婦人科検診
重大な病気の早期発見、早期治療に大きな役割をはたします
婦人科の病気は、初期には表面にでないことが多く、症状として現れたときには、病状が進行している場合も少なくありません。ですから、定期的に検診を受けることがとてもたいせつです。
たとえば、子宮がん、とくに子宮頸がんは、30年前にくらべて死亡率がめざましく減少していますが、これは子宮がん自体の発症が減ったわけではなく、検診が普及して早期に発見される人がふえたことが大きな要因と考えられています。また、卵巣がんは、初期には自覚症状がほとんどないうえ、転移も早いので、定期検診でしか早期発見の機会はありません。
子宮がんや乳がんはとくに早期発見、早期治療で治癒する率が高い病気です。発見が早ければ、子宮や乳房を温存する治療法も考えることができます。
年に1回は定期的に婦人科検診を受けましょう。
40歳代はじめごろから卵巣の機能は下り坂になってきます。女性ホルモンのバランスも乱れやすく、さまざまな女性の病気やトラブルが起こりやすくなります。表面に現れてこないからだのようすをチェックするためにも、定期検診を受けることはたいせつです。
専業主婦や学生、フリーターなど、検診の機会が少ない人は、とくに積極的に受けるように心がけましょう。
セックスパートナーができたら10歳代からでも受診しましょう
がんというと、中年以降に多い病気と思われがちですが、こと子宮頸がんに関しては、年齢は関係ありません。というのも、子宮頸がんは、性交渉と密接に関係していて、たとえ10歳代でも性体験があれば、発症の可能性があるからです。このため、アメリカ対がん協会では、複数のパートナーがいたり、18歳より若くして性体験を持ったりした人に、毎年、頸がん検査を受けることを勧めています。
子宮がん検診は各地方自治体でも行っており、自治体によっては、ある年齢(多くは30歳以上)になると、検診の通知を発送しているところもあります。自治体の広報誌などに検診のお知らせが掲載されている場合もあるので、目を通すようにしましょう。
これらの検診で、子宮がん検診と呼ばれるのは、一般的には子宮頸がんの検査をいいます。がん検診をしているからだいじょうぶ、と安心していたら、子宮体がんにかかっていたというケースもあります。45歳をすぎたら子宮体がんの検査も受けましょう。さらに、子宮がん検診の際には、卵巣の検査もあわせて受けることをお勧めします。
乳房検診
乳がんは、女性のがんのなかで唯一、自分で見つけられるがんです。そのため、定期的な自己チエックの必要性がいわれるのですが、自己診断だけでは不安もあります。そこで、自己診断のポイントや、乳がんの予防知識を得るためにも、専門家による乳房検診を受けることが勧められます。
検診の内容は、
(1) 問診、(2) 視診・触診、(3) マンモグラフィ(乳房をはさんでレントゲン撮影をする検査)や超音波検査です。なお、検診は一般に外科で行われますが、乳腺外科や乳房外来として、専門の医師が診察にあたる病院もあります。
また、自治体によっては、健康診断で乳がん検診を行っているところもあるので、積極的に利用しましょう。
婦人科検診…………Q&A
Q)子宮がん検診で「ようすをみましょう」の意味は?
A)指定された期日にかならず検診を受けます。子宮頸がんの軽度の異形成(前がん状態)の場合、経過をみているうちに95%以上は消えるといわれています。そこで経過観察ということになるのですが、ふつうは3か月後に再び検診を行い、クラス(細胞診による分類)が下がっているか消えるかしていれば、半年後、さらに1年後と検診を重ね、問題がなければその後は1年に一度の検診をつづけます。
Q)検診には保険がきかない?
