スポーツによる障害(すぽーつによるしょうがい)

子どもの骨、筋肉、靭帯は損傷しやすい


 スポーツの普及とともに、子どものスポーツ人口もふえ、幼児期から、野球、サッカー、スイミングなど、大人顔負けの練習をする姿が見られます。
 同時に、子どものスポーツ障害も多く発生し、楽しみのためのスポーツが、子どもたちに肉体的・精神的苦痛をもたらしていることも指摘されています。
 子どもは大人のミニチュアではありません。成長過程にあり、できあがった大人とちがった体の特徴があります。
 たとえば、身長の伸びがさかんな時期には、骨のかたさが十分でなく、骨より靭帯のほうが強いので、外からの力が加わったときに、靭帯は切れずに骨がこわれやすくなっています。
 筋肉は細く、筋力が弱いため、同じ動作をくり返し行うと、疲労しやすくなっています。
 しかも、思春期前期では、手足の骨はどんどん成長するのに対して、筋肉の成長が遅れ、アンバランスな状態にあります。そのため、過度なスポーツをすると、骨と筋肉の付着部分に炎症を起こしやすいという特徴もあります。
 一方、小さいときから外遊びが少なく、運動不足気味の子どももふえています。そのため、昔の子どもにくらべて、急に走ったり、方向転換をしたり、高くとぶなどの瞬発力に欠ける傾向があります。ころんだときに、手を地面につけて体を防御することができないなど、反射神経が鈍い面もみられます。
 そうした運動機能の未熟さが原因となる事故もかなり見受けられます。
 また、大人が子どものスポーツに必要以上に介入し、子どもの発育を無視したトレーニングを長時間行ったり、細かい技を教え込んだり、出来不出来を評価したりして管理することにより、けがや故障が生じることがあります。
 子どものスポーツ障害には、骨、筋肉などの体の故障だけでなく、食事や汗をかく運動のしすぎなどによる鉄欠乏性貧血(「鉄欠乏性貧血」)、あるいは頭を打って起こす脳震盪、高温多湿のなかで練習することによって生じる熱中症(「熱性障害(熱中症)」)など、内科的障害も含まれます。
 さらに、1つの目的に向かって猛練習を続け、その目標を達成してしまうと虚脱状態になる、いわゆる燃え尽き症候群、親や指導者が勝敗にこだわるあまり精神的に追いつめられるなど、心にも障害が現れることがあります。

子どもに多いスポーツ障害


身体に起こる障害


 上肢では、リトルリーグ肩(上腕骨近位骨端線離開)(「リトルリーグ肩・野球肩」)、野球肘(内上顆骨端線障害・離断性骨軟骨炎)(「野球肘」)、肩関節脱臼・亜脱臼(「脱臼」)が多く、骨折(「骨折」)では、鎖骨骨折(「鎖骨骨折」)、上腕骨骨折、肘骨折、前腕骨骨折(「前腕骨骨折」)、手首や指の骨折(「手指の骨折」)などがみられます。
 下肢では、下腿のジャンパー膝(「ジャンパー膝」)、オスグッド・シュラッター病(「オスグッド・シュラッター病」)、膝蓋骨亜脱臼症候群(「膝蓋骨亜脱臼症候群」)、脛骨の疲労骨折(「脛骨の疲労骨折」)、シンスプリント(「シンスプリント」)、アキレス腱炎(「アキレス腱炎」)が多く、足には、中足骨の疲労骨折(「中足骨の疲労骨折」)、踵骨骨端症(「踵骨骨端症」)、有痛性外脛骨(「有痛性外脛骨」)、足底筋膜炎がしばしば生じます。そのほか、腰の障害として、脊椎(腰椎)分離症(「脊椎(腰椎)分離症」)、(腰椎)椎間板ヘルニア(「(腰椎)椎間板ヘルニア」)があげられます。
 15~16歳ころまでの成長期は、一部分だけに負担がかからない全身運動で、発育・発達をうながすようなスポーツが理想です。また、なるべく多くのスポーツを経験させることが大切です。

内科的なスポーツ障害


 スポーツ中にころんだり、衝突したりして頭を打ち、気を失う脳震盪、炎天下で運動し、運動中あるいは運動後に、体温が急上昇して意識を失ったり、けいれんを起こしたりする熱中症、運動で多量に汗をかいて起こる鉄欠乏性貧血が、内科的なスポーツ障害の代表的なものです。
 脳震盪は、すぐに意識がもどれば、多くは問題ないとされますが、意識がなかなかもどらなかったり、けいれんを起こしたり、呼吸が不規則なときは、すぐに救急車を呼ぶ必要があります。
 熱中症は予防が大切で、高温多湿な環境での運動は行わないことです。

精神的なスポーツ障害


 野球、サッカーなど競技的なスポーツになると、子どもばかりか周囲の大人も熱中し、レギュラーになることや、試合の勝敗にこだわるようになります。
 その結果、子どもを追いつめ、子どもは劣等感を抱いたり、落ち込んだり、スポーツが嫌いになったりします。逆に、強ければよい、勝てばなにをしても許されるなど、自己中心的な考え方をする子もでてきます。
 子どものころはスポーツを楽しむことが第一です。勝敗に必要以上にこだわらないように、大人が十分に配慮すべきです。
グラフ「おもなスポーツ外傷・障害の頻度」

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