糖尿病(とうにょうびょう)

どんな病気?


 血液中の糖(ブドウ糖)は食事をするとふえますが、健康な人は膵臓からインスリンを大量に分泌させ、そのはたらきで血液中の糖を代謝するので、食事後2時間くらいで血糖値がもとにもどります。
 ところがインスリンが不足したり、うまくはたらかないと、糖の代謝異常が起こり、慢性的に高血糖がつづきます。それが糖尿病です。
 糖尿病は、治療にインスリンの注射が欠かせない「1型」、かならずしもインスリンの補充を必要としない「2型」、特定の遺伝子や、肝臓疾患などの病気、薬の副作用で起こる「その他の糖尿病」、「妊娠糖尿病」()慢性疾患のある人の妊娠・出産)に分類されます。日本人の糖尿病の約90%は2型です。

原因


 1型は、免疫反応に重要な役割をする白血球の中のリンパ球が、自己抗体をつくって膵臓のβ細胞を破壊する自己免疫異常(免疫の異常)などが原因で起こります。インスリンがほとんど分泌されない状態です。幼児から15歳以下の小児期に、比較的急激に発症するケースが多くみられます。
 2型は、糖尿病の遺伝因子を持つ人(家族や親戚に糖尿病の人がいる)に、カロリーの多い食生活、運動不足、肥満、ストレスなどの生活習慣因子や加齢が引き金になって発症するといわれています。肥満児がふえた現代は、子どもにも2型が多くなっています。
 日本で急に糖尿病がふえたのは、ライフスタイルの変化によると考えられます。たとえば、外食が多い、脂分の多い料理を食べる、スナック菓子を大量に消費するといった食生活で、カロリーの摂取量が増大しています。
 また、車の普及によって、運動不足を招くことになりました。さらに現代は男性女性、大人子どもを問わず、ストレスがかかる社会といえます。
 主婦にとっては、電化製品の発達も糖尿病増加の一因に考えられます。電気そうじ機や全自動洗濯機などは、家事をらくにしてくれた半面、日常的にからだを動かす機会が減り、運動不足と肥満をもたらしているのです。
 こうした生活が、糖尿病をふやしている要因といえます。

症状


 とくに2型糖尿病の場合、初期の自覚症状がまったくありません。
「からだがだるい」「のどが渇く」「尿の量や回数が多い」「食べてもやせる」などの症状がでたときは、すでに合併症を併発していることもあります。
 糖尿病でいちばんこわいのは、この合併症です。急性と慢性がありますが、なかでも慢性合併症である網膜症、腎症、神経障害は糖尿病の三大合併症といわれています(気をつけたい三大合併症)。しかも、神経障害は、糖尿病になってから数年、網膜症は約5年、腎症は約10~15年後ぐらいに発病するので、気づいたときには病状がすすんでいたりします。
 たいせつなのは、合併症を起こす前に発見して、血糖をコントロールする治療や生活をすることです。とくに会社での定期健診がない専業主婦や自営業の人は、自治体の健診などを積極的に利用して、健康管理につとめましょう。40歳以降は少なくとも年に一度、健診を受けるようにしましょう。

治療・予防


 糖尿病は発症すると、一生つきあっていかなければならない病気です。しかし、食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせて行い、血糖がきちんとコントロールできれば、健康な人と同じ日常生活が送れます。
 運動療法には、インスリンの感受性を高めたり、肥満を防いだり、ストレスを解消するなどの効果があります。
 とくに、生活習慣因子が引き金になる2型では、食事療法と運動療法は重要な治療法で、予防にもつながります。
【食事療法】 糖尿病の人の約半数は、食事療法をすれば、血糖をコントロールすることが可能といわれています。糖尿病食は、きびしい制限食ではなく、栄養バランスのとれた健康食。つぎのポイントを守って楽しく食べましょう。
・野菜や煮物を中心にした健康食を心がける。カロリーは1日あたり、標準体重(標準体重(kg)=身長(m)×身長(m))×22)×25~30kcalで計算する。
・朝食をきちんととり、3食規則正しい食事をすることを習慣化する。
・果物は果糖が多いので、間食に少し食べ、食事がわりに食べない。
・栄養バランスのよい食事を心がけ、たんぱく質、ミネラル、ビタミンなどをきちんととる。
・スナック菓子やマヨネーズなど、脂肪分、塩分が多い食品はひかえる。
【運動療法】 運動療法は血糖値を下げるのに効果的ですが、やり方をまちがえると、症状を悪化させることもあります。運動をするときは医師とよく相談し、つぎのことを守ってください。
・薬物療法をしている人は、低血糖になる危険のある空腹時の運動を避ける。
・かならずメディカルチェックを受け、医師に運動量や方法の指示を受ける。
・インスリンのはたらきを高めるウォーキングや体操など有酸素運動をする。
・運動をはじめて10分くらいたってから血糖値が下がりはじめる。運動は、少なくとも20~30分はつづけよう。
・運動量は、少ないと効果がなく、多すぎても有害。ウォーキングなら1日7000~1万歩がめやす。
【薬物療法】 薬物療法には、経口血糖降下剤の内服と、インスリン皮下注射の二つの療法があります。
 経口薬はおもに、食事療法や運動療法だけでは血糖コントロールできない2型の人に処方されます。インスリン注射は1型の人や糖尿病の妊婦、経口薬が無効な2型の人などに行われます。
 経口薬には数種類あり、低血糖やおなかが張るなど、それぞれ副作用があるので確認しましょう。インスリン注射は1日2~4回、自分で行います(小さい子どもの場合は親がします)。

あなたへのひとこと


 足の傷は感染を起こしやすいので、つねに足の状態に気を配り、いつも清潔にしましょう。とくに女性が注意したいのは、ピルを服用していたり、更年期でホルモン補充(更年期障害の治療法のいろいろ)をしているなど、糖代謝異常が起きやすい時期です。また妊娠すると、胎盤からインスリンと反対のはたらきをするホルモンが分泌され、糖代謝異常が起きやすくなるので注意しましょう(妊娠糖尿病に要注意)。

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掲載された情報を参考に、気になる症状などがあれば、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

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