がん(悪性腫瘍)(がんあくせいしゅよう)

がんは異常な細胞の増殖によってできる悪性の腫瘍


 体内の一部の細胞が突然変異を起こして増殖し、悪性のかたまり(腫瘍)となったものががんです。
 悪性である理由は、つぎの3点です。
(1)がん細胞は増殖しつづける
 正常な細胞は新陳代謝がさかんで、古い細胞は死んではがれ落ち、つねに新しい細胞と入れ替わっています。しかし突然変異を起こしたがん細胞は、どんどんふえつづけます。
(2)がん細胞は周囲の組織に広がる
 がん細胞は生命力が強いため、周囲の正常な細胞に広く深く侵入して、破壊させてしまいます。
(3)がんは転移する
 がん細胞は血液やリンパ液の流れに乗って、ほかの臓器に飛び火(転移)します。そこでまた増殖をはじめて、生命をおびやかします。

がんは遺伝子が突然変異を起こして発症します


 がんの発生は、遺伝子との関係が深いことがわかっています。
 体内の正常な細胞の中には、がん細胞をつくりだすがん遺伝子(正常なときには、細胞の増殖をコントロールする役割をしている)と、これを阻止するがん抑制遺伝子が共存しています。
 発がんに至るには、まず、この遺伝子に突然変異を起こさせる引き金となるもの(イニシエーター)があり、さらにそれを促進させる物質(プロモーター)が加わると、本来正常だった細胞が、がん細胞に変化して、徐々にがんとして発病するのです。

タバコと食品が、発がんをうながす2大要因


 がんを発生させるイニシエーターや、がんを発育させるプロモーターにはさまざまなものがあります。なかでも、タバコと食品が2大要因です。

●タバコ


 タバコに含まれるベンツピレン、ジメチルニトロソアミンなど数10種類の発がん物質は、肺がん以外に、喉頭がん食道がんなどの危険因子となり、さらにほとんどの器官でがんの発生をうながします。
 ちなみに肺がんでは、1日の喫煙本数×喫煙年数=600以上(喫煙指数)になると、発がんの危険群とみなされます。また、喫煙開始年齢が低い(とくに20歳以下)ほど危険率が高まります。タバコの害は、吸っている本人だけにとどまらず、副流煙(火のついたタバコから出る煙)の受動喫煙によって、家族や周囲の人にまでがんになるリスクを負わせてしまいます(喫煙の習慣と健康)。

●食品


 ピーナッツなどのナッツ類やとうもろこしのカビから発生する「カビ毒」のアフラトキシンは、もっとも強い発がん物質といわれています。
 また、体内で生成されるニトロソ化合物も強い発がん物質です。ハムやソーセージなどに含まれるアミンやアミドなどの化合物が、食品の食べ合わせによって、胃の中でニトロソ化合物に変化することもあります。ビタミンCには、この発がんを抑制する効果があります。また、調理中の焼け焦げも要注意。とくに肉や魚など動物性たんぱく質の焦げたものには、多種類の発がん物質が含まれています。

●その他


 放射線白血病甲状腺がん紫外線皮膚がん、そしてウイルスは肝がんや子宮頸がん(子宮がん)の誘因になります。また、肥満動物性脂肪のとりすぎは、乳がんや子宮体がん(子宮がん)、卵巣がんの引き金になります。
 出産性生活も女性のがんの発生と関係が深く、未婚や出産経験がない人、初産年齢が高い人は乳がんや子宮体がんになりやすい傾向があります。
 セックスの初体験の年齢が低い人、妊娠回数が多い人、性交渉を持つ男性の数が多い人ほど子宮頸がんの頻度が高くなります。子宮体がんの発症は、閉経後に多発し、50歳代がピークです。

