開腹手術の手順と経過
おなかを切開して行う開腹手術
下半身麻酔または全身麻酔によって下腹部を10~15cmほど切開し、そこから子宮、卵巣などの臓器や病巣部分を摘出する手術です。
切開の方法としては、陰毛の生えぎわの少し下あたりを横に切る、いわゆる「横切り」と、おへその真下から縦に切る「縦切り」とがあります。横切りは、縦切りにくらべて傷あとが目だたず、ビキニなども着ることができますが、手術の際、視野がせまくなるため、筋腫などがあまり大きくなく、癒着の可能性がない場合など、手術の状況がかぎられます。
一方、縦切りは子宮や卵巣、膀胱、直腸などがよく見え、癒着も確認できるので、より確実で安全といえます。
目で直接、病巣の確認をできるのが利点
開腹手術では、一般に広い視野が確保できるので、腹腔内全体がチェックできる利点があります。ほかの臓器や周辺のようすなどを目で見ながら手術できるため、強度の癒着が起きていたり、転移して病巣が広がっていたりなど、さまざまな事態に対処できます。
また、強度の癒着も手や指先でていねいにはがすことができます。卵巣嚢腫(卵巣腫瘍)などで、悪性の可能性がある場合には、腫瘍がどんなに小さい場合でも、開腹して手術を行ったほうが安全性が高いといえるでしょう。
ただ、おなかを切るのですから、どうしても傷あとは残りますし、術後のからだの回復にもある程度の時間がかかります。
入院から退院まで2週間ほどかかります
手術後の経過にもよりますが、開腹手術の場合、入院期間は10~14日ほど。通常、手術の2日ほど前に入院して必要な検査、麻酔科医の診察などをすませ、手術前日から当日に浣腸、剃毛などを行います。また、手術後の回復を助けるために、深呼吸やせき、うがいなどのやり方を練習しておきましょう。方法は看護師が教えてくれます。
手術後は痛みや発熱、また麻酔の影響で吐き気がでることがあります。そんなときは、薬を出してもらえるのでがまんせず、看護師に申し出ましょう。開腹手術では通常、術後5~7日ほどで抜糸し、さらに2日ほどで退院となります。退院までに、手術の結果の説明と今後の治療方針などについての説明や退院後の生活指導があります。退院に向けてなにか心配なことがあったら、早めに相談しましょう。
子宮鏡下手術の手順と経過
子宮筋腫のうち、粘膜下筋腫、有茎性粘膜下筋腫の核出術に用いられる方法で、おなかを切らずに手術することができます。手術前日にラミナリアという器具を挿入して子宮口を少し開き、直径約1cmの子宮鏡を腟から子宮内に挿入、子宮鏡で見ながら電気メスで筋腫を少しずつ削り取っていきます。開腹手術にくらべて痛みが少なく、入院も3日から1週間と短期間ですみます。
腹腔鏡下手術の手順と経過
おなかに小さなあなをあけ、腹腔鏡を入れて行う手術
全身麻酔をして、おへそのすぐ下に直径5mm~2cmのあなを2、3か所あけ、そこから腹腔鏡や必要な器具を挿入して行う手術。腹腔鏡に映し出されたおなかの中のようすをモニター画面で見ながら鉗子、レーザー、電気メスなどを操作して手術が行われます。子宮内膜症や子宮筋腫、卵巣嚢腫、子宮外妊娠(妊娠初期のトラブルと対処法)などさまざまな病気に対応できる手術で、安全で回復も早い方法です。
腹腔鏡は子宮内膜症の最終的な確定診断に使われる装置で、診断と同時に、そのまま手術が行われることもあります。最近は、技術が進歩して精密度も増し、腹腔鏡下で保存的手術だけでなく、子宮などの全摘出までできるようになっています。
ただ、開腹手術にくらべて視野がせまいために突発事態への対応がむずかしく、強度の癒着や多量の出血がみられた場合や、腫瘍の転移など病巣の広がりぐあいによっては、途中から開腹手術に切り換えることもあります。
また、切除したものを取り出すために腹壁の切開を広げたり、ときには腟の奥の一部を切開したりして、そこから取り出すこともあります。
腹腔鏡下手術を選択する場合は、このように開腹手術に切り替わる可能性もあるなどの説明を受け、納得しておくことが必要です。
傷が小さくてすみ、入院期間も短縮できる
開腹しなくてできる腹腔鏡下手術では、開腹にくらべて傷が小さくてすみ、ばんそうこうを貼るだけか、大きくても1針縫う程度なので、からだへの負担が少なく、傷あとも目だちません。
入院期間も半分程度か、病院によっては手術の翌日から数日で退院できるという利点があります。また、開腹では起こりやすい手術後の癒着が最小限に抑えられるともいわれます。
モニター画面に映し出されたようすはビデオに記録されるので、手術後、患者さんがそれを見ながら説明を受けられるのも大きな利点でしょう。
ただ、腹腔鏡の設備のない病院もまだ多く、非常に熟練した技術が要求されるため、大きな病院で手術を行う場合にかぎられます。
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