心の症状や問題行動は、自分を危機から守る手段
夜泣きがいつまでもやまない、表情が乏しくなった、落ち着きがなく動きまわるなどの子どもの行動がみられると、親は重大な心のトラブルによるものではないかと心配します。しかし、子どものこうしたふるまいは、親や周囲の人に、自分の心が踏みにじられるような危機的状況にあることを知ってもらい、その解決の糸口をみつけたいがための行動であることが多いのです。
そのため、たとえば親が子どもの夜泣きを困ったものだと思い、夫婦のあいだで、子どもへの接し方が悪いからだとお互いになじり合い、子どもをやっかいだと思えば、ますます夜泣きはひどくなることがあります。子どもは夜泣きの原因となる問題の解決ができないだけでなく、親にも見放され、さらに危機的な状態におちいります。
親は子どもの問題となる行動(問題行動)を心配するより、問題行動を起こす子どもの心の背景を考える必要があります。そこに親子の関係や育児のあり方、親自身の心の問題など、重大な意味が隠されていることがあります。
問題行動は成長にしたがい異なる現れ方をする
発達の途上にある子どもは、それまでに習得した能力でしか自分を表現できません。問題行動も、年齢や発達のレベルによって変わってきます。たとえば、まだ言葉が発達していない場合には、不安やおそれ、苦痛などの気持ちを、頭をふる、吐く、夜泣きをする、けいれんを起こすなど、身体症状や身ぶり、そぶりで現します。
言葉が話せるようになると、吃音(「小児期発症流暢症(吃音)」)や黙りこくって反応しない緘黙(「緘黙」)などの症状がでてきます。さらに、強いストレスにさらされると、おなかや頭が痛い、手足がふるえる、爪をかむ、気を失うなどの症状が現れます。思春期近くになって、自分の気持ちをはっきり表現できるようになれば、言葉で不安や悩みを訴えるようになります。
これらの症状のなかには、発達するにしたがって消えていくものも少なくありません。
あるがままの子どもを見つめる

子どもの心の問題について、子ども自身が訴えることはきわめてまれで、親が「すこしようすがへんだ」と病院に訴えてきます。しかし、親の訴えは、親の幼いころの体験をもとにしてかってに思い込み、ストーリーをつくって、子どもにあてはめていることが少なくありません。ときには、親自身が子ども時代にもどってしまい、自分自身が幼いころ、不安や不満に思っていたことを、子どもの問題行動を借りて訴えていることもあります。
子どもが問題行動を起こすもとは、「もっと私の話を聞いてよ、もっと私を見つめてよ」という願いといってもいいでしょう。そんな子どもの願いを受け止めるには、親はあるがままの子どもを見つめることが大切です。親の意見をはさむ前に、子どもがなにを訴えたがっているのか、じっと耳を傾けましょう。子どもの身ぶりやそぶりが意味することをキャッチしましょう。
医師のあいだでは、親やまわりの人々から訴えられた行動が、イメージとして目の前にありありと浮かぶように、たんねんに聞くという姿勢が大切とされています。親も、子どもの訴えを、目に浮かぶように、ていねいに聞くことが必要でしょう。
「なにいっているの? もっとはっきりいいなさい」などの言葉は、子どもを威かくするだけです。子どもはそういわれたとたん、訴えるのをやめて、自分の殻に閉じこもってしまいます。
「そうなの」「そうなんだ」と、あいづちを打ちながら親が聞くだけで、子どもの不安や不満が解消されたり、思春期のころの子どもなら、自分で解決の糸口をみつけて、問題行動を自ら解消できることもあります。
親が子どもの気持ちに近づいて変わることが大切
子どもには個人差があります。育てやすい子、育てにくい子、発達の早い子、ゆっくりな子など、その子なりの発育・発達のしかたで成長します。したがって、同年代のほかの子どもと比較する必要はなく、また、いまの子どもの問題行動が固定して、大人になってもずっとひきずっていくのではないかと心配する必要もありません。
また、親は、うちの子は「いい子」「悪い子」というとらえ方をしがちです。しかし、親にとっていい子は、往々にして親にとって、いうことをきく便利な子にすぎないことがあります。
しかも、いい子ほど、親の思いや期待にふり回されて自分をだすことができず、大きくなってから、問題をいっきに噴出させることがあります。
むしろ幼いうちは、親を心配させるような問題行動を起こすほうが、子どもの心の問題に気づきやすいでしょう。
そうすれば、親は考えや態度を変えることができ、親も子も救われます。子どもを変えるのではなく、親が子どもの気持ちに近づいて変わることが大切です。親が変われば子も変わり、心の問題を解消することができます。
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