人工妊娠中絶を考える(じんこうにんしんちゅうぜつをかんがえる)

人工妊娠中絶を選択するとき


 人工妊娠中絶とは、胎児がお母さんのおなかの外で生活できない時期にかぎって、手術をして、妊娠を人工的に中断することをいいます。妊娠中絶は、だれでも行っていいものではなく、してもよいケースは母体保護法という法律で決まっています。
 これは、母体や配偶者が精神疾患、知的障害、精神病質や遺伝性の形態異常がある場合や、身体的、経済的理由によって妊娠の継続が母体の健康を害するとき、性犯罪や脅迫によって妊娠してしまった場合などです。
 ただし妊娠22週をすぎると、どんな理由があっても妊娠中絶はできません。妊娠中絶手術は、妊娠12週までがのぞましく、それをすぎると子宮が大きくなり、子宮の壁が薄くなるので、手術はむずかしくなり、からだにかかるリスクが大きくなります。
 妊娠中絶手術とは、子宮の入り口を無理に広げて吸引管を入れ、受精卵や胎芽を吸い出したり、鉗子を入れてかきだす方法です。自然なことではありませんから、女性のからだに与える負担は大きく、避けるべき行為です。ただ、それでも避妊に失敗するなどの事情で妊娠してしまうこともあるでしょう。そんなときは、早めにパートナーと話し合い、ふたりの将来にとって最善の選択を出すことです。
 ふたりで話し合った結果が「人工妊娠中絶」という結論になったのなら、1日でも早いうちに産婦人科を受診することがたいせつです。

信頼できる産婦人科を選ぶ


 人工妊娠中絶手術ができる産婦人科医は、「母体保護法指定医」だけです。それ以外の医師は絶対に手術をすることはできません。知らない町でこっそり受けたいと思う人もいるでしょうが、妊娠中絶手術とは、見えない子宮の中を手探りで操作するため、まったく知らない町の、評判もわからない医師にまかせるわけにはいきません。
 また、手術後は通院する必要がありますから、通院しやすい範囲内で、評判のよい病院やクリニックを選んで受診するようにしましょう。
 なお、妊娠中絶手術は健康保険が適用されないため、実費がかかります。費用は病院によっても差がありますし、入院の有無などによっても異なりますが、妊娠12週までなら12万円前後がめやすです。それ以上の週数になるとさらに費用がかかり、週数にもよりますが、20~40万円前後の費用が必要です。

手術当日までと、当日の準備


 母体保護法指定医を受診したら、手術の予約を入れます。同時に「人工妊娠中絶同意書」を渡されますが、これは手術当日に提出します。氏名、住所を書いて捺印し、パートナーにも署名、捺印してもらい、準備しておきましょう。また、手術当日に付き添ってくれる人を決めておくと安心です。
 手術の前日は、シャワーや入浴をして、からだを清潔にしておきましょう。麻酔をかけるため、夜9時、または10時以降の飲食が禁じられます。早めに休んで、十分に睡眠をとっておきます。
 当日は、朝、シャワーを浴びて、外陰部などをきれいに洗っておきましょう。麻酔をかけるので少量の水分も飲食はできません。アクセサリーははずし、化粧はしないで、コンタクトレンズもはずします。手術同意書、手術後に使う生理用ショーツ、ナプキンなどを用意します。妊娠12週以降の手術の場合は、入院が必要なので、パジャマや洗面道具も必要です。時間がきたら、同行してくれる人といっしょに病院にいき、同意書を渡しましょう。
 手術は、全身麻酔をかけ、妊娠12週未満の場合は、胎児と子宮の内容物をかきだす「そう爬術」か、吸引管による「吸引術」を行い、それ以降では、陣痛促進剤で人工的に流産させます。

手術前後のすごし方


手術当日 安静にすごします。出血があるので、生理ナプキンはこまめに交換しましょう。
手術翌日 とくに異常がなければシャワーは可。身のまわりのことをする程度にして、最低3日間は安静にします。アルコールは厳禁です。
1週間後 1週間以内に子宮の検診があります。手術後4日めからふつうの生活にもどれますが、セックスは医師の指示が出るまで禁止。
2週間後 セックスは、手術後14日めから可能だとされていますが、からだの回復の状態にもよります。医師の指示に従いかならず避妊を。

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掲載された情報を参考に、気になる症状などがあれば、必ず医師の診断を受けるようにしてください。

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