものの色、におい、量などに異常がみられたら病院でみてもらいましょう。
子宮頸管無力症の人で早産が起こりやすいと診断された場合は、妊娠4~5か月のころ、子宮頸管を結ぶ子宮頸管縫縮術を行います。
あなたへのひとこと
切迫早産の場合、たいせつなのは安静にして1日でも長く赤ちゃんが胎内にいられるようにすることです。自宅安静といわれたら料理程度のかんたんな家事以外は、できるだけ家族にかわってもらい、からだを休めましょう。
過労や冷えも子宮収縮を起こさせることがあります。十分に睡眠をとり、夏でもソックスをはくなどして、からだを冷やさないように注意します。
常位胎盤早期剥離
妊娠8~9か月(28~35週)ごろ、突然、胎盤がはがれます。子宮内での出血が多く、外に出る血液は少量です。
症状
はがれる部分が大きいと強い子宮収縮が起こり、おなかが板状にカチカチに張ってはげしく痛みます。
はがれた部分が小さくても、止血しようと子宮が収縮するので、早産とまちがわれることもあります。また、はがれたことに気づかないまま、ふつうに出産するケースもあります。
原因
妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などで胎盤に異常があったり、おなかを強く打つ(ころんでしまった!)など、外的な要因で起こることもあります。
赤ちゃんへの影響
胎児仮死や胎児死亡の危険がでてきます。子宮内で大出血が起こり、場合によっては、お母さんもショック死することがあります。
下腹部の激痛と出血があったら、一刻も早く病院へ。多くは、緊急帝王切開になります。
前置胎盤
胎盤が子宮口をおおっていたり、一部にかかっているのを前置胎盤といいます。胎盤の子宮口へのかかり方で、全前置胎盤、部分前置胎盤、辺縁前置胎盤に分けられます。
妊娠初期から中期ころに前置胎盤と診断されても、子宮が大きくなるにつれて胎盤が子宮口からはずれてくることも少なくありません。ふつうは妊娠28週以降に前置胎盤の診断がされます。
症状
問題は胎盤がはがれて出血したときです。出血は、妊娠8か月ころ、おりものが下りるような感じで突然起こります。下腹部の痛みはありません。
原因
妊娠8か月ころになると、子宮が分娩の準備をはじめ、生理的に子宮収縮が起こります。そして子宮の入り口がやわらかくなったり子宮頸管が短くなるので、入り口近くにある胎盤が子宮壁からずれて出血が起こるのです。
赤ちゃんへの影響
胎盤の大部分がはがれて大出血すると、母児ともに危険になるので、帝王切開をします。
治療
出血がひどく母体が危険ならば輸血や緊急帝王切開を行います。胎児が母体外での生活が不可能なときは、胎内にいられるような治療を行います。
あなたへのひとこと
前置胎盤かどうかは、超音波検査でわかります。前置胎盤と診断されたら、いつ出血が起きても対応できるように、心の準備やまわりへの説明をしておきましょう。
前期破水
破水は、赤ちゃんや羊水を包んでいる卵膜が破れて、羊水が流れ出ることをいいます。正常な破水は、陣痛がはじまってから起きますが、子宮口があまり開いていなくて、陣痛もないのに破水することがあります。それが前期破水です。
症状
生あたたかい、水のようなものがバシャッとたくさん出ることもあれば、チョロチョロと少量ずつ出る破水もあります。
尿もれと区別がつきにくいこともありますが、破水は自分の意思では止められないこと、また、少し生ぐさいにおいがすることなどでわかります。
原因
腟内が細菌に感染して、腟炎などを起こし、卵膜が破れるのが大きな要因と考えられています。
赤ちゃんへの影響
早産の約30%は前期破水が原因といわれるように、破水すると陣痛が起きやすく、早産になる確率が高くなります。
また、胎児が、細菌感染する危険性もでてきます。
治療
妊娠週数、陣痛があるかどうか、胎児が細菌感染しているかどうかによって、早産させるか、妊娠を持続させるかを決めますが、施設や医師によって見解が異なります。
あなたへのひとこと
入浴やシャワーは禁物です。清潔なナプキンなどをあてて、すぐに病院へいきましょう。
さかご(骨盤位)
ふつう、赤ちゃんは妊娠30週(8か月半ば)をすぎると頭を下にした姿勢(頭位)をとりますが、なかには足やおしりが下にくることもあります。それがさかごで、出産時の妊婦さんの約5%にみられるといわれています。
原因
多くは原因不明ですが、前置胎盤や、子宮筋腫があるときなども原因になります。
赤ちゃんへの影響
前期破水を起こしやすく、早産の危険性が高いといわれています。胎児がおしりから出る場合は経腟分娩をすることもありますが、足が下にあって頭が最後に出る場合は、難産になりやすいので、多くは帝王切開になります。「さかごはすべて帝王切開」という病院もあります。
あなたへのひとこと
妊娠30~32週のころ、さかご体操(胸膝位)をすると効果があるようです。ただ一般的に、胎児の動きが固定する妊娠34週以降は、効果がないと考えられます。
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