感染症(かんせんしょう)

病原微生物が体内に入って増殖する病気


 病原微生物(病原体)が体内の臓器や組織に侵入して増殖し、生体になんらかの反応をひき起こすことを感染といい、その結果起こってくる病気を感染症といいます。また、感染しても、発病しないことがあり、これを不顕性感染といいます。
 感染症の原因になる病原体は、ウイルス、細菌、真菌(カビ)、原虫、寄生虫などで、細菌には一般の細菌、マイコプラズマ、クラミジア、リケッチア、スピロヘータなどが含まれます。

感染経路はいろいろ


 病原体が人体に侵入する経路を、感染経路(ルート)といいます。
 感染経路には、病原体を保有する人や動物、土壌などから直接感染する場合(直接感染)と、空気、水や食べ物、物品、ほかの動物などを介して感染する場合(間接感染)があります。
 さらに、直接感染には、つぎのような感染経路があります。

●飛沫感染


 せき、くしゃみなどの、口から飛ぶしぶきが、口や鼻から侵入して感染する場合です。インフルエンザ子どもの感染症)、風疹(子どもの感染症)、百日ぜき(子どもの感染症)などは飛沫感染します。

●接触感染


 感染源となる人や動物と皮膚接触したり、かまれる、ひっかかれるなどで感染する場合で、性感染症、炭疽(馬、牛、ヤギ、豚などの糞や土壌に含まれる炭疽菌が、感染動物との接触や肉の摂取などで感染する病気。ニューキノロン系、テトラサイクリン系などの抗生物質で治療します)、ネコひっかき病などは接触感染します。

●垂直感染


 母親の胎盤から胎児に感染したり、生まれてくるときに産道で感染する場合で、エイズ梅毒、B型肝炎(急性肝炎)などです。
 また、間接感染には、つぎのようなルートがあります。

●空気感染


 空気中に浮遊する病原微生物の小粒子を、鼻や口から吸い込むことで感染する場合です。結核(肺結核)、はしか(麻疹)(子どもの感染症)、水ぼうそう(水痘)(子どもの感染症)などは空気感染します。

●媒介物感染


 タオルやおもちゃなどの物品、水、食べ物を媒介として感染する場合です。赤痢、コレラ(流行地での生水や生ものなどの飲物、菌を含んだ輸入食品などで感染することがあります。摂取して数時間~3日で嘔吐や下痢が起こり、まれに重症になります。抗生物質で治療します)、クリプトスポリジウム症(寄生虫病)、腸管出血性大腸菌(O-157)(食中毒)などの腸管感染症があげられます。

●媒介動物感染


 病原体を運ぶベクターと呼ばれる昆虫などの動物が、あいだに入って感染する場合です。病原体を持ったカに刺されて感染するマラリア(寄生虫病)や日本脳炎、シラミが媒介となる発疹チフス、ダニの一種のツツガムシが媒介となるツツガムシ病などです。

もともと体内にいる細菌が感染することも


 最近は、このような場合とは少し異なる感染経路が問題となっています。病院などの医療施設内で起こる感染症を院内感染といいます。ときに老人養護施設内で起こることもあります。
 医師や看護師、病原体に汚染された器具などから感染する場合(交差感染)もありますが、自分のからだがもともと持っている菌に感染してしまうことが多くなっています(内因性の感染症)。
 口や鼻、腸管、皮膚などには、もともと多くの微生物がいて、常在菌と呼ばれています。これらの菌は、ふつう、危害を加えることはないのですが、悪性腫瘍糖尿病などの慢性の病気があったり、免疫力が低下している人、高齢者などは、自分が持っている菌によって感染を起こすことがあり、常在菌が繁殖して、感染症になることがあります。これを日和見感染といいます。

新興感染症と再興感染症


 1970年代の半ばから、それまであまり知られていなかった感染症がふえてきました。エボラ出血熱、マールブルグ病(ウイルス性出血熱のいろいろ)、レジオネラ症(レジオネラ症の感染と予防)、クリプトスポリジウム症、エイズ、腸管出血性大腸菌(O-157など)、劇症型A群連鎖球菌感染症(A群溶血性連鎖球菌が感染して、短時間のうちに多臓器不全を起こす病気で、感染経路は不明。ペニシリン系抗生物質の大量投与などで治療します)、牛海綿状脳症(BSE)重症急性呼吸器症候群(SARS)などです。これらは、世界各地で流行していることから、新興感染症と呼ばれています。
 また、結核のように最近までは減少傾向にあったものが、再びふえてくるような感染症を再興感染症といいます。結核のほか、マラリアなどの寄生虫病や百日ぜきも増加しています。

◆その他の感染症


伝染性単核球症 思春期にEBウイルスの感染で、発熱やリンパ節の腫れなどが現れます。成人の多くは幼少児期に不顕性感染しているとされます。
ペスト 野ネズミなどが持つペスト菌が、ノミの媒介で感染し、高熱、リンパ節炎などを起こします。重症の場合は、肺炎や敗血症になり、肺炎になると、人から人へ感染を起こします。
劇症型A群連鎖球菌感染症 A群溶血性連鎖球菌が感染して、短時間のうちに多臓器不全を起こす病気で、感染経路は不明。ペニシリン系抗生物質などの大量投与で治療します。
炭疽 馬、牛、ヤギ、豚などの糞や土壌に含まれる炭疽菌が、感染動物との接触や肉の摂取などで感染する病気。ニューキノロン系、テトラサイクリン系などの抗生物質で治療します。
Q熱 家畜が保有するリケッチアが、気道から感染して起こります。12日~1か月の潜伏期間のあと、発熱、頭痛、せきや痰、胸痛などが起こります。テトラサイクリンなどで治療します。
オウム病 カナリヤやインコなどが保有するクラミジアが感染し、発熱、せき、痰などの肺炎症状が現れます。テトラサイクリンなどで治療。ペットの鳥が死んだときは、受診時に医師に伝えておきます。
とびひ 暑い時期に流行する皮膚病で、顔や手足など全身に水疱ができます。かゆみが強く、破れると中の液がほかの皮膚に付着して水疱が広がります。あせもや湿疹があるとできやすくなります。

ベビカムは、赤ちゃんが欲しいと思っている人、妊娠している人、子育てをしている人、そしてその家族など、妊娠・出産・育児に関して、少しでも不安や悩みをお持ちの方々のお役に立ちたいと考えています。
本サイトは、妊娠・出産・育児に関して、少しでも皆さまの参考となる情報の提供を目的としています。

掲載された情報を参考に、気になる症状などがあれば、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

ベビカム医学大辞典
powerd by babycome