妊娠初期
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妊娠初期

気を付けたいトラブル(流産・感染症など)

妊娠中に気をつけたいトラブルや注意


妊娠悪阻(にんしんおそ)

*「妊娠中のつわり」を参照。

流産

妊娠22週未満までに、何らかの理由で胎児が育たなかったり、母体の外に出て妊娠が中断してしまうことを「流産」といいます。流産は、妊娠がわかった人の10〜15%に起こるといわれており、そのほとんどが妊娠初期の12週未満(3ヶ月以内)に起こります。妊娠初期に起こる流産の原因の大部分は、受精卵の異常(染色体異常など)といわれています。流産は、症状や進行度によって、切迫流産、進行流産、稽留(けいりゅう)流産、完全流産、不全流産などと呼ばれます。

切迫流産

流産の危険が迫っている状態を「切迫流産」といいます。主な症状は出血と下腹部の痛みですが、この段階で胎児が元気で発育も順調であれば、治療によって流産を食い止めることができます。妊娠初期には、軽度なものも含めると、20〜30%の人が出血や下腹部の痛みを経験するといわれますが、切迫流産かどうかは自分では判断できません。出血や下腹部の痛みなど気になることがあったら、必ず医師の診断を受けましょう。切迫流産は超音波で確認できます。切迫流産と診断されたら、医師の指示にしたがって安静にして過ごしましょう。

進行流産

流産が進行している状態を「進行流産」といいます。大量の出血や下腹部の痛みを伴い、胎児の心拍動が認められず、子宮頸管が開いてしまうために自然に流産が進行します。そのため、出血や下腹通がそれほど強くなければ、自然に完全流産となるのを待つこともあります。診断が確定した後に、子宮の中をきれいにする処置(子宮内容清掃術)を行います。

稽留(けいりゅう)流産

子宮内で赤ちゃんが死亡しているが、出血や強い下腹痛などの症状がなく、流産が始まっていない状態を「稽留(けいりゅう)流産」といいます。経膣超音波検査で発育が止まり、心拍動が停止していることが確認できれば、流産と診断されます。出血や下腹痛がなくても子宮内容清掃術を行いますが、症状が出るまで、あるいは完全流産まで経過を観察することもあります。

完全流産

子宮内の胎児および胎盤・卵膜などがすべて流れ出てしまった状態を「完全流産」といいます。大量の出血と強い下腹部の痛みを伴うことが多いのが特徴です。経膣超音波検査で、子宮内容物が残っていないことが確認でき、出血が少なければ、経過観察でよいとされます。出血が止まらない場合や、子宮内に内容物が少しでも残っている場合は、子宮内容清掃術(掻爬手術)を行います。

不全流産

流産が進行して、大部分の内容物は排出されたものの、一部が残存して出血や下腹痛の症状が続いている状態を「不全流産」といいます。一部残存の状態が続くと感染の原因にもなり、また止血に時間がかかるので、子宮内容清掃術(掻爬手術)を行います。

子宮外妊娠

正常な妊娠では、受精卵は子宮大部の内膜に着床しますが、それ以外の場所(卵管、卵巣、子宮直腸窩の腹膜、子宮間質部、子宮頚管など)に着床し発育を始めたものを「子宮外妊娠」といいます。子宮外妊娠のほとんどは、卵管に着床する卵管妊娠です。子宮外妊娠では、胎児は発育し続けることが難しいため、限界に達すると、流産となって腹腔内に出血し、そのために母体が危険な状態になることがあります。妊娠5〜6週ごろに少量の出血が続いたり、右または左の下腹部の痛みや肛門付近の痛みを感じたら、すぐに産婦人科を受診しましょう。特に、痛みが増強したり、歩くと肛門に響くような痛みを感じる時は、開腹手術が必要な場合が多いので、急いで産婦人科専門医の診察を受けてください。

胞状奇胎(ほうじょうきたい)

