現代社会と症候群（げんだいしゃかいとしんどろーむ）

　最近、「～症候群」「～シンドローム」ということばがよく使われています。医学的には、複数の症状がある一定のパターンを持って現れる状態をいいます。
　ここに紹介するものは、かならずしも医学的な見地に即したものではありませんが、ストレスにさらされつづける現代社会の一面を映し出す鏡だといえるかもしれません。
・リストカット症候群（思春期に気をつけたい心のトラブル）
　カミソリなどで手首を切る、自傷行為をくり返します。直接自殺に結びつくものではなく、不安や絶望感、自信のなさなどから抜けだす手段として、こうした行為におよぶと考えられます。若い女性に多くみられ、その背景には、幼児期の親子関係の問題や性格のかたよりがあるといわれます。
・スーパー・ウーマン・シンドローム
　仕事も家庭も趣味にいたるまで完璧にこなそうとし、ついには精神的にも身体的にも限界に達してダウンしてしまいます。
　自分を押し殺して、必要以上に周囲の期待にこたえようとする「がんばる女性」に多くみられます。
・テクノストレス症候群
　コンピュータを長時間使用して仕事をする人に現れます。疲れ目、めまい、頭痛、吐き気などの身体的症状と、不安やイライラなどの精神的症状を起こします。
・子育て困難症候群
　生まれた子どもに関心をいだけず、育てる意欲もわきません。そのため、うつ状態になったり、子どもに暴力をふるいます。
　こうした背景には、女性の生き方の多様化があると考えられます。母親になることは選択肢の一つにすぎず、時間と労力、忍耐を必要とする子育てに大きなストレスを感じることが原因になります。
・燃えつき症候群（成熟期に気をつけたい心のトラブル）
　希望に燃え、熱心に仕事に取り組んできた人が、知らず知らずのうちに心理的プレッシャーを受け、心身ともに疲れきって、あたかも燃えつきたような状態になります。
　気持ちがひどく落ち込む、感受性が低下する、自信が持てなくなるといった精神的な症状のほか、不眠やめまい、頭痛などの身体的症状が現れます。
・空の巣症候群（更年期に起こりやすい心のトラブル）
　子どもが就職や結婚などで独立したあと、母親が空っぽの巣に取り残されたような気持ちになることをいいます。
　それまで一手に子育てをになっていたため、さびしさやむなしさを強く感じ、うつ状態におちいります。更年期のホルモン分泌の変化や、夫との信頼関係の希薄さなども影響すると考えられます。
・夫在宅ストレス症候群
　夫の定年退職後、妻側に現れる一連のストレス症状をいいます。それまで自分のペースで家庭生活を営んでいた妻は、夫の在宅によって生活のリズムが乱され、強いストレスを感じます。肩こりや頭痛、イライラ感や不眠などの身体症状が現れます。それまでの夫婦関係が大きく左右します。