慢性病のある子どものケア(まんせいびょうのあるこどものけあ)

★どんな子もそれなりに健康


図「無題」
 私たちはよく「病気である」こと、すなわち「健康ではない」というとらえ方をします。でもほんとうに病気と健康ということは、それほど対極に位置するものでしょうか。
 慢性疾患をかかえた子どもは、症状がでると苦しそうだったり、痛みがあるときはつらそうな表情を見せることがありますが、通常は、病気でない子どもと同じように、遊んだり、はしゃいだり、けんかをしたり、という日常を送っています。
 慢性病という病気をかかえていても、子どもは親が考えているほどには悲観も落胆もしていないはずです。どの子もそれなりに、元気に楽しく暮らしていますし、そうしたいのです。
 病気の子どもも、病気をとれば健康な子。これは慢性疾患をもった子どもにもあてはまる考え方であり、どんな子どもにも、それなりの「健康」があるといえるのではないでしょうか。

★「病気」という先入観を捨てる


 たしかに、病気はいやなもので、医師も家族もそう考えています。ましてその病気が慢性疾患で、長期間、入院したり、通院したりというものであれば、親も周囲も落ち込み、暗い気分におちいりがちです。しかし、「病気をもった子ども」という先入観はなくして、その子自身を見ようとすることが大切です。
 将来のこととか、つらい治療のこととかを考えれば、親が沈痛な思いにとらわれるのはわかりますが、まずは子ども自身が負担を感じないで元気にすごしていることを自然に受け止め、みんなで明るくサポートすることが重要なのではないでしょうか。

★よい治療は病気の「受容」から


 近年、医療の分野でクオリティー・オブ・ライフ=Quality Of Life という言葉がよく聞かれるようになりました。「生活の質」「人生の質」「生命の質」などと訳されることもありますが、なかなかぴったりの日本語訳がないので、専門家のあいだではいまのところ、頭文字をとってQOLといっています。
 QOLとはそもそも、欧米で、がんを告知された患者たちが、残された人生をどう生きればよいか、どう価値あるものにしていくか、という問題から発展してきた概念なのですが、その後、がんだけでなく、すべての病気の患者について考えられ、いまでは医療そのものの目的にもなってきています。
 病気のとらえ方には、大きくいって「否定」と「受容」の2つの方法があります。そして、よい治療、高いQOLを得るためには、この「受容」ということがとても大切なのです。
 慢性疾患とひと口にいっても、治る可能性の高いもの、じょうずにつきあっていけばQOLが高くなるもの、最悪の場合、死の危険がともなうものなどさまざまです。病気を「受容」するためには、まずこうした病気についての正しい知識をもつことが大切です。
 といっても、それは簡単なことではないかもしれません。病気を「受容」するにいたるまでには、どんな人も、否認、怒りや憤り、とまどいや混乱、あきらめ、といったプロセスをたどるのがふつうです。とくに子どもの病気の場合、親にとっては、自分たちに責任があるのでは、と思い悩んだり、つらい気持ちになることもあるでしょう。
 でも、自分たちだけで問題をかかえこむのはやめましょう。ここであげたどのプロセスにおいても、親とともにきちんと子どもや病気に向き合ってくれる医師を見つけ、医療スタッフとともに歩んでいくことです。
 みんなで協力し、支えあって病気に立ち向かっていきましょう。

★病気への理解を深める


 子どもの病気がどんな病気であるかは、どのお母さんもお父さんも、主治医から話を聞いたり、医学書を調べたりして、おおよそのことは知っているでしょうが、わからないことや心配なことは積極的に医師に質問して、病気への理解を深めておきましょう。
 また、子どもがどんな治療を受けているのか、どんな薬を飲んでいるのか、さらに、それに対して子どもがどう感じているのかも知っておきましょう。
 子どもが、検査や治療をいやがることがあります。これは、なんのための検査か、治療の内容がわからないための不安からくるものです。
 そんなとき、子どもにきちんとその検査や治療の必要性を説明し、前向きな気持ちでそれにのぞめるようにさせるためにも、病気に対する正しい知識と理解をもつことが大切です。そうすれば、子どももいたずらに不安におちいることなく、病気と向かい合う自信と勇気をもつことができますし、親もいざというときに適切な判断ができるようになるでしょう。