A)検診は原則として自己負担、費用は検査の内容で変わります。ただ、不正出血などあきらかな症状があって受診し、必要に応じてがん検査などを行ったのなら保険がきく場合も。
一般健診
からだを総点検して生活習慣病の予防、早期発見に役立てる
女性の生活習慣病の発症率は、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が減少する40歳代から上がりはじめます。
日本人のおもな死亡原因となっているがん、心筋梗塞、脳卒中(脳卒中のいろいろ)、糖尿病、高血圧症など、いわゆる生活習慣病と呼ばれる病気は、年配の人に多くみられますが、加齢や老化だけで起こるものではありません。多くは、若いころからのよくない生活習慣(食生活の量や質、喫煙、飲酒、塩分のとりすぎ、運動不足、ストレスなど)の積み重ねにより、10~20年かけてじわじわとつくられる病気です。
こうした生活習慣病を予防するためには、日ごろから食生活に気をつけるとともに、若いうちから定期的に健診を受けて、からだの変調を早めに発見することがたいせつです。20歳代なら3~4年ごと、30歳代以降は毎年受けることが勧められています。
専業主婦や自営業、学生など、職場で定期健診を受ける機会のない女性は、地域の自治体の健診や人間ドックなどで積極的に健診を受けましょう。
健診は自分の「健康度」をチェックするためのめやす
定期健診の役割は、生活習慣病などの病気を早期に発見し、また、健康状態をチェックして、健康の維持や向上に役立てることにあります。では、健診さえ受けていれば安心かというと、そうとはいいきれません。
健診は、本人も気づいていない、あるいはまだ症状に現れていないからだの変化を探り出し、これまでの生活のしかたなどに問題がないか、あれば、それを改めるようにアドバイスを与えたり、早期の治療をうながしたりすることで、より健康的な生活を送れるようにすることが目的です。
つまり、健診とはあくまで「健康度」をチェックするもの。健診を受ければ、すべての病気についての検査がすんだということにはなりません。健診を受けることで自分の健康状態を知り、生活スタイルを見直すなどして、これからの健康づくりに役立てる、というのが健診の正しいとらえ方でしょう。
基準値以外は、即、異常ではないけれど
検査の結果は、基準値(または基準範囲)をもとに正常かどうか判定されます。この基準値は不特定多数の健康な人の検査値を総合して、95%の人の数値をとったもの。以前は正常値といわれていましたが、正常範囲にも個人差があることなどから、現在は基準値と呼ぶようになりつつあります。
それでは、基準値の範囲外の数値であれば、即、異常かというと、そうとばかりはいえません。基準値の決め方からいえば、健康な人でも5%は基準値からはずれてしまいますし、基準値も年齢や性別、不特定多数の人の選び方によっても変わります。逆にいえば、基準値の範囲内なら異常ではない、すなわち健康であるとはかならずしもいえないわけです。
また、どんな検査でも測定値には個人差があるのがふつうです。ふだんの体温が高めの人と低めの人がいるように、中性脂肪やコレステロールの値も、もともと高い人と低い人がいます。
同じ人でも検査当日の体調や心理状態、健診施設や検査方法によって数値はちがってきますから、あくまでめやすと考えることです。
検査のデータの積み重ねがたいせつです
こうした個人差を知り、より正確に自分の健康状態を知るためには、少なくとも3~4回は健診を受けることが必要です。そのデータを積み重ね、点ではなく、変化のわかる線にして、自分なりに健康状態にあるときの数値を把握しておくことがたいせつです。
また、「要再検査」といわれたら、こわがらずにもう一度検査を受けましょう。「要精密検査」といわれたら、いくつか「異常」値があったり、たしかに病気かどうか区別がつきにくい状態があったということですから、専門的なチェックを受けることが必要です。
骨密度の検査もプラスして受けましょう
人間ドックでは、規定の検査項目以外にも骨密度の測定検査などを追加で組み込める場合があります。
閉経後の女性に多い骨粗鬆症は、骨量が減少して骨がスカスカになる病気で、骨密度の測定検査は、この骨量を調べるものです。
骨量は年齢に応じて変化するものですが、女性ホルモンの分泌が減少する40歳代後半からは、急速に減少していきます。
でも、骨量がピークをむかえる30歳代くらいまでは、カルシウムの積極的な摂取や適度な運動をすることなどで、骨量をふやすことが可能です。
若いうちから骨密度の検査をして自分の骨量を知り、じょうぶな骨づくりを心がけましょう。
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