四種混合(DPT−IPV)(よんしゅこんごうでぃーぴーてぃーあいぴーぶい)

予防する病気


 ジフテリア(「ジフテリア」)、百日ぜき(「百日ぜき」)、破傷風(「破傷風」)、ポリオ(急性灰白髄炎)(「ポリオ(急性灰白髄炎)」)を予防します。

ジフテリア

 ジフテリア菌が、のどや鼻の粘膜に感染して起こります。38度以上の高熱やのどの痛み、嘔吐などの症状がみられます。悪化すると、菌のだす毒素で心筋障害(「心筋炎」)や呼吸困難、神経まひを引き起こし、死亡することもある重い病気です。
 現在は予防接種の成果で、日本ではほとんどみられなくなりました。

百日ぜき

 百日ぜき菌の飛沫感染によって起こります。
 かぜのような症状ではじまりますが、はげしいせき込みと、息を吸い込むときの「ヒュー」と笛を吹くような独特な音が特徴です。
 大人も子どももかかる病気ですが、とくに0歳児の場合は、せきがはげしいため、呼吸困難になり、チアノーゼやけいれんを起こしたり、肺炎(「肺炎」)や脳炎(「急性脳炎」)などの重い合併症を引き起こすこともあります。
 年齢が低いほど症状が重く、死亡率も高くなります。

破傷風

 けがをしたとき、土の中にいる破傷風菌が、傷口から侵入して起こります。菌のだす毒素が中枢神経をおかすため、口が開かなくなったり、けいれんや手足の硬直が起こります。発病した人の2割が死亡するというこわい病気です。
 この菌は、日本じゅうどこにでもいますし、刺し傷などで感染するケースも多いもの。ゆだんできません。

ポリオ(急性灰白髄炎)

 感染した人の便の中に排泄されたウイルスが口から入り、腸に感染して発病します。発病しても多くの人は発熱、のどの痛み、下痢など、かぜの症状だけですみますが、まれに手足にまひを残したり、呼吸困難で死亡する人もいます。
 日本では予防接種の普及で、現在、流行はありませんが、海外では、まだ流行しているため、安心はできません。

ワクチンの種類


 ジフテリア菌と破傷風菌が発生する毒素を抽出して無毒化した「トキソイド」と、百日ぜきとポリオの病原体を殺して、免疫成分だけを抽出した「不活化ワクチン」を混ぜ合わせたものです。上腕に皮下注射します。

理想の接種年齢


 Ⅰ期とⅡ期、両方合わせて合計5回接種します。

Ⅰ期

 生後3か月~90か月(7歳6か月)までのあいだに合計4回接種します。標準的な接種では、生後3か月~12か月までに、20日から56日間の間隔で3回接種。3回め終了後から6か月以上あけて、12か月から18か月に追加接種を1回受けます。
 接種の通知が送られてくる年齢は、地域の事情により、この時期より多少異なるかもしれません。
 百日ぜきは、母体から免疫をもらえないため、生まれてすぐの赤ちゃんでもかかります。月齢が低いほど重症になるので、できるだけ早く接種するのが理想的です。百日ぜきは、周期的に流行がみられるので、早めにすませておくと、いつ流行しても安心です。百日ぜきの追加接種を行う場合は、百日ぜき、ジフテリア、破傷風の三種混合ワクチンを利用します。
 また、外遊びが活発になると、破傷風の心配もでてきます。赤ちゃんが歩きはじめる前に接種をすませましょう。

Ⅱ期

 11歳から13歳までに二種混合(DT)のジフテリアと破傷風のワクチンを1回接種します。

副反応


 接種したあとがはれたり、赤いしこりになることがあります。この反応は、Ⅰ期1回めのあと100人中約20人に、3回めのあと100人中40~50人にみられますが、これは免疫がついている証拠で心配ありません。はれやしこりはふつう数日で治り、しこりはまれに数か月残ることもありますが、これも自然に消えていきます。
 また、ごくまれに接種後6~24時間のあいだに、37.5度以上の熱がでることがありますが、これも心配する必要はありません。
 上腕全体がはれたり、痛みがひどいとき、ぐずぐずきげんが悪いときは小児科を受診します。

