神経症(神経症性障害)(しんけいしょうしんけいしょうせいしょうがい)

●神経症とは?


 慢性的なストレス、災害や近親者の死などの急激な精神的ショック、対人関係の葛藤(ノイローゼ)など、心の問題がおもな原因となって起こります。また、その人の持つ性格も関係していると考えられます。神経症になりやすいタイプとしては、内向的、几帳面、一つのことにこだわる、人からの評価が気になる、などがあげられます。
 子どもから大人まで起き、またいろいろな種類があり、程度も軽いものから日常生活に支障をきたす重度のものまで多様です。共通点は、自分は少しおかしいのではないかといった認識が、患者さん自身にあることです。
 専門家の援助によって、心の問題に気づき、その問題を徐々に解決していけば、しだいに回復する病気です。
 なお、子どもは、心の状態をことばで表現する能力が未熟なため、葛藤や不安があると、身体症状や行動上の問題として現れることがあります。同じ行動をくり返す強迫行為もその一つです。

不安神経症(パニック障害)


どんな病気?


 突然、はげしい不安感や恐怖感に襲われます。心臓がドキドキする、息苦しい、からだがふるえるといった症状が現れ、「自分は死ぬのではないか」という強い恐怖を感じます。心電図などの検査をしても、異常は見つかりません。しかし、一度発作を体験すると、また起こるのではないかと不安になり、それが引き金となって発作をくり返します。

原因


 几帳面、心配性といった性格が関係しますが、個々に背景が異なり原因の特定はできません。

治療


 医師は患者さんと話をするなかで、その人の心の根っこにある不安がなんであるのかをあきらかにする手助けをします。薬は、不安をやわらげる抗不安剤や抗うつ剤を用います。

あなたへのひとこと


 どんなにはげしい発作でも死ぬことはありません。症状は数分から数10分以内でおさまることを頭に入れて、じょうずに発作とつきあい、医師のアドバイスを受けながらあせらずに克服していきましょう。


強迫神経症(強迫性障害)


どんな病気?


 自分でも無意味だとわかっていながら、何度も同じ考えが浮かんできたり(強迫観念)、同じ行動をくり返します(強迫行為)。
 強迫観念は、たとえば「駅のホームで電車に飛び込んでしまうかもしれない」という考えが浮かぶと、考えないように努力しても、どうしても打ち消すことができなくなります。
 強迫行為でよくみられるのは、部屋の鍵をかけたかどうか何10回も確かめないと気がすまない「確認癖」、きれいだとわかっていても、くり返し手を洗わずにはいられない「不潔恐怖」の症状です。症状がすすむと、1日の大半をこうした行動に費やし、日常生活に支障をきたします。
 また、これらの症状は、統合失調症うつ病の初期に現れることがあります。適切な診断を受けるためにも、早めに専門科を受診しましょう。

原因


 強迫観念・強迫行為の背後には、不安と恐怖心があります。生まれ育った環境やストレスの蓄積のほか、脳の神経伝達物質であるセロトニンのバランスの乱れなども原因と考えられます。

治療


 抗不安剤、坑うつ薬などの投与で不安や恐怖心をやわらげます。また、カウンセリング、行動療法(患者さんの症状や問題となる行為は、これまでの生活体験のなかで獲得したものと考えます。なぜそうなったかをあきらかにし、望ましい考え方や行動を身につけて症状を改善していきます)、家族療法などの精神療法も行います。

あなたへのひとこと


 治療を受けて症状が改善すると、いやな考えがわいてくることも少なくなり、ずいぶんらくになります。また、現代は日本人全体が清潔志向で、不潔恐怖症予備軍の人が大勢います。「いいかげんさも健康のうち」ぐらいの心の余裕を。


対人恐怖症(社会恐怖)


どんな病気?