★子どもを病人に仕立てない


図「無題」
 病気に対して正しい知識と理解をもつことはまた、誤った情報やうわさにふり回されて、子ども自身や生活を見失わないためにも必要なのです。
 親が子どもの病気を気づかうあまり、病気というものに対して必要以上に神経質になり、子どもを重病人に仕立てるようなことがあってはならないということです。
 たとえば、ぜんそくの子は年に1回でも発作を起こしたら、一年じゅう「病人」として扱われます。発作が起きたら、もちろん治療は必要ですし、発作を予防したり、起こりにくくするいろいろな注意もおこたってはなりません。しかし、ふだんは健康な子どもとして扱うことも大切なのです。
 子どもに健康でいてほしいという親の切なる思いが、逆に子どもを病人に仕立てあげてしまうことがある、ということにもぜひ気づいてください。

★予防接種は積極的に受ける


 治療というのは、病気を治すということよりも、本来、楽しく快適であるべき子どもの生活に支障をきたすからほどこすものです。これは、かぜなどの急性の病気でも、慢性の病気でも原則は同じです。
 たとえば、慢性病のときに、予防接種をしてよいのだろうかと迷う人は多く、質問もよく寄せられます。予防接種は、子どもが病気にかからないように、快適な生活ができるようにするために予防的に行うものです。したがって、慢性の病気をもっている子ども、体の弱い子どもほど予防接種は必要と考えられます。主治医と相談しながら、積極的に予防接種を受けましょう。

★子どもの自立を考えて


 病気があってもなくても、子どもは一日一日成長していきます。
「まだ小さいのに」「子どもなのにかわいそう」と考えて、子どもが自分でやりたいことを親が制止したり、親が肩がわりしたり、過度に干渉したりして、子どもの自立をさまたげないようにしましょう。
 病気が子どもの自立する心を失わせてしまってはなんにもなりません。子どもの心のすこやかな成長を第一に考えましょう。
 治療法にしても、子どもが自分でやれることや、自分で決定できることは子ども自身にまかせてもよいのです。また、親はそういうことができるように、子どもをじょうずに導き、手助けしていかなければなりません。それこそが親のはたすべき役割であり、そうできるのは親だけなのです。
 病気とつきあいながら、たくましく生きるすべとくふうを子どもが身につけられるようにしましょう。子どもは本来、その力を十二分にもって生まれてきているのですから。

★病気とじょうずにつきあう


 病気も災いもない無病息災は昔から人類の願いですが、一方で一病息災といういい方もあります。1つぐらいの病気があっても、その病気とじょうずにつきあい、コントロールしながら人生を楽しく暮らせればよいという考え方です。
 病気知らずの元気な人が、突然、大病をわずらうと大きなショックを受けますが、ふだんから病気とつきあっている人は、いろいろと気をつけているため、大病になりにくいものです。
 病気がないということは、たしかに健康の1つの形ではありますが、冒頭で述べた「どんな子もそれなりに健康」というとらえ方にたちかえれば、この一病息災ということの意味するところもよくわかってくると思います。
 子どもの生活にあまり害にならないなら、慢性疾患ともじょうずに病気をコントロールしながら共存していくという考え方があってもよいのではないでしょうか。もちろん、この共存相手がひどく暴れだして子どもの生活をおびやかすようなら、きっちり病気をおさえなければなりません。
 主治医の医学的なアドバイスを受けながら、子どもの生活を中心に、親と医師が協力して病気とじょうずにつきあっていきましょう。

★手を取り合って生きる


 病気とじょうずにつきあうといっても、慢性疾患の治療を続けるには、やはりそれなりの負担や苦労がつきものです。国や都道府県、市区町村には、医療費の負担分を公費で援護する制度があります。
 また、最近はいろいろの難病をもつ子を守る会がいくつもできていますので、医師や役所、保健所などに聞いて連絡をとるのもよい方法です。
 ほかの親たちとも手をつなぎ、家族全員、社会全体であたたかく見守りながら、子どもの楽しい生活を支えていきましょう。

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