アルコール性肝障害(あるこーるせいかんしょうがい)

どんな病気?


 大量のアルコールを長期間飲みつづけることで起こる肝障害です。肝臓がアルコールを分解するときにできるアセトアルデヒドという毒性の強い物質が、肝細胞を破壊して死滅させたり(壊死)、炎症性の変化を起こしたり(変性)、肝細胞の線維を増殖させて肝臓をかたく変化させます(線維化)。いくらじょうぶな肝臓でも、日本酒2合(アルコール約40~50gに換算)以上を、5年以上毎日継続して飲酒すると発病します。また、酒好きの人は食事をあまりとらない傾向があるため、たんぱく質不足が肝臓を悪くする原因にもなっています。
 アルコールによる肝障害は、次項からあげる4つの病気に分類されます。日本人の場合、アルコール性脂肪肝になったのち、アルコール性肝線維症をへて、最終的にアルコール性肝硬変にいたるケースがほとんどです。

アルコール性脂肪肝


 肝臓でアルコールが代謝される過程でできるアセトアルデヒドにより、肝細胞に脂肪がたまった状態です。自覚症状に乏しく、健康診断などで発見されることが多いのですが、全身倦怠、右上腹部の鈍痛、食欲不振、吐き気がみられることもあります。
 特別な治療薬はなく、禁酒を厳守すれば完治します。


アルコール性肝線維症


 アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒドによって、肝臓の線維成分が多くなった状態。アルコール性脂肪肝と同様に自覚症状に乏しく、多くは健康診断などで発見されます。そのまま飲酒をつづけると肝硬変にすすみます。禁酒によって改善をはかりますが、高たんぱく・高ビタミンの食事療法と肝庇護剤を服用することもあります。


アルコール性肝炎


 肝細胞の変性や壊死が急激にすすんだ重篤な肝障害です。毎日お酒を3合以上飲んでいる人が、ある日ふだん以上に飲酒したときに突然起こります。
 全身倦怠、食欲不振、吐き気などのほかに黄疸、腹水、腹痛、下痢などの症状が現れます。劇症肝炎のような経過をたどって死亡する人が約30%います。入院治療が必要で、副腎皮質ホルモンの投与が有効です。


アルコール性肝硬変


 大量飲酒によるアルコール性肝障害の最悪結果です。肝臓の細胞が壊死して線維化が起こり、肝臓全体がかたくなって肝機能が極度に低下します。
 日本酒なら1日5合(アルコール約100~125gに換算)以上を10年飲みつづけた場合に発病しやすくなります。
 自覚症状はウイルス性の肝硬変と同様です。アルコール性肝硬変は、肝硬変全体の10%程度を占めますが、ウイルス性の肝硬変とちがって肝細胞がんへの移行は少ないものです。
 完全な禁酒を守り、ほかの肝硬変と同じ治療をすることで良好な予後が望めます。

あなたへのひとこと


 お酒に親しむ女性がふえ、仕事や育児のストレス解消に飲酒する人も多いことでしょう。女性は男性より短期間でアルコール依存症や肝障害が起こりやすいといわれています。育児や家事のストレスから逃げるためお酒に走り、キッチンドランカーと呼ばれるアルコール依存症(依存症)になる人もみられます。ストレス解消をお酒に求めるのはやめ、飲みすぎに注意しましょう。

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