 人と同席する場面で、強い不安や緊張が起こり、そのことを人に気づかれるのではないかと不安になります。具体的には、赤面する、多量の汗をかく、手やからだがふるえるといった症状が現れます。
 人はだれでも、人前では多かれ少なかれ緊張し、赤面したり声がうわずったりするものです。対人恐怖症は、こうした症状が極端に強く、持続的に起きるため、本人はたいへん悩みます。また、ふつうは「はずかしくて赤くなる」のが、対人恐怖症では「顔が赤くなるのがはずかしい」という訴えになるのが特徴的です。症状がすすむと、人前でことばがうまく出なくなる、外出ができなくなるなど、日常生活に支障をきたすようになります。

原因


 内向的、人の評価を気にしすぎるといった性格に加え、対人関係のささいなできごとがきっかけとなります。

治療


 緊張をやわらげる抗不安剤を中心とした薬物療法と、カウンセリングや行動療法が有効です。

あなたへのひとこと


 治療には定期的なカウンセリングが必要です。通院に便利な治療施設を選びましょう。また、はじめから完璧に治そうと思わず、日常生活に支障がでない程度を目標に、あせらず治療をつづけましょう。


離人神経症


どんな病気?


 自分が自分でないような気がする、まわりの世界に現実感が感じられない、喜怒哀楽の感情がなくなる、といった症状が現れます。
 これらの離人症状は、健康な人でも徹夜明けなどに感じるものですが、離人神経症の場合は、こうした症状が長くつづいたり、くり返し起こります。離人症状は、うつ病、統合失調症などでも現れるため、精神科医の診断を受けることが重要です。

原因


 強い精神的ショックのあとに起こることが多いものですが、くわしい原因はわかっていません。

治療


 不安を取り除くために、抗不安剤を用います。カウンセリングを行いながら、ゆっくり治療します。

家族の方へ


 まわりの人からは、異常があるように見えませんが、本人にはとてもつらい病気です。病気を理解して、回復を援助しましょう。


心気症


どんな病気?


 実際には病気ではないのに病気だと思い込み、周囲にも執拗に訴えます。しかし、医療機関を受診しても、どこにも異常は見つかりません。そのため、つぎつぎに医者を替えたり(ドクター・ショッピング)、医学書を読みあさります(更年期に起こりやすい心のトラブル)。
 心気症の裏には、からだの不調を訴えることで、現実の重荷を避けようとする心理が無意識のうちにはたらいているともいわれます。

原因


 ものごとに固執しやすい、プライドが高い、心配性といった性格の問題のほか、子どものころ病弱だったという背景がみられます。

治療


 抗不安剤の服用とともに精神療法を行います。なかでも森田療法(日本人の精神科医、森田正馬博士によって考案された精神療法。症状を取り除こうとするのでなく、「あるがまま」を受け入れ、障害を克服しようという方法。通常、入院治療になります)が有効であるといわれます。

家族の方へ


 検査で異常がないのにいつまでも不調を訴えるときは、さりげなく精神科の受診を勧めましょう。


抑うつ神経症


どんな病気?


 うつ病とよく似た症状を示します。軽いうつ病との区別がつきにくいものですが、日内変動がみられない、ほかの神経症の症状がいっしょに現れる、主観的な抑うつ感が主体であることなどが特徴です。

原因


 まじめで几帳面、心配性などの性格的な要因と、精神的なストレスが引き金になります。

治療


 カウンセリングなどを中心に、抗不安剤、抗うつ剤を用います。


ヒステリー(身体表現性障害・解離性障害)


どんな病気?


 古くから「女性特有の心の病気」とされてきましたが、男女ともにみられる疾患です。最近では、症状の現れ方から「身体表現性障害」と「解離性障害」と呼ばれます。
 かかりやすい性格(ヒステリー性格)として、自己中心的、自己顕示が強い、情緒不安定などがあげられます。こうした性格に、心理的なストレスが加わって発症すると考えられます。
 それぞれのタイプの症状と特徴はつぎのようなものです。

●身体表現性障害


転換性ヒステリー」とも呼ばれるもので、けいれん、歩行困難、目が見えない、声が出ないなどの症状が現れます。からだの症状を起こすことで、心理的葛藤を解消する(転換する)、一種の逃避と考えられます。しかし、本人は意識的にやっているわけではありません。

●解離性障害


解離性ヒステリー」とも呼ばれ、記憶喪失、意識がはっきりしない、態度や話し方が子どもっぽくなるといった精神症状が現れます。「解離性遁走」といい、自分が知らないうちに別の場所を放浪していることもあります。これらの症状も、葛藤からの逃避と考えられます。

治療


 精神療法を行って、葛藤の原因をつきとめ、症状を改善します。

家族の方へ


 病気を正しく理解して、患者さんにふりまわされず、大きく見守る心構えが必要です。

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