成長ホルモン分泌不全性低身長症(せいちょうほるもんぶんぴつふぜんせいていしんちょうしょう)

どんな病気?

下垂体から分泌される成長ホルモンが不足して成長障害を起こし、身長が伸びない病気。低身長の原因の約10%。

症状


身長の標準偏差がマイナス2SD以下を低身長といいます。
グラフ「成長曲線の比較例(男子)」
グラフ「成長曲線の比較例(女子)」
SDは標準偏差を示し、各年齢の子どもの95%は−2SD〜+2SDの間に入る。点線の①は特発性、②は続発性の典型例。
 成長ホルモン分泌不全性低身長症は、原因によって、特発性(原因不明)、続発性(ほかの病気が引き金になる)、遺伝性の3つに大別できます。
 乳児期からしだいに低身長の傾向が現れ、4〜5歳の幼児期になって低身長がはっきりしてきたら、特発性を疑います。そのままにしておくと、年々低身長の度合いが強くなり、成長ホルモンが完全に欠乏している場合は、成人しても身長が120〜130cmくらいのことがめずらしくありません。
 続発性の多くは、影響する病気が発症したときを境にして、急に身長の伸びが悪くなります。遺伝性は一般的に、特発性よりもさらに背が低くなります。
 どの原因であれ、成長ホルモンの不足で起こる低身長は骨格の均整がとれ、容貌もふつうで知的な遅れもみられないなど、低身長以外の症状はほとんどありません。ただ治療をしないと、性的な成熟が遅れることがあります。
 この病気は新生児期に発見されることは、まずありません。また乳幼児期の身長の伸び方はゆっくりしているため、なかなか気がつきにくいので、よその子より小さいなど、気になることがあったら、注意深く観察します。

原因


特発性のなかには、出生時に成長ホルモンの分泌が低下したと考えられる症例もあります。それは、骨盤位(さかご)などの異常分娩や胎児機能不全が原因と考えられます。
 また最近は、親の愛情が極端に不足すると成長ホルモンの分泌が抑制されることがわかっています(愛情遮断性低身長症=「親の愛情が極端に不足すると、子どもは低身長になります」)。
 続発性の大部分は下垂体周辺にできた脳腫瘍(「脳腫瘍」)が原因です。まれに髄膜炎(「髄膜炎」)や頭部放射線照射も原因になります。遺伝性はかなりまれです。

検査と診断


身長、体重、胸囲、頭位を計測し成長曲線を描きます。さらに左手のX線写真で骨年齢(年齢に適した骨の成長具合)を調べます。また採血して血液中の成長因子(IGF‐I)を調べます。この病気の多くは骨年齢が遅れ、IGF‐Iの値が低くでます。
 さらに成長ホルモン分泌薬を投与して、血液中のホルモン濃度が増加するかどうかをみる、成長ホルモン分泌刺激(負荷)試験を行います。刺激しても成長ホルモンの分泌が悪ければ、この病気と診断されます。ただ何回も採血するなど、子どもにやや負担がかかります。
 この病気と診断された場合は、脳腫瘍がないか調べるために、頭部MRI検査を行います。脳腫瘍が見つかれば続発性、成長ホルモン遺伝子によるものは遺伝性、脳腫瘍もなく、遺伝性でもなければ特発性と診断されます。

治療


ヒトの成長ホルモンと同じ構造をもつ成長ホルモン剤を皮下注射して治療します。治療は保険適用になり、また、注射は、家で本人や親がすることが認められています。
 量は体重に合わせて1週間分が決められます。それを均等に分割して、なるべく毎日(週6〜7回)皮下注射します。成長ホルモンは入眠後2時間以内がもっとも分泌がさかんなので、寝る前に注射するのが、自然の分泌パターンにいちばん近いといわれています。
 薬の副作用はほとんどありません。
 骨が成熟するにしたがって身長の伸びは減ってきます。毎年、治療成績を評価し、1年間の身長の伸びが1cm以内、または骨年齢が男性で17歳、女性で15歳を越えたら、成長ホルモン治療を終了します。

家庭でのケア


成長ホルモンの注射を毎日続けることで、標準的な身長に近づけることが可能なので、忘れずに行います。最近はペン型の注射器が開発されてらくに注射できるようになり、注射時の苦痛もだいぶやわらいでいます。

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