受けるときの注意


すでに百日ぜきにかかってしまったら二種混合にする


 百日ぜきは一度かかると、免疫力がつきますから、接種前にかかったのであれば、もう百日ぜきのワクチンを接種する必要はありません。二種混合(DT)のジフテリアと破傷風のワクチンを接種しましょう。
 二種混合ワクチンは、4~6週間の間隔で2回接種し、その後1年~1年半後に1回追加接種をします。四種混合より接種回数が1回少なくなります。
 いっぽう、百日ぜきワクチンの効果は4~12年で弱まってしまいますので、子どもと接する機会の多い人、海外留学をする人などは、任意で2種混合ワクチンを追加するといいでしょう。

生ワクチン接種後、4週間以内は接種できません


 生ワクチン(BCG、はしか、風疹、おたふくかぜ、水ぼうそう、ロタウイルス)の予防接種をしたあとに、四種混合あるいは二種混合の予防接種を受ける場合は、4週間以上間隔をあけなければなりません。
 第一の理由は、生ワクチンの副反応が現れるのは4週間以内なので、もし、副反応がでたとき、どちらのワクチンが原因なのか判別できなくなるからです。また、体内に入ったワクチンどうしが、お互いに干渉し合って、免疫がうまくつかないことがあるからです。

こんなことが気がかり


Q 5回も接種するのはなぜ?


 四種混合のワクチンは、殺した病原体の成分からつくったもので、これは、毒性を弱めた病原体を生きたまま使う生ワクチンにくらべて、免疫力が弱くなります。つまり、1回の接種だけでは、十分な免疫がつくられず、そのうえ時間がたつと、徐々に免疫力が低下してきます。そのため、病気を予防するためには何度か追加接種をして免疫を確実につけなければならないのです。

Q 4種類のワクチンを一度に接種すると副反応がでやすい?


 4種類を混ぜたからといって、子どもの体に負担がかかったり、副反応が強くでる心配はありません。また、ワクチンの効果に問題が生じることもありません。実際、外国では、一度に5種類以上のワクチンを接種しています。
 同時に4種類接種するのは、別々にするより、接種を受ける人の負担を減らすためです。
 むしろ、4つの病気の接種を別々に受けると、子どもは何度も痛い思いをしなくてはなりませんし、そのたびに、お母さんは副反応の心配をすることになります。

Q 回数を追うごとに、はれがひどくなるのはなぜ?


 四種混合の副反応は接種回数が増えるにつれ、はれが強くなる傾向があります。しかしそのあと、はれが自然に引いたのなら心配いりません。病気に対する免疫をしっかりつけるために必要なステップと考えてください。
 しかし、あまりにはれが強い場合は、ワクチンの量や回数を減らすこともあります。かかりつけの医師に相談しましょう。
 はれがひどいときは、冷たくしたタオルなどで冷やすとおさまります。はれに加えて痛みがあるようなときは、細菌感染を起こしている可能性があるので、小児科を受診します。
図「無題」

Q 接種間隔のあきすぎは?


Ⅰ期1回めと2回めの接種のあいだが8週間以上あいてしまいました。


 何度も接種するのは、免疫をより確実につけるためです。最初から受け直す必要はありませんが、できるだけ早く2回めを受けましょう。
 また、2回めと3回めは、3~8週間の間隔で、あまりあいだをあけないで接種します。

Ⅰ期の2回めの接種から8週間以上あいてしまいました。3回めは?


 最初から受け直す必要はありません。原則として、2回めの接種から半年以内であれば、できるだけ早く3回めを受けてください。
 しかし、半年以上経過してしまった場合は、Ⅰ期の3回は完了したと考えて3回めをとばして、2回めの接種から1年~1年半後に追加接種を1回受けてかまいません。

Ⅰ期の追加接種が1年半以上あいてしまいました。


 最初の3回の接種で、免疫はかなりついているので、最初から受け直す必要はありません。
 免疫力を高めて病気を予防するためには、接種間隔を守るのが原則ですが、追加接種の場合は、7歳半までに受ければだいじょうぶです。

Q 接種前にけがをしてしまったが?


 破傷風菌は、酸素のあるところでは増殖しないので、ころんでできたすり傷のような浅い表面的なけがの場合は、よく洗っておけば心配ないでしょう。
 なお、四種混合をすでに2回接種していれば、ある程度免疫がついているので、破傷風に感染する心配はありません。
 しかし、四種混合をまったく接種していない、あるいは1回しか接種をしていないときに、古クギや竹やぶの竹などをふんだ場合、傷が深いので感染する可能性があります。急いで小児科を受診してください。
表「予防接種のワクチンのタイプと間隔」表「予防接種のスケジュール表」

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