脳・脊髄・神経の病気(のうせきずいしんけいのびょうき)

女と男の脳のちがいは?


 人間の脳の重さは、1.3~1.5kgで、からだのなかで、肝臓とならんでもっとも重い臓器です。
 脳は、構造的な面から大脳皮質、大脳辺縁系、大脳基底核、間脳、脳幹、小脳などに分けられます。
 大脳皮質は、大脳のいちばん外側をおおう部分で、前後に走る溝によって、右半球(右脳)、左半球(左脳)とに分かれます。女性は、男性にくらべて、右脳と左脳を連結する脳梁や前交連と呼ばれる部分が大きく、そのことが、物事を細かく見る傾向があること、感情がこまやかだが、感情的になりやすいことなどに関係しているのではないかと考えられています。
 さらに、男性にくらべて左脳が発達していて、言語能力にすぐれているなどともいわれますが、これらのことは、まだはっきりと解明されていません。

ホルモンの司令塔「視床下部」


 間脳にある視床下部は、呼吸や体温などを調節する中枢としてはたらくほか、月経、排卵を起こすなど、女性のからだのリズム(性周期)をつくるうえでも大事な役割を担っています。
 視床下部から分泌されるホルモンは、脳下垂体ホルモンの放出をうながすことで卵巣にはたらきかけ、エストロゲンなどの女性ホルモンの分泌を促進します。そのため、女性の視床下部の構造も、男性とは微妙にちがうことが報告されています。
 女性ホルモンのエストロゲンは、生殖など、女性のからだに大きな影響を与えていますが、このほか、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)値を低下させ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値を上昇させて、動脈硬化の進行を予防する効果があると考えられています。
 男性の場合は、肥満がつづくと、30~40歳代から動脈硬化がすすみますが、女性は、30歳代、40歳代で肥満がつづいても、男性にくらべて動脈硬化がすすみにくいのも、こうしたことが関係していると指摘されています。
 したがって、動脈硬化が引き金となって起こる心筋梗塞などの心血管系の病気、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害にかかる割合も低いと思われます。
 ところが、更年期を境にして、女性ホルモンのバランスに急激な変化が起こってきます。エストロゲンの分泌も減少するため、更年期以降では動脈硬化がすすむ人がふえ、男性と同じくらいの割合で、女性にも脳血管障害が発症してきます。

脳のしくみと脳に起こる病気


 脳は、約140~150億個の細胞が集まって、複雑な神経のネットワークを構成しています。これらのシステムのどこかに障害が起こると、いろいろな病気が生じてきます。
 アルツハイマー病は、記憶のはたらきをつかさどる海馬というところを中心に、大脳皮質が変性、脱落を起こし、脳が萎縮してくる病気です。
 中脳にある黒質というところの神経細胞に変性が生じ、手足がふるえたり、筋肉がかたくなってくる病気が、パーキンソン病です。
 また、脳の神経細胞に異常な興奮が生じるために、運動、感覚、意識などのはたらきが一時的に亢進する病気がてんかんです。
 脳にはたくさんの血管があり、脳細胞は、これらの血管から酸素や栄養素を供給されてはたらきます。これらの血管のどこかがつまったり出血したりして、脳の組織の一部に障害が起こり、半身マヒなどの症状が現れる病気を、脳血管障害といいます。
 脳卒中は、脳血管障害が突然起こる場合で、発症のしかたによって、脳梗塞脳出血くも膜下出血などに分けられます。
 脳血管性認知症も、脳血管の血液の流れが悪くなって、認知症の症状が現れてくる病気です。
 ほかに、頭を打ったあと1~3か月してから、血腫(出血したあとにできた血液のかたまり)が脳を圧迫して、頭痛や手足のマヒなどの症状が現れてくる慢性硬膜下血腫などの病気があります。
 これら、脳血管に起こる病気の一症状として頭痛が起こることを、二次性頭痛といいますが、多くの人が経験する頭痛は、原因となる病気がない一次性頭痛で、男女ともに多い緊張型頭痛と、女性に多い片頭痛が代表です(頭痛のいろいろ)。頭痛の性質をよく知って、危険な頭痛かそうでない頭痛かを判断することもたいせつです。

脊髄のしくみと病気


 生物の脳は、高等になるほど大脳の部分がふくらみ、折れ込んできて、複雑な形になりますが、脳と脊髄は、もともとひとつながりの神経の管からなっています。
 脳と脊髄をおおっている脳脊髄膜に、細菌などの病原微生物が感染して、炎症を起こし、発熱、頭痛、嘔吐などを起こす病気が、髄膜炎です。
 また、脊髄は、脊椎(背骨)というかたい骨にかこまれて保護されています。脊椎からは脊髄神経が出て、脳からの命令を手や足の筋肉に伝え、手足などで感じた感覚を脳に伝達しています。変形性脊椎症骨・関節・筋肉・腱・靭帯の病気)や椎間板ヘルニアなどで、脊髄から出ている神経根が圧迫されると、手や足の痛み、しびれやマヒが起こります。

末梢神経と末梢神経に起こる病気


 末梢神経は、脳や脊髄から出て、からだのすみずみまで張りめぐらされた神経線維網の総称です。
 末梢神経には、脳から出て頭部や顔面に分布する脳神経と、脊椎から出て、全身に分布する脊髄神経とがあります。
 末梢神経に起こる病気の代表は、知覚神経の分布に沿って痛みが走る神経痛です。
 また、末梢神経がいろいろな原因で障害を受け、しびれやマヒなどの知覚異常を起こすのが末梢神経障害です。なかでも、手のひらに起こる手根管症候群は、女性に多い病気です。

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