どんな病気?
腎臓から血液の中のたんぱく質がもれだし、尿中に多量のたんぱく質がでる病気です。
症状
ひどいむくみが特徴です。はじめはまぶたがはれぼったくなり、そのうち手足がむくんでくつがきつくなり、さらに顔全体がむくみます。むくみのため体重が急にふえ、男の子では陰嚢がはれることもあります。
一方、尿の量が減ってきて、尿検査では多量のたんぱく質が認められます。尿を排泄したとき、尿が異常に泡立つことでも発見されます。顔色が悪く、食欲不振、倦怠感があります。
血液検査では、たんぱく質が減少して、コレステロール値が上昇しています。急性腎炎(「急性腎炎(急性糸球体腎炎)」)とちがい、強い血尿や高血圧はあまりみられません。
原因
子どもに多くみられるのは、特発性ネフローゼ症候群と呼ばれるもので、5歳前後に発症することが多いようです。原因は、まだはっきりわかっていませんが、免疫の異常によるものと推定されています。
腎臓の中には糸球体という毛細血管が糸くずのようにからまりあった部位があります。ここで血液をふるいにかけ、老廃物は尿として排泄し、再利用できるものは血液中に再吸収します。ところがネフローゼにかかると、糸球体が障害を起こして、血管の中から外にたんぱく質がもれて、尿といっしょにでてしまうのです。
その結果、体にたんぱく質不足が起こり、全身にむくみが生じます。
治療
副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の投与が治療の中心になりますが、服用をやめると半数以上の人が再発するため、何年間も飲み続けることがあります。
その結果、顔が丸くむくんだり(ムーンフェイス)、肥満、高血圧、白内障、あるいは、骨が弱くなったり、感染症にかかりやすくなるなど、多くの副作用をともなうことがあります。
この場合には、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の使用量を減らすために、強力な免疫抑制剤を併用することになります。
なお、むくみが強いときは安静を保ちます。しかし、たんぱく尿が消えたら、かぜをひかないように注意しながら運動制限をゆるめていきます。
食事は、バランスのとれた消化吸収のよいものを摂取します。むくみが強いときは、おもに塩分制限が基本で、水分制限はとくに行いません。
たんぱく質の多い食事にすると、糸球体の障害をさらに強めるため、たんぱく質は多量にとらないようにすすめられています。
なお、この病気は、再発しやすいのが特徴で、一度かかった子の約7割は再発するといわれています。しかし、その多くは、高校生になるころには、治ってきます。
医師は、それまでのあいだ、できるだけ副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)の副作用を最小限におさえながら、再発しないように効果的に薬をじょうずに処方していきます。
なお、再発をくり返したり、副腎皮質ホルモン剤(ステロイド)のききめが悪い場合は、腎生検(腎臓の組織の一部を採取して精密検査をする)を行ったうえで、より強力な薬を投与して改善をはかります。
家庭でのケア
できるだけふつうの生活をしてよいのですが、十分な注意が必要です。細菌が体に入らないように、むし歯の治療時には抗生物質を服用します。予防接種、肥満、低身長などについては、主治医の先生と相談して、指示にしたがってください。
図「糸球体のしくみ」
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