胎盤の絨毛(じゅうもう)の異常で、絨毛血管が形成されず、絨毛は水腫状に膨れ増殖し、子宮内部に小さな袋状の粒がたくさんできる病気で、ブドウの房のように見えることから、「ブドウ子」ともいわれます。日本では400〜500人に1人の割合で発症し、高齢での妊娠ほど発症率が高くなるといわれています。絨毛の腫大変形のため、胎児が発育しないことが多いようです。正常の妊娠では、ひとつの卵子とひとつの精子が一緒になることで受精が起こりますが、卵子の核が消失して精子の核だけが卵子の細胞質内で分割した場合(雄核発生)には全胞状奇胎となり、ひとつの卵子が2つの精子を受精した場合(2精子受精)には染色体は三倍体となり、一部の絨毛が嚢胞状となる部分胞状奇胎になります。治療では、まず子宮内容除去術を行い、1週間後に再度子宮内容除去術を行って、子宮内の胞状奇胎の細胞を完全に取り除きます。その後に外来で定期健診を受診します。胞状奇胎や絨毛がんが存在するかどうかは、尿中に排泄されるhCG(絨毛性ゴナドトロピン)の数値を定期的に測定することで、早期の診断が可能です。

妊娠中に気をつけたい合併症

1.妊娠中に気をつけたい感染症


ウイルスや細菌などの病原体が原因となってうつる病気を「感染症」といいます。感染症には、人から人にうつる感染症のほかにも、ペットや家畜など動物や、食べ物・ 飲み物から感染するものがあります。妊娠中に感染すると、胎児に影響を与えるものもあるので、清潔を心がけ、外出後は手洗いを欠かさないようにしましょう。また、ワクチン(予防接種)で抑えることができる病気でも、妊娠中や授乳中は接種できないものもあります。過去にその病気に感染したことがあるか(抗体があるか)を、抗体検査で確認しましょう。抗体検査は、産婦人科で受診できます。

風疹

風疹(三日はしか)は、風疹ウイルスによっておこる病気で、空気感染で拡がります。それほど深刻な病気ではないものの、妊娠初期に初めて風疹ウイルスにかかると、「先天性風疹症候群」といって、赤ちゃんに難聴・白内障や緑内障・心臓疾患などを引き起こすといわれています。妊娠中はワクチン接種はできません。また妊娠していない場合も、ワクチン接種後2ヶ月は避妊をしてください。

水ぼうそう

妊娠初期に水ぼうそうにかかると、「先天性水ぼうそう症候群」といって、赤ちゃんの脳や皮膚や四肢に障害が出ることがあります。また、流産や早産につながる危険もあり、出産直前に母親が水ぼうそうにかかると、「周産期水痘」といって、赤ちゃんは抗体をもらえないまま水ぼうそうにかかるために、死亡率が高まるといわれています。妊娠中のワクチン接種はできません。

パルボウイルスB19

パルボウイルスB19は、ほっぺがりんごのように赤くなる、別名「りんご病」の原因となるウイルスです。妊娠中に初感染・発症すると、ウイルスが胎盤を通して赤ちゃんに感染し、流産や胎児水腫などを引き起こすことがまれにあります。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは性感染症のひとつで、セックスだけでなく、病変部に触れた指で触ったタオルや食器から感染することがあります。外陰部に水疱やかぶれができ、一度感染すると、体内の神経節に潜伏していますが、体力が落ちた時などに再び症状が出ることががあります。病変が外陰部にある場合、産道感染(*)により赤ちゃんが肺炎や脳炎を引き起こすことがあるため、帝王切開が必要になる場合もあります。また、分娩時に発症すると、赤ちゃんに感染して「新生児ヘルペス(*)」を発症する危険があります。新生児ヘルペスによる乳児の死亡率は、約30%といわれています。

産道感染

母体の持っている病原体(ウイルスや菌など)が、分娩のとき産道の粘膜や血液を介して赤ちゃんに感染すること。

新生児ヘルペス

全身(肝・肺・副腎・中枢神経系などの臓器)、または部分的(皮膚・口腔粘膜・目・中枢神経など)にヘルペス感染症の症状を示し、発熱・哺乳力の低下や活動性の低下を起こす病気。無治療で80~90%が死亡し、特に全身型は出生後2~7日で発症し、7~10日間で死亡することが多いといわれています。最近では、抗ウイルス剤の開発で、救命できることが多くなりました。

