どんな病気?
寄生虫が人体に感染して起こる寄生虫病は、近年、海外旅行の増加、ペットブームやグルメブームなどにより、ふえてきています。寄生虫病にはつぎのようなものがあります。
●原虫による寄生虫病
単細胞の原虫が寄生して起こります。
アメーバ赤痢
海外などの衛生環境の悪い地域で、飲食物などから赤痢アメーバの嚢子(活動性はないが、抵抗力が強い状態)を摂取して感染し、腹痛と吐き気、粘血性の下痢が起こります。
マラリア
熱帯、亜熱帯に生息するハマダラカに刺されて、マラリア原虫が感染し、発熱や悪寒などが起こります。
ジアルジア症
飲食物を介して十二指腸や空腸上部に寄生し、腹痛や下痢を引き起こします。
トキソプラズマ症
ネコなどの哺乳類や鳥類に寄生する原虫が口から入って感染します。妊娠中に初感染すると、流産、早産の原因になることがあります。
クリプトスポリジウム症
水や食品を介して小腸に寄生し、はげしい下痢と腹痛、嘔吐や発熱などを起こします。
リューシュマニア症
サンチョウバエなどの昆虫に刺されて原虫が侵入し、脾臓や肝臓、皮膚や粘膜をおかします。
トリパノソーマ症
アフリカや南米での感染が多く、ツエツエバエやサシガメという昆虫に刺されて感染し、高熱、肝臓や脾臓の腫れなどを起こします。
●線虫による寄生虫病
多細胞の寄生虫のうち、円筒状の形をした線虫が寄生して起こる病気です。
回虫症
野菜などについた虫卵が口から入り、腹痛や下痢などを起こします。
イヌ・ネコ回虫症
生後1歳未満の子イヌやネコの体内にいる回虫の卵が、糞便中に排泄されたあと、人の口に入って感染し、発熱、肝臓の腫れ、肺炎、視力障害などを起こします。
アニサキス症
サバ、アジ、カツオなど、近海の魚を生食することで、アニサキスの幼虫が胃や腸の壁に侵入し、はげしい腹痛を起こします。
鉤虫症
鉤虫の幼虫がついた野菜を食べたり、皮膚から幼虫が侵入して、貧血、動悸、皮膚炎などを起こします。
糞線虫症
糞線虫の幼虫が皮膚から侵入したり、虫卵が食物を介して感染し、下痢や腹痛、貧血などが現れます。
鞭虫症
生野菜に付着した虫卵を摂取して感染し、下痢などが起こります。
蟯虫症
肛門周囲についた蟯虫卵が口から入って感染し、腹痛が起こります。
イヌ糸状虫症
イヌの心臓に寄生する糸状虫が、カを媒介として人に寄生し、気管支炎や湿疹などを起こします
●吸虫による寄生虫病
多細胞の扁平な葉のような形状の吸虫が感染して起こる寄生虫病です。
住血吸虫症
日本、中国、東南アジアに分布する日本住血吸虫、アフリカや南米に分布するマンソン住血吸虫、アフリカ、西アジアなどに分布するビルハルツ住血吸虫などがあり、川や湖、水田などで、皮膚から侵入します。皮膚炎、下痢、粘血便などが起こります。
肺吸虫症
川ガニや豚肉の生食で幼虫が寄生し、血痰や喀血などが現れます。
肝吸虫症
コイ科の淡水魚を生食することで、肝吸虫の幼虫が侵入し、肝臓や脾臓の腫れが起こります。
横川吸虫症
淡水魚の生食で幼虫が感染し、下痢や粘血便が起こります。
肝蛭症
セリなどについた幼虫が口から入って、腹痛、下痢、黄疸、発熱などが現れます。
条虫による寄生虫病
多細胞で、扁平なひも状の条虫による寄生虫病です。
エキノコッカス症
北海道に生息するキタキツネや野犬などに寄生する条虫の虫卵が、口から感染し、腹痛や嘔吐、せき、けいれんが起こります。
裂頭条虫症
サケ・マスなどに寄生する幼虫を食べて、下痢、腹痛、嘔吐などが現れます。
無鉤条虫症
牛肉を生食して幼虫が感染し、腹痛、下痢などが起こります。
有鉤条虫症
生の豚肉を食べて幼虫が感染し、腹痛、下痢などが起こります。
マンソン孤虫症
ヘビ、カエル、鶏などを生食して、幼虫が寄生します。幼虫が移動する部分にしこりが現れます。
治療と予防
潜伏期間の長いものが多いので、症状がでて受診したときは、思いあたる飲食物、ペットの有無、海外旅行の日付けや場所などを報告しましょう。患者さんがでた場合は、家族や同居者も検査を受けるようにします。
寄生虫病は、早期発見して、それぞれの寄生虫に応じた特効薬を使って治療すれば、多くは治癒しますが、治療が遅れると重症化するものもあります。また、駆虫剤や抗菌剤は、医師の指示どおりに使うことがたいせつです。
予防のために、生野菜や野草は水道水などでよく洗い、淡水魚やサケ・マスなどはよく加熱し、ゲテモノ食いはやめましょう。手洗い、うがい、食器や調理用具の熱湯消毒、部屋の清掃、寝具の日干しなどを習慣づけましょう。
ペットの糞には、直接ふれないようにし、ペットにさわったり、砂場で遊んだあとは、よく手洗いをします。飼うときは、獣医に相談し、必要であれば寄生虫の駆除をしてもらいましょう。
海外旅行での注意
現地でどんな感染症が流行しているか、事前に厚生労働省のホームページを見たり、旅行代理店の人に聞いて、予防法などの知識を身につけておきましょう。
海外の不衛生な地域では、生水やよく加熱していない食品を飲食しないようにします。とくに、屋台やバイキングなどで、調理後、長時間経過したようなものは避けたほうが無難です。
また、河川や湖で泳いだり、田畑に素足で入らないようにします。カなどの昆虫に刺されないよう、カよけスプレーを用い、皮膚を露出しない服装を心がけましょう。
寄生虫病についてもっと知る
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