【第36回】食育って・・・1

山本智美:助産師日記

これからの季節はおいしい食材がでまわり、食いしん坊の私にとって楽しみでもあります。 昨年『食育基本法』が施行されました。みなさん、ご存知でしたか? 今回は食育と妊娠・母乳についてご紹介したいと思います。

食育基本法って?

外食や中食が増え、日々忙しい生活をおくる中で、食の大切さに対する意識が薄れ、健全な食生活が失われつつあるといわれています。また、巷では、子どもがキレるのは食事との関係があると聞きます。子どもたちが豊かな人間性をはぐくみ、生きる力を身に付けていくためには、「食」が重要といわれているのです。そのために「国民が健全な心身を培い、豊かな人間性をはぐくむため、食育に関する施策を総合的かつ計画的に推進すること等」を目的として「食育基本法」が施行されました。なぜ妊婦さんや子育てママに重要なことなの?

母親学級等で食事について伺ってみると、「妊娠して食べ物について見直した」「仕事が忙しくてそれどころではない」「できるだけおなかの子どもによいものを食べたい」などの声が聞かれます。よくサプリメントの質問を受けますが、食事を補ううえでは、悪い物ではありません。しかし、いいという食材が記事になるとそれだけに頼ってしまう傾向があります。一方で、帰りの遅い夫を待ち食事を夜遅くに食べている妊婦さんも少なくなく、妊婦さんからは、「早く食べて寝ようと思うのだけれど…、いつまでに直せばいいですか」と聞かれます。「生活習慣にあわせて子育てをするわけですから、子どもが大きくなるにつれて、直すのは大変になるのではないでしょうか。自分で直そうと思っているのだから、あとはタイミングですよ」と答えます。生活は、習慣そのものなので急に変えることはできません。むしろ、妊娠中から規則正しい生活、特に食生活をおくることが生涯にわたっての子どもの健康づくりの基盤にもなるのです。

妊娠中に大切なこと

妊娠中は体重増加がとても気になります。増えすぎるのは良くありませんが、増えなさ過ぎるのも赤ちゃんが低出生体重になる場合が多くあります。食べないで無理なダイエットを行うことが原因と考えられています。施設では、妊娠していない時の体重と身長からBMI(現在最も信頼性の高い標準体重の基準)を計算します。その値によって、理想的な体重増加を決めます。通院している施設で行っていない時は、ぜひ「BMIを計算してください。私、どのくらい体重増えてもいいですか」と聞いてみてください。妊娠中は、妊娠前よりも食事のカロリー量は多くても構いません。バランスのよい食事がいちばんです。厚生労働省から、妊産婦のための食生活指針がでていますので、参考にして下さい。注意したほうがいい食物として、ビタミンAがあります。ビタミンAは、胎児の器官の成長などに関係するため、重要なビタミン。しかし、過剰に摂取すると先天奇形が多いといわれています。ビタミンAを多く含んだ栄養補助食品やサプリメントの取り過ぎには注意して下さい。また、妊娠中は貧血になりやすいものです。鉄の欠乏もありますが、葉酸が足りないことでも貧血は起こります。葉酸は、貧血のほかにも胎児の脳や脊髄などの中枢神経系の障害を減らすことが知られています。いずれにしても、食事はただ栄養を取るだけではありません。楽しく食事をすることも大切です。「いつ」「だれと」「どのように」食事をするかを考えてみてください。

次回は、赤ちゃんの食育についてです。

(2006.5)

ゲスト

powerd by babycome