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山本智美:助産師日記
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【第35回】『赤ちゃんはすごい!』

山本智美:助産師日記

よく妊婦さんから、「赤ちゃんと接したことがないので、どうしていいのかわからない」「赤ちゃんは話せないので何が言いたいのかわかるかどうか心配」などの質問を受けます。すでに妊婦さんはお母さんになっているのですよね。おなかの赤ちゃんを育てるという責任やプレッシャーを感じているように思います。

がんばらなきゃと肩に力が入ってしまうと余裕が出てきません。少し力を抜いてみると、いろいろなことが見えてきます。

赤ちゃんと「どのように接したらいいのか…」の答えは、赤ちゃんを知ることです。実は、赤ちゃんは、いろいろな能力を持っているのです。今回は、その赤ちゃんの能力についてお話ししたいと思います。

誕生日は、誰が決めるの?

妊婦さんは分娩予定日が近づいてくると、「いつ頃生まれるのかしら」「この日に生みたいな」といろいろ思うものです。陣痛誘発剤を使ってのお産や帝王切開術を除いては、自然な陣痛を待つことになります。

この陣痛のはじまりは、実はおなかの赤ちゃんが関係しているのです。

陣痛開始のスイッチを押すのは、赤ちゃんの脳です。脳の視床下部という部分が、下垂体にメッセージを送り、下垂体を通じて副腎からストレスホルモンを分泌させます。そのホルモンが胎盤にいくと子宮の筋肉を収縮させはじめます。それが陣痛となります。

赤ちゃんはおなかの中にいる時から、自分の意思を持っています。だからお母さんの思う通りには行かないというわけですね。

しかし、赤ちゃんは両親想いでもあるのです。夫立ち会い出産を希望している場合、お父さんの仕事が遅くなりそうな時に、お父さんを待っているかのような赤ちゃんもいます。順調にお産が進んでいたのに、なぜかお産の進みが突然ゆっくりになることがあります。そうして、お父さんが出産に間に合うというケースが少なくないのです。たぶん、おなかの赤ちゃんにお父さんお母さんの気持ちが伝わるのではないでしょうか?

赤ちゃんの表情

生まれてすぐに、裸の赤ちゃんを裸のお母さんが抱っこすると、赤ちゃんはとても気持ちよさそうな顔をしています。目は開いているけど、おとなしく、周りの反応をうかがっているようです。お母さんが、優しい口調で話しかけると、「おなかの中で聞いたやさしい声だ」と言わんばかりにお母さんの方を気にするような表情をします。私たち助産師が、体重計測で離すと怒ったように「オギャー」と泣き出します。お臍は切れても、ちゃんとつながっているのですね。

赤ちゃんがお母さんのおっぱいを飲んでいる時は、お母さんの方をじっと見ながら飲んでいます。「今、目があったわ」というお母さんも多くいます。また、赤ちゃんが砂糖水を飲む場合、たまに口をすぼめて「まずーい」という表情をします。赤ちゃんは、味も知っているのですよ。

このように赤ちゃんは、ただ寝て泣いてということだけではありません。気持ちよさそうな表情、笑った表情、じっと見つめる、聞いているなど様々な表情を見せますし、いろいろなすごい能力を持っています。それを見つけるには、じっくり赤ちゃんに向き合って、語りかけてください。赤ちゃんをたくさん、触ってあげてください。

赤ちゃんは全身をつかって、お母さんに伝えようとしていますよ。

(2006.2)

ゲスト

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