【第29回】自然分娩とは?

山本智美:助産師日記

最近、お産の現場にいて気になることがあります。

自然分娩希望者が増加

出産のスタイルは、自然志向へと変わりつつあります。できれば自然分娩で出産したいという方がとても多くいらっしゃいます。その中で、気になっていることは、子宮口が全て開くまではスムーズに進むのですが、赤ちゃんを押し出す時期(分娩第2期)になると、陣痛が弱くなったり、遠のいたりして分娩第2期がなかなか進まず、結局は陣痛促進剤を使って4~6時間以上かかって産む、産婦さんが増えてきているように感じます。

分娩時間は、早く産めばいいかといえばそうではありませんし、時間がかかり過ぎるのが全ていけないかということでもありません。自然にお産の経過を見守っていくとお産の進みが止まってしまうようなケースの方がいらっしゃるということなのです。そのことについて、「最近、どうしてなんだろう……?」ということをずっと考えてきました。まだ、はっきりこうだという結論はありませんし、漠然としていますが、少し分かってきたことがあります。それを事例をふまえて紐解いてみたいと思います。

妊婦さんの現状

【例1】自然分娩で産ませてというAさん

バースプランに自然分娩希望と書いてあったAさんに、入院した際、希望はありますかと伺かがったら、「自然分娩で産ませてください」という言葉が返ってきました。私は、あれ? 変だなと思いました。どうして自然分娩がいいのですかと伺うと、 「雑誌に自然分娩がいいと書いてありました」と言うのです。「私にできるでしょうか? お願いします」と。“自然分娩”という言葉は、ほとんど皆さん知っていますよね。しかし、自然分娩の考え方は、少々違っており、何を求めているのか違ってきます。自然分娩をするというのは、どういうことなのでしょうか。できるだけ薬を使わない、会陰切開をしないなど、何かをするか、しないかということもありますが、それだけではありません。

【例2】自然分娩がいいが、妊娠中は無理なんですというHさん

妊娠中の方を対象とした母親学級では、大体の方が自然分娩希望です。「できれば自然でがんばりたい」とおっしゃいます。それでは、妊娠中にどのような準備をしますか? と質問すると、「え~、妊娠中は仕事も忙しいし、規則正しい生活といっても無理かも」と。Hさんはキャリアウーマンで仕事をこなし、食事も睡眠時間も不規則なようでした。余談ですが、妊婦さんを見ていると、綺麗な洋服の方がかなり多いです。とても素敵に妊婦生活をエンジョイしているなと感じますが、ひとつ裏を返せば、こんなに体を冷やすような格好でいいのかなとも思います。

妊娠中の過ごし方が重要

このお二人の事例を踏まえて考えると、自然分娩をするためには、妊娠中がとても重要になります。10カ月の間に自分の体を見つめなおし、少し努力してみる。お産をすることが最終目的ではありません。元気な子どもを自分が納得できるように産み、育児をすることが目的なのです。そのように考えると、できるだけ妊娠中に自分の体と向き合い、体を作っていき、自然な経過をたどるようなお産をし、母乳育児をするという一連の流れがあることを、知ってほしいなと思います。そこには、助産師のかかわりが大切なのかもしれませんし、私の病院もまだ、十分ではないことも実感します。みなさん自身も、なぜ自然分娩なのか、自然分娩をするためにはどうしたらよいのか考えてみてください。いつか皆さんと助産師とでお話したいですね。

(2004.8)

ゲスト

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