未熟児とは早産(早期産)児と低出生体重児のこと
未熟児という言葉は、現在、医学的には使われていませんが、一般的には、①在胎37週未満で生まれた早産(早期産)児、②体重が2500g未満で生まれた低出生体重児の両方を、ばく然と「未熟児」と呼んでいます。いちばんの原因は早産です。またお母さんの喫煙も、原因の1つにあげられます。
低出生体重児が生まれる頻度は、全出生数の約7~8%です。1500g未満を極低出生体重児、1000g未満を超低出生体重児といいますが、両方合わせても1%以下にすぎません。
早産児の生存の可能性は、週数がポイントになります。在胎22週では9割以上が死亡、25~26週になると、半数以上が後遺症もなく正常に育ち、27~28週以降の場合は、多くが後遺症もなく、まずふつうに育つと考えられます。
臓器の成熟度も、生存の大事な要素です。肺が成熟する33~34週以前に生まれた場合は、呼吸窮迫症候群になる可能性が高く、治療がたいへんです。
22~33週ごろまでに生まれると、新生児集中治療室(NICU)のある病院へ搬送されるのが一般的です。34~36週で生まれても、成熟度が高いときは、搬送されないことも多くあります。
保育器に入れ、母乳授乳、タッチケアが理想
未熟児は保育器にすぐ入れられ、保育器内を体温と同温程度に保ち、湿度を調節して、皮膚からの水分蒸発をおさえます。保育器は感染症の防御にもすぐれ、また外から観察しやすいので、容態が急変してもすぐわかります。
未熟児で生まれた場合、栄養や免疫物質が多く含まれ、消化のいい母乳を与えるのが理想です。未熟児はほ乳力も消化力も弱いので、最初はチューブで母乳を流し込みます。お母さんは搾乳して、本人か家族が母乳を赤ちゃんに届けるようにします。母乳がでない場合はミルクを与えます。
病院では最近、細菌からの感染防止を重視したうえで、お母さんと赤ちゃんが十分に肌をふれあったほうが、赤ちゃんの発育がいい(タッチケア)と考えられています。またお母さんも、赤ちゃんにふれることで親としての自覚と愛情が増すともいわれています。
未熟児にみられる特有の症状と治療
呼吸窮迫症候群
肺をふくらませるサーファクタントという物質は33~34週ごろにつくられます。それ以前に生まれると肺がふくらまず、赤ちゃんはなんとか吸おうとして呼吸が深くはげしくなり、顔色が真っ青になります。肺に空気がいかなくなると危険です。人工呼吸器で肺をふくらませる治療と、人工サーファクタントを肺の中に流し込む治療を併用することで治療効果が上がっています(「呼吸窮迫症候群」)。
未熟児網膜症
眼球のうしろ側にある網膜の血管が最終的につくられる35~36週以前に生まれた場合、血管が正常な方向に伸びなくなることがあり、ひどくなると網膜剥離を起こして失明します。定期的に眼底検査をし、異常がある場合は、レーザーで網膜を焼くなどの治療をすることもあります。軽度の網膜症は自然治癒するので治療は行いません(「未熟児網膜症」)。
低体温
未熟児は体が小さいぶん、熱が奪われやすく、10分手当てが遅れると体温が1~2度下がります。体温が下がると血液循環が悪くなり、呼吸が止まったり脳に障害が残ったりするので、すぐ保育器に入れ体温低下を防ぎます。
低血糖
脳は糖分からしかエネルギーを補給できないので、糖分が不足すると脳障害を起こします。在胎期間が短い未熟児は、糖の蓄えが少ないので、自力で栄養がとれない場合は、かならず点滴で糖分を補います。
頭蓋内出血
34週未満の赤ちゃんは脳が未熟なため、低酸素や分娩時の圧迫で頭蓋内出血が起こりやすくなります。軽度の場合は対症療法を行うだけで、後遺症もなく正常に発育しますが、出血量が多いときは、輸血などの全身管理が必要になり、死亡したり、脳性まひ(「脳性まひ」)などの後遺症をもたらすこともあります(「新生児の頭蓋内出血」)。
退院後の赤ちゃんの世話と発達のめやす
退院の時期は施設によって異なりますが、一般的には体重がめやすです。赤ちゃんが2100~2500gになると退院することが多いようです。
家庭では、感染防止に神経質になる必要はなく、ふつうの赤ちゃんと同じように育てます。退院後はほ乳力がついていますから、授乳もふつうに行います。ただ心臓の形態異常や慢性肺疾患などをともなっていて、うまく飲めない場合はチューブで飲ませます。
未熟児はほかの子にくらべて小柄な時期が長いのですが、大人になるまでには、ほぼ平均的な体格になります。
発達は実際の誕生日からみると遅れているように感じますが、たとえば2か月早く生まれた場合は、2か月後を誕生日と考えると、遅れていないことがわかります。ただ未熟児は抵抗力が強いほうではないので、予防接種は実際の誕生日から数えた月齢で受けます。
低出生体重児が生まれた場合、母子保健法により、親は保健所などに届け出をすることが義務づけられています。また未熟児医療指定機関で医療を受けた場合は、未熟児養育医療制度により医療費は全額公費負担になります。所得によって一部自己負担の場合もあります。

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