妊婦健診の時の尿糖の値について
妊娠後期(5~9ヶ月)の相談
Q4424:妊婦健診の時の尿糖の値について
3人目の妊娠中、安定期に入った頃から毎回尿糖がプラスででていました。
測る前、何も食べていなくても食べても変わらずでて、血液検査をしたら、以上はないということでした。
看護士さんには妊娠中はよくあるから気にしなくて大丈夫と言われましたが、同じような方いらっしゃいますか?
また、なぜ食べるものにかかわらず糖がでるのか、わかる方いらっしゃいますか? 2019-09-29 08:29

▼なぜ妊婦健診では尿検査を行うのか?
毎回の妊婦健診で行う尿検査は、テステープと呼ばれる簡易尿検査で、妊娠経過や胎児の成長、母体に影響するトラブルのサインが出ていないかをチェックするためのものです。特にチェックしている項目は、母子健康手帳に記載欄のある尿糖と尿蛋白です。尿糖は、妊娠糖尿病を、尿蛋白は妊娠高血圧症候群の早期発見を目的として検査しています。
妊娠糖尿病は、妊娠により糖代謝の状態が糖尿病のように変化する疾患で、「尿糖陽性」・「胎児発育が大きめ」・「羊水量が多め」などの症状がある場合に疑われ、糖負荷試験(糖分の入った検査用のジュースを飲んだ後、血液検査で血糖値を測定する方法)により診断されます。
妊娠糖尿病の産科的問題点は、「巨大児出産」と「新生児低血糖」であり、妊娠糖尿病の診断が確定した場合は、食事療法やインスリン療法などで血糖コントロールを行います。なお、妊娠糖尿病にかかった妊婦さんは、将来的な成人病としての「糖尿病発症予備群」でもあるので、産後も注意が必要です。
一方で、糖負荷試験により妊娠糖尿病が否定された場合の尿糖陽性の方は、「腎性糖尿」と診断し正常と判断され、特段の治療、食事制限を必要としません。「腎性糖尿」の場合は将来的な糖尿病の発症確率は、一般集団と変わらないとされています。
▼妊娠中に尿糖が出やすい理由は?
腎臓は、循環している血液をろ過し、老廃物等を尿として排出し、体に必要なものは再吸収する役目をしています。妊娠中は母体の循環血液量が約1.5倍になり腎臓に負担がかかる一方で、腎臓の再吸収できる能力は妊娠前と変わらないため、吸収しきれなかった糖が尿に出やすくなります。
また、ろ過後に再吸収できる量がもともと低く、尿に糖が出やすい人もいます。これが「腎性糖尿」で、妊娠中の尿検査で一時的に、あるいは毎回にわたり尿糖が陽性(プラス)となることは比較的よくみられることです。検査の直前に甘いものを飲んだり食べたりすると尿糖が陽性となることもあります。
ご質問の方は、安定期に入ってから毎回尿糖がプラスで、血液検査では異常ないとのことですから、「腎性糖尿」と考えられます。妊婦健診の直前の食事摂取や甘い飲料を制限することで健診時の尿糖プラスを陰性化する可能性もありますが、医師から特に指示がない場合は、健診前に極端な食事制限は必要ないと考えられます。
先生のプロフィール
順天堂大学医学部卒業後、関東労災病院産婦人科・日立総合病院産婦人科・国立霞ヶ浦病院産婦人科などに勤務した後、米国コロンビア大学医学部へ研究留学。帰国後は、社会保険中央病院医長、愛育病院産婦人科部長を歴任し、1996年11月に秋葉産婦人科病院の第4代院長に就任。2009年8月、WHO/UNICEFより「赤ちゃんに優しい病院」、BFH ( Baby Friendly Hospital ) の認定を受け、2014年には「ぽっかぽかクラブ(育児サークル)」や産後ケアセンターを設立するなど、幅広いサービスで地域の女性たちの妊娠・出産・育児をサポートしている。-
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