急性肝炎(きゅうせいかんえん)

どんな病気?


 肝臓の細胞が大幅に破壊される病気を肝炎といいますが、そのなかで6か月以内に治ってしまうものが急性肝炎です。代表的なものとしてA型、B型、C型があります。

症状


 A型、B型、C型の症状にちがいはありません。全身の倦怠感、食欲不振、吐き気などが現れ、とくにA型では38度程度の高熱がみられることが多いようです。下痢や腹痛、皮膚の発疹などがみられることもあります。やがて黄疸が現れてきて、この時点ではじめて肝臓が悪いと気づく人が多いようです。無症状で、黄疸もまったく出ないこともあります。
 黄疸は血液中にビリルビン(胆汁色素)がふえて組織に蓄積した結果、皮膚や粘膜が黄色くなる状態です。白目や全身が黄色くなって、尿も茶褐色になります。肝臓や胆道などの病気を示す重要な症状です。

原因


 多くは、肝炎ウイルスの感染によって起こります。ウイルスにはA型、B型、C型、D型、E型などがありますが、日本でみられるのはA型、B型、C型の急性肝炎です。最近、E型の国内感染が報告されていますが、感染経路などはよくわかっていません。

A型急性肝炎


 感染者の大便から排泄されたA型肝炎ウイルスが、水や食べ物などを汚染し、それを介してほかの人に感染します。そのため、発展途上国など衛生状態が悪い地域で多く発生します。
 国内では生ガキからの感染が多いようです。カキがウイルスを含んだ海水を吸い込み、体内でウイルスを濃縮するからです。養殖でも天然でも海水がウイルスで汚染されていれば同じです。
 わが国でも、かつて衛生環境が悪い時代に育った高齢者には、抗体(抵抗力)を持っている人が多く、この場合ウイルスに感染しても発病はしません。逆によい衛生環境で育った若い世代は、ウイルスに対する抗体を持っていないため、感染しやすいのです。A型急性肝炎は、治癒すれば体内のウイルスはすべて排除されるので慢性になることはありません。ただ、まれに重症化(劇症肝炎)することがあります。


B型急性肝炎


 B型急性肝炎は、キャリアの血液や体液を介して感染します。日本では全人口の約1%がキャリアといわれており、現在のB型急性肝炎患者の多くが、キャリア(現在、肝炎を発症していないが、体内にB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを持っており、他人に感染させる可能性のある人)との性交渉で感染したものです。献血でのチェックがきびしくなり、現在では輸血からの感染はまれです。
 B型急性肝炎は、成人で感染した場合は、基本的には慢性化しません。


C型急性肝炎


 病原体はC型肝炎ウイルスです。おもに輸血によって感染しましたが、B型急性肝炎と同じく、現在では輸血による感染は減少しています。C型急性肝炎は、A型やB型の急性肝炎とは対照的に症状が軽く、約80%が無症状で黄疸も現れないため、感染しても気づかないことが少なくありません。
 C型急性肝炎がほかの急性肝炎と大きくちがう点は、慢性化する頻度が非常に高いことです。患者の約70%が慢性肝炎になり、将来、肝硬変、肝(臓)がん((肝(細胞)がん))へと移行します。

治療


 急性肝炎と診断されたら、最低1か月の入院治療が必要です。A型、B型、C型のどれも積極的に薬は使わず、安静と栄養補給が治療の中心になります。安静はもっとも大事で、からだを横たえていると、肝臓に流れる血液量が多くなり、酸素や栄養素がよりたくさん肝臓に送り込まれます。それが肝細胞の再生、修復を促進します。
 食事療法では、エネルギーや、たんぱく質が必要で、1日の総カロリーは2000kcal、たんぱく質は80g。初期の食欲不振時は、消化のよい淡白な食事を食欲に応じて摂取します。エネルギーの不足分はビタミンを加えた糖液の点滴で補います。食欲が回復してきたら、高たんぱく質、高エネルギー食に切り替えます。たんぱく質は脂肪やコレステロールが少ない植物性のものを中心に、野菜や果物も摂取します。
 適切な治療で2~3か月で治ります。退院後、自宅で養生をつづけ、だいたい3か月後には社会復帰できます。

あなたへのひとこと


 回復期は、安静と高たんぱく・高エネルギー食が中心となるため、栄養過剰から肥満になり、脂肪肝を起こすことがあります。これは、治療を長引かせます。体重に注意して摂取カロリーをコントロールすることも大事です。
 海外旅行でウイルスに汚染されたものを飲食して、帰国後にA型肝炎を発病というのはよくあるケース。とくに発展途上国などでの生水や生ものの摂取は避けます。生野菜や氷も要注意。衛生面の水準が低い地域に長期滞在するときは、予防接種を受けることです。
 またB型肝炎は、不特定多数との性交渉により感染の危険が高まります。コンドームでの予防処置が必要です。B型肝炎ウイルスのキャリアはとくに東南アジア諸国、アフリカ、南米などに多いといわれています。旅先での性交渉は慎むにかぎります。衛生環境が悪いなかでの鍼治療や入れ墨、ピアスなどもひかえ、カミソリや歯ブラシの共用もやめましょう。なお婚約者がB型肝炎のキャリアであれば、あなたが予防接種を受けることで、結婚後の感染を予防できます。結婚後に相手がB型肝炎キャリアとわかったら、すぐにワクチンを接種して抗体をつくります。
 なお自分の身に覚えがないのにこの病気にかかったときは、パートナーに率直に話し、検査を受けてもらいます。
 C型肝炎の場合は、感染力が弱いので夫婦生活もふつうでかまいません。ただ、生理中の性交渉など、血液が接触するようなことは避けましょう。
 なお、出産やけが、手術などで輸血を受けたことがある人は、C型肝炎の血液検査を受けておくと安心です。

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