サイトメガロウイルス

ヘルペスウイルスの一種で、体内に潜伏する性質があります。普通は成長する過程で免疫(抗体)ができますが、妊娠中に初感染した場合は、流産や死産、新生児の死亡につながることがあります。また「先天感染」といって、胎児に肝障害や難聴などの影響が出ることもあります。

性器クラミジア感染症

クラミジア・トラコマチスという病原体によって子宮頚管に炎症がおこる病気で、若い女性に多く発症します。自覚症状がないのが特徴で、感染したまま放っておくと、卵管炎や腹膜炎を引き起こし、子宮外妊娠や不妊症の原因にもなります。妊娠中に感染した場合は、気づかないまま早産になったり、まれに赤ちゃんの産道感染を起こして新生児肺炎や結膜炎を引き起こします。母子感染を予防するには、妊娠中のクラミジア検査を行い、感染している場合は、抗生物質で治療します。

B群レンサ球菌 (GBS)感染症

B群レンサ球菌感染症(B群溶血性連鎖球菌感染症)は、健康な人ののどや膣内に定着することのある細菌で、妊膀胱炎などの尿路感染症でも起こさない限り、問題となることはほとんどありません。しかし、出産時にこの細菌が膣内にあると、まれに赤ちゃんに産道感染を起こして、細菌性髄膜炎や敗血症、肺炎などを引き起こす危険があります。陣痛が始まったか、もしくは破水が分かった時点で、ペニシリン系の抗生剤を点滴で投与して、赤ちゃんへの感染を防ぎます。

トキソプラズマ症

トキソプラズマ症は、寄生虫であるトキソプラズマ原虫による感染症で、十分な加熱処理を行わなかった食用肉や、ネコのふんを経由して、主に口から感染します。普通は、感染しても症状が出ることはほとんどありませんが、妊娠初期に感染すると、胎盤を通して胎児にトキソプラズマが入り込み、流産や早産、死産になったり、生まれた子どもが「先天性トキソプラズマ症」を発症することがあります。「先天性トキソプラズマ症」は、水頭症や小脳症などの奇形、中枢神経障害を引き起こす危険があるため、妊娠中に感染した場合は、胎児への感染を防ぐためにスピラマイシンという抗菌剤で治療します。妊娠中はネコのトイレ掃除をするのをやめるか、掃除をする際は手袋をするなどして対処し、肉は十分に加熱調理したものだけを食べるようにします。

2.ルテイン嚢疱(のうほう)

妊娠中に急に出現し、ある時期を超えると自然に消えていく卵巣のはれを「ルテイン囊胞」といいます。卵巣の内部に液体を含んだ袋状(嚢胞性)のものができて卵巣全体が大きくなっている状態を「卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)」といいますが、ルテイン囊胞は、この卵巣嚢腫のひとつです。妊娠すると、胎盤からhCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)が分泌されて、黄体が簡単に退縮しないように働きかけてくれますが、この時にhCGホルモンに黄体が過剰に反応して卵巣が腫れることがあり、これを「ルテイン囊胞」といいます。ルテイン囊胞は、hCGホルモンの分泌がピークを迎える妊娠8〜10週を境に、だんだん小さくなって自然に消えていきますが、囊胞が大きくなってねじれたりする場合は、強い下腹痛があり、卵巣の壊死を防ぐために緊急手術が必要です。妊婦健診で、ルテイン嚢胞があるかどうかをしっかり確認しましょう。

妊娠高血圧症候群(旧妊娠中毒症)について

妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週から出産後12週までに高血圧(収縮期圧≧140、拡張気圧≧90)の症状がみられるものをいいます。そのうち10〜15%の方は、血管の透過性亢進が進行して、高血圧と尿タンパク(300mg/日以上)の症状がみられる妊娠高血圧腎症へと進展します。妊娠高血圧腎症になると、胎盤機能不全や胎児発育遅延(*)、子癇(*)、ヘルプ症候群(*)、常位胎盤早期剥離(*)、DIC(*)などの重症な合併症を引き起こすことがあり、その場合は入院による治療が必要です。

