予防接種はこわい感染症にかからないために受けます
図「無題」世の中には、ポリオ、はしか(麻疹)、百日ぜき、破傷風など、かかると死亡したり、重い後遺症を残すこわい感染症が多くあります。これらの感染症に対して、あらかじめ病気とたたかう抵抗力(免疫)をつくって、自然感染から体を守ってくれるのが予防接種です。
予防接種で使われるワクチンは、感染症の原因となるウイルス、細菌や病原体の毒素などを、発病しない程度に弱くしたものです。ワクチンには、生ワクチン、不活化ワクチン、トキソイドの3種類があります表「予防接種のワクチンのタイプと間隔」
予防接種は、このワクチンを子どもが健康なときに体内に入れて、軽くその病気にかかった状態にし、あらかじめ抵抗力(免疫)をつくっておきます。そうすると、いざ本物の病原体が体内に侵入したときに、その病原体をやっつけて体を守ってくれるのです。
予防接種の対象は、かかるとこわい病気ばかり
予防接種が行われている病気は、かかってこじれてしまうと、治療法がないため、治すことができない病気ばかりです。そのため死亡したり、回復しても、重度の障害が残ってしまうこともあります。
たとえば、はしかについてみると、乳児から大人まで流行がみられ、とくに、年齢の低い子がかかると重症になりやすく、多い年では年間50人、少ない年でも10人前後の子どもが亡くなっています。はしかウイルスが脳に侵入して脳炎にかかったり、肺に侵入して肺炎を起こすと、特効薬がないため、対症療法を行いながら、その子の治癒力に頼るしか方法がないのです。これは、ほかの予防接種の対象になっている病気についても同じことがいえます。
お母さんのなかには「体をきたえているから予防接種を受けなくてだいじょうぶ、感染しない」という人もいますが、これはまちがい。はしかや水ぼうそうなど予防接種の対象になっている病気は、独特の免疫が必要なので、どんなに体をきたえていても、予防は期待できません。むしろ、「まわりの子どもの70〜90%が予防接種をしているから、あなたの子どもがかからなくてすんでいる」という事実を知っておきましょう。
つまり、かかるとこわい病気だから予防接種があるということを理解してください。もし治せる病気であれば、病気になってから治療すればいいのですから、わざわざ予防接種をする必要はないのです。
いま、流行していなくても予防接種をやめると再流行する
予防接種のなかには、ポリオや、ジフテリアのように、日本では身近にみられなくなった病気もあります。しかし、病原体が死滅したわけではありません。世界に目を向けると、まだまだ流行している国も多いのです。実際、ポリオは南アジアなどで、ジフテリアはロシアで流行がみられます。日本でみられないのは、予防接種が行きわたったおかげで、流行がおさえられているからなのです。逆に考えれば、予防接種をしない人がふえると、流行する可能性がいつでもあるということです。
また、現代は、子どもでも気軽に海外へ旅行する時代です。外国に自由に行き来ができ、海外からもどんどん人が入ってきています。世界がせまくなったいま、感染する可能性はどこにでもころがっています。予防接種を受ける受けないは、国内レベルではなく、地球レベルでみることが大切です。
外国では予防接種の普及率が高い
国際レベルでみると、日本は予防接種に対して非常に慎重な国といえます。
多くの国では、出生時や生後1〜2か月で、ポリオや細菌性髄膜炎(インフルエンザ菌b型)、B型肝炎などの接種を行っているのが現状です。ポリオに関してはWHO(世界保健機関)では最低3回の接種をすすめており、アメリカでは4回接種しています。日本では生ポリオワクチンを2回しか接種していませんでしたが、2012年9月に不活化ポリオワクチンを導入することで、接種回数が4回となりました。
また、アメリカでは2か月、4か月、6か月の健診のときに、フランスでは、生後2か月、4か月、11か月の健診のときに、三種混合、ポリオ、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(日本のものとは異なる)、小児用肺炎球菌などを一度に接種しています。このように、同じ日にまとめて同時接種しても不都合はなく、副反応が強く現れることもありません。
一度に6種類くらいの病気のワクチンを接種して、予防接種をできるだけ早く終わらせ、子どもを病気から守るという考え方が、欧米など先進国の基本的な考え方です。
なお、アメリカでは、幼稚園や小学校に入るとき、予防接種をすませておくことが要求されるため、ほとんどの子が接種をしています。逆に、予防接種を受けていない日本の子どもが、親の転勤や旅行でアメリカに入国するとき、はしかをもち込み、そこで病気を流行させているという事実があります。
副反応よりも本物の病気になるほうがこわい
図「無題」
予防接種で、体内に入ってきたワクチンに反応して起こる好ましくない体の変化を副反応といいます。
副反応は、予防接種の種類によってちがいますが、つぎの4つがあげられます。まず、①起こることが予想できて、治療が必要ない副反応。たとえば、「接種部位がはれた」「熱がでた」「発疹がでた」などの軽いもの。②非常にまれに、100万人に1人程度の確率で起こる、まひなどの重症例。そして③「まぎれこみ事故」。これは、接種後、別の原因で症状がでたとき、予防接種のせいにされることです。
実際、予防接種後にみられる、熱、下痢、せき、けいれんなどのほとんどが、かぜなどによる症状で、予防接種とは無関係なことが多いのです。しかし、因果関係をはっきり証明できないため、予防接種が原因であるとみなされる可能性が高くなります。④としては、いまの医学では、まだ知られていない副反応もあるかもしれません。
「重い副反応は数万人に1人」といわれてもゼロでないかぎりは心配かもしれません。しかし、予防接種を受けて副反応を起こす確率と、予防接種を受けないで、その病気にかかったとき、重い後遺症や死亡する確率はどっちが高いかといえば、自然感染して病気にかかるほうが、はるかに高いのです。
また、自然感染の場合は、周囲の子どもにも病気をうつして、リスクを負わせることにもなります。予防接種を受けることは、自分の健康を守るだけでなく、自分以外の人の健康を守ることにもつながるのです。
なんといっても、予防接種は、子どもがすこやかに育つための1つの権利です。自然感染することのデメリットと、予防接種を受けることで起こりうる副反応のデメリットをよく理解して、受けるかどうかを判断してほしいものです。疑問点は、納得できるまで医師に相談して、きちんと説明してくれる小児科医のもとで、接種を受けるのがいいでしょう。
重い副反応に対しては救済措置がとられます
副反応で治療が必要になったり、後遺症がでたり、死亡した場合、定期接種では、予防接種健康被害救済制度の対象(決められた期間をはずして接種した場合は、任意接種の扱い)に、任意接種では、医薬品副作用被害救済制度の対象になり、救済措置(入院・通院費用の負担、見舞金など)がとられます。
この場合は、医師の診察を受けたうえで、市区町村の予防接種担当課に相談します。
表「予防接種のスケジュール表」
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