滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)

どんな病気?

中耳に分泌液がたまった状態です。乳幼児に多くみられますが、軽い難聴以外には、とくに症状はありません。

症状


軽い難聴以外に症状がないため、保護者が気づくことはあまりなく、かぜで受診したときや健診で偶然、みつかることがよくあります。
 通常、聴力の低下は20デシベル(教室のうしろのほうで先生の声が聞こえにくい程度)以下なので、家庭ではわかりにくいのが現実です。
 テレビの音量調節ができる子どもの場合、音量を大きくするようになったり、テレビに近づいて見るようなら注意が必要です。
図「無題」
 滲出性中耳炎は、一般の乳幼児の調査では、1年間に30〜40%程度みられ、3歳までにほぼすべての小児がかかるありふれた病気です。
 3歳をすぎると発症頻度は少なくなり、小学校入学前には、ほとんどみられなくなります。

原因


乳幼児期によくみられる理由は、かぜなどによる感染をきっかけに、中耳に炎症が起こり、分泌液がたまりやすいためです。
 また乳幼児では、本来、分泌液を排出する役目をする耳管のはたらきが悪いために起こると考えられます。

治療


自然治癒率が高く、発症から3か月で50%程度治癒するため、あわてて治療を開始する必要はありません。
 治療法としては、なにもしないで経過をみていく方法、2〜3週間ほどの抗生物質の単独投与、または1週間程度、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の投与を併用する薬物による治療のほか、鼓膜切開を行う方法や鼓膜切開のときに鼓膜チューブを入れる外科的な治療があります。
 鼓膜チューブの挿入は、中耳の換気をうながし、短期的な有効性は高いのですが、チューブを抜いたあとの再発率に差がないことや、鼓膜穿孔の状態が続いたり、鼓膜硬化症などの合併症の問題もあります。
 米国のガイドラインでは、滲出性中耳炎による乳幼児の難聴が言語発達に影響する可能性を完全に否定できないことから、滲出性中耳炎が4か月以上持続し、両耳とも20デシベル以上の難聴があるときのみ、鼓膜チューブの挿入を認めています。
 難聴による言葉の発達の遅れが、滲出性中耳炎の治療を行うかどうかの判断基準になっていますが、通常は日常会話に支障がない程度であり、年長児で滲出性中耳炎による言葉の遅れは事実上ないため、あせらないで自然治癒する時期を待ってもよいでしょう。
 小学校に入学しても治るようすがなく、学校生活に支障をきたすような難聴があれば、そのときにチューブの挿入による治療を考えても遅くありません。
 ただし、鼓膜が癒着を起こす癒着性中耳炎や、鼓膜組織が中耳の中で増殖する真珠腫などの合併症は難聴をきたすことがあり、早期の治療が必要になります。
 こうした合併症は、定期的な診察で発見できるので、滲出性中耳炎と診断されたなら、月に1〜2回は定期的に診察を受けることが大切です。

家庭でのケア


症状がないため、定期的な受診を忘れがちになりますが、合併症の予防のためにも、忘れずにきちんと受診するように心がけます。
 保育園や幼稚園に通う子どもは、かぜをひく機会が多いため、滲出性中耳炎になりやすいことが知られています。かぜなどで受診するときは、かならず耳もみてもらうようにしましょう。
 また、タバコの煙も影響することがわかっているので、家庭では禁煙にするように努めます。
 滲出性中耳炎は急性中耳炎の治療が不適切だったために起こるということをよく聞きますが、まったく根拠がありません。

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