胎児発育遅延

胎児体重の妊娠週数ごとの基準値で5パーセント以下の場合を「胎児発育遅延」といいます。「胎児発育遅延」の原因は胎児の奇形や感染症が多いのですが、妊娠高血圧症候群がある場合には、胎盤機能不全による低栄養が原因であると考えられ、胎児に2週間以上発育がみられない場合には、妊娠の継続の可否を慎重に検討することになります。

子癇(しかん)

「子癇」と呼ばれるけいれん発作の先行疾患となるのが、一過性血管原性脳浮腫や高血圧性脳出血、脳梗塞による脳虚血です。前駆症状としては、頭痛、めまい、眼華閃発、視力障害、胃痛、悪心、嘔吐があり、38%の人は、こうした前駆症状を伴わないともいわれています。「子癇」の発作の特徴は、意識消失や眼球上転、全身の強直生けいれんで、間代性けいれんに移行した場合は、呼吸停止→数分で呼吸が再開→昏睡状態になる→間もなく意識回復する、という過程をたどるのが通常です。ただし、重症になると、意識が回復しないままけいれん発作を繰り返し、死に至ります。くれぐれも、脳出血や脳梗塞、てんかん、脳腫瘍、ヒステリー、尿毒症などと区別して考える必要があります。

ヘルプ症候群

「ヘルプ症候群」とは、溶血(hemolysis)、肝酵素の上昇(elevated liver enzyme)、血小板減少(low platelets)の3つの病態の頭文字を略したものをいいます。「ヘルプ症候群」は、重症な妊娠高血圧腎症の人の10〜20%に起こるといわれており、高血圧腎症の先行しないものも1〜2割あるといわれています。初発症状には胃痛、倦怠感、悪心、嘔吐があり、血液検査で血小板減少、溶血、肝機能障害が特徴的に認められる場合に、「ヘルプ症候群」と診断されます。

常位胎盤早期剥離

出産前、まだ赤ちゃんが子宮の中にいる状態で胎盤がはがれてしまうことを「常位胎盤早期剥離」といいます。胎盤がはがれることで、赤ちゃんへの酸素と栄養の供給が止まってしまうため、胎児の死亡率は60〜80%ともいわれます。出血が多い場合は、ママ自身も生命の危険にさらされるので注意が必要です。なお、常位胎盤早期剥離は妊娠高血圧症候群や妊娠高血圧腎症の合併症として起こることが多く、妊娠中に高血圧が先行しない場合もあります。

DIC(播種性血管内凝固症候群)

妊娠中は凝固機能が亢進していますが、何らかの原因で凝固線溶機能が破綻して、広範囲で全身の細小血管内で微小血栓が形成され、血液凝固障害が起こった状態を「DIC(播種性血管内凝固症候群)」といいます。先行疾患としては、常位胎盤早期剥離、羊水塞栓症、分娩時大量出血、重症感染症(敗血症性流産など)、子宮内胎児死亡の稽留があります。

妊娠糖尿病について

それまで糖尿病の症状がなかった人が、妊娠をきっかけに糖尿病を発症することを「妊娠糖尿病」といいます。妊娠糖尿病になると、妊娠高血圧症候群や羊水過多症、感染症などにかかりやすくなるだけでなく、胎児もママの糖を吸収して高血糖になるため、巨大児出産や、胎児の発育不全、さらには胎盤機能不全や妊娠高血圧症候群を引き起こす原因にもなります。出産後も、新生児低血糖症や重い新生児黄疸などの発症を心配しなければなりません。妊娠糖尿病と診断された場合は、低エネルギー食など、食事療法によるカロリー制限が必要です。

監修:堀口貞夫先生(元愛育病院院長 産婦人科医)
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