ダイオキシンの害と対策(だいおきしんのがいとたいさく)

 よく知られているように、ダイオキシンはベトナム戦争でアメリカ軍が散布した枯葉剤の中に含まれ、ベトナムにたくさんの形態異常児を生み出しました。日本ではそれから約20年後の1983年、ゴミ焼却施設からダイオキシンが検出されました。
 環境ホルモンのなかでもダイオキシンがもっともおそれられている理由は、毒性の強さです。その毒性は「史上最強の猛毒」といわれるほどで、サリンの2倍、青酸カリの1万倍あり、発がん性や形態異常児出生率も高いといわれます。実際、WHO(世界保健機関)では、ダイオキシンを発がん物質と認める方向に動き出しています。
 それほど毒性の強いものが、ゴミ焼却施設という日常生活に密着した場所で発生していることが、ダイオキシン問題の深刻さであり、より恐怖感を強める原因になっています。

発生源の9割はゴミ焼却場


 ダイオキシンは、塩素系のビニール(塩ビ系)やプラスチックなどを低温で燃やしたときに大量に発生します。そのつどゴミを燃やすタイプのゴミ焼却炉は、燃えはじめの数分間の温度が300~400度で、もっともダイオキシンを発生させやすい環境です。このため、発生源の9割は、ゴミ焼却施設からでる排ガスと焼却灰にあると考えられています。排ガスは大気を汚染し、焼却灰を埋めた土壌は汚染されます。
 また、かつて水田で使われていた除草剤などの農薬にも含まれていました。その使用が禁止されたとはいえ、東京湾の海底に堆積されているダイオキシンの約30%は、農薬によるものといいます。70年代はじめごろまで、いかにダイオキシンを含む農薬が使われていたかがわかります。私たちは、こうして汚染された海でとれた魚介類を食べ、食べ物からもダイオキシンを知らず知らずに体に取り込んでいるのです。

母乳をとおして胎児へ


 ダイオキシンは脂にとけやすい性質をもっているため、体内に入ると体の中の脂肪に蓄積されます。とくに脂質の多い母乳には蓄積されやすく、高濃度でダイオキシンが検出されています。これは世界各国でみられる現象です。
 汚染された母乳は、短期間に高濃度で乳児に移行します。その影響は、データがないためわかっていませんが、アトピー性皮膚炎などがふえている原因の1つに、母乳のダイオキシン汚染を指摘する人もいます。わが国では「乳児への影響は研究が必要だが、母乳の有益さからみて母乳栄養は推進されるべき」という見解を示しています。
 母乳中のダイオキシン濃度については、調査数が少ないこと、濃度測定のばらつきが多いこと、採取地域のかたよりなどから結論はだせませんが、免疫物質を含む母乳は乳児に不可欠です。一日も早く安心できる環境になることが望まれます。

家庭でできる環境ホルモンから守る生活


 環境ホルモンをださないために、家庭でも身近なことからはじめましょう。
 ドイツでは家庭からでるゴミの量が、日本の10分の1といいます。私たちもゴミを減らす努力をすると同時に、分別を徹底する必要があります。
 また、環境ホルモンを含む食品は買わないという生活スタイルをもつことも大切です。たとえば塩ビ系の料理用ラップは、燃やすとダイオキシンを発生するので、ポリエチレン系のほうが安全です。プラスチックの食器は熱いものを入れると、ビスフェノールAやポリスチレンといった環境ホルモンがとけ出すと疑われています。子どもの食器やおもちゃは、プラスチック製のものを使わないほうが安心です。
 日本人のダイオキシン摂取量の6割は魚介類から、といわれています。とくに近海魚に多く含まれ、内臓や脂肪に蓄積しているので注意しましょう。
図「ゴミの分別をきちんとする」
塩ビ系の材質は、低温で燃えるとダイオキシンが発生する。
図「料理用のラップの材質を吟味する」
ポリエチレン系のラップを使うほうが安心。表示を確認。
図「プラスチック製品を使わない」
子どもの食器は陶磁器を、おもちゃも木製品などを選ぶ。
図「魚介類の内臓は食べない」
魚の内臓は除き、焼く、煮るなどして脂を十分に落とす。

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