胃がんは減る傾向にあり、乳がんがトップに


 わが国のがんによる死亡者数は、年々増加し、1981年にはトップとなり、それ以降も心臓病、脳卒中を引き離して1位を占めつづけています。そして現在、全死亡者数の約4分の1は、がんによるものです。女性のがん患者数を部位別にみると、もっとも多いのが乳がんです。第2位が胃がん、3位が結腸がん大腸がん(結腸がん、直腸がん))、そして子宮がん肺がんとつづきます。
 第1位の乳がんは、30歳代半ばころからふえはじめますが、胃がんとは逆に急増し、女性のがんのトップになりました。これは高脂肪、高たんぱくの欧米型食生活の普及による肥満や、少子化(出産回数が少ない=排卵回数が多い)など、女性の社会進出やライフスタイルの変化などが大きく影響していると考えられています。
 第2位の胃がんは、1950年ごろにはがん全体の約半分を占めていました。現在でも、多いがんではありますが、発症率が年々減っていく傾向にあります。
 これは、戦後の食生活の改善が関係しています。つまり摂取する食品の種類や、塩蔵から冷蔵・冷凍へと変化した食品の保存法によるものです。
 さらに近年では、検診の普及や診断・治療など医療技術の進歩があげられます。
 また第3位の結腸(大腸の主要部分で上行・横行・下行・S状結腸)がんは、かつては女性には少ないがんでしたが、現在では50歳代前半からふえはじめ、とくにS状結腸がんが多くみられます。乳がん同様、将来大幅な増加が予想されています。
 原因としては、脂肪の多い食品のとりすぎや食物繊維の摂取量の減少などが関係していると思われます。
 肺がんについては、50歳代半ばころに多発しますが、これは女性の若年層からの喫煙習慣が原因で、今後もふえていくと考えられています。
 ちなみに、火のついたタバコから出る煙(副流煙)には強い発がん物質が含まれています。喫煙者の夫を持つ妻の肺がんのリスクは、喫煙しない夫を持つ妻の約2倍といわれています。

同じ子宮がんでも頸がんは減り、体がんは増加傾向


 乳がん以外の婦人科のがんについてみると、子宮頸がんは患者数、死亡者数ともに年々減ってきています。これは、自治体などを含む検診の普及によって、早期診断・早期治療が功を奏したものです。お風呂やシャワーの普及など、衛生状態の向上もあげられます。
 一方では、子宮頸がんの若年化現象が起きています。背景には、セックスの初体験年齢の低下が考えられます。
 同じ子宮がんでも、子宮体がんは、頸がんとは逆にふえています。子宮体がんは、肥満や出産回数の減少など、かかりやすい条件が乳がんとよく似ており、乳がんとならんで増加の傾向にあるのです。
 一方、卵巣がんの患者数は、子宮がんにくらべて少ないのですが、女性の晩婚化や少子化(出産回数が少ない=排卵回数が多い)などの影響で、年々増加し、死亡率は子宮がんより高くなっています。

がんの告知はまず本人に


 がんの場合、医師と患者さんの双方が信頼関係を持ち、適切な治療を進めていくためには、告知やインフォームド・コンセントが強く求められます。
 告知とは、「患者さんに病名や症状について真実を告げる」こと。インフォームド・コンセントは、「医師は患者さんに病気や病状、これから行う検査や治療などの医療行為をよく説明し、患者さんはこれ理解し、納得したうえで同意をする」という意味です。これは、患者さんの知る権利や治療に関する選択権を尊重するという考え方にもとづくもので、患者さんはがんの説明を受けて告知されることにより、積極的に自分の治療に参加することができます。
 一方、医師側にとっても、副作用の強い抗がん剤の使用が必要なときなど、患者さんに気づかれるようなうそをつかなくてすみます。また、治療成績がほぼ同じで、複数の治療法がある場合も、患者さんによく説明をして、どれを選ぶのかを相談して決めることができます。つまり双方の信頼関係にもとづく治療を行うことができるわけです。
 いちばん大事な告知後の精神的なケアについては、家族と医師、看護師が協力態勢を整えて連携をよくして、患者さんを支えていきます。ただ、余命の告知については、医師のあいだでも、意見が一致していないのが実情です。

がんと診断されたとき医師に確認すること


 がんと告知されたら、つぎのことを確認し、医師と相談しながら積極的に治療に専念しましょう。
(1)がんの種類(がん腫、肉腫)やタイプ(扁平上皮がん、腺がんなど)は?
(2)病期(I期、II期、III期など)は? 転移はあるのかどうか?
(3)どんな治療法があるのか? 手術は、どんな方法で行うのか? 複数の治療法や手術法がある場合は、どれを選ぶかを医師と納得がいくまで相談します。
(4)手術後は、がんがすべて切除できたのか、再手術は必要なのかを確認。手術後に必要な療法の説明を受けます。
(5)再発した場合は、どの場所にできているのか、どこに転移しているのかを確認し、どんな治療法があるかの説明を受けます。
(6)それぞれの治療法の副作用や、心配される合併症を知っておきます。

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