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山本智美:助産師日記
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【第24回】子どもの性教育 どうするのか?

山本智美:助産師日記

3月に東京都児童会館で子どものための性教育の講座を持ちました。

これまで高校生対象に行なってきましたが、お母さんや小さいお子さんは、初めてでドキドキ……。しかし実際は、お子さんは1人もおらず、お母さんやお父さんだけの参加でした。そのため、何に悩んでいるのか、何を知りたいのかなど、生の声を聞くことができ私自身も勉強になりました。

今回は、その時に考えさせられたことを中心にお話しします。

子どもの“なぜ”を大切に

高校生の性教育を行なっていると、高校生では遅すぎるということを実感します。

現に今は小学生や幼稚園でも行なっているところもありますが、私のような助産師や教師などが行なう性教育は単発にすぎません。知識を与えることや少々考えることには影響するかもしれませんが、やはりふだんからの家庭でのかかわりだと思います。

そう思い、出産の入院中に性教育について話をしていたこともありましたが、出産して間もない時にはそれどころではないようです。

さて、親にとっていつ頃が考え時なのでしょうか。だいたいは、次の子どもを妊娠した時に「子どもにどのように妊娠したことを伝えるのか」と悩むようです。子どもに、妊娠したことを話してもわからないのではないか? でも言わないと自分自身の体が心配になる。おなかを叩かれても困るし……。

いえいえ子どもは、意外とわかっています。実際、お母さんが妊娠に気づく前から「赤ちゃんがいるの?」と聞かれたり、子どもの態度が急に甘えるようになったと心配していたら、妊娠していたということも聞きます。

子どもの年齢によっても伝え方は違ってきますが、子どもへは伝えればわかることを前提に話してあげてください。

子どもは“なぜ”がすきです。「なぜ、お腹が大きいの?」「なぜ、赤ちゃんが生まれるの?」など“なぜ”の連発です。その時を大切にして、“なぜ”にどうぞ付き合ってあげてください。

お産に立ち会った小1生

以前、お産に小学1年生の女の子が立ち会いました。お母さんは、妊娠中からお産については話しているし、この子の希望だから立ち会わせたいということでした。私もその方の考えに同意することにしました。

内診している時のことです。「どうして血がでているの?」と聞かれました。「赤ちゃんの道が広がってきて赤ちゃんがでやすくなると、血がでるんだよ」と説明すると、「ふう~ん」そして子宮口が全開大くらいになって内診した時に、「ああ、赤ちゃんの道が広がったね」と言ったんです。私の方がびっくりしました。そして、お産。誰も教えていないのに、一番見えるいい位置にいました。「ママ、がんばれ」と励まし「赤ちゃんをありがとう」とお母さんを労っていました。妊娠したことやお産について、その方がどのようにお子さんに伝えていたかを垣間見た感じでした。

親の言葉で伝えられるもの

性教育といっても、妊娠やお産を伝えるものだけではありません。子どもの成長によって、強調することは違ってきます。

最近は、子どもを性被害から守るために、小さい頃から、プライベートゾーン(胸、性器、おしりなど)について話す必要も言われてきています。また、妊娠・出産を通じて、命の連続性や大切さを伝えること。自分の体に興味を持ち、責任をもつこと。望まれた妊娠・出産のため避妊の大切さ、性感染症、ジェンダーや人間として相手を敬うことなど、さまざまです。語っても語りつくせません。だからこそ、子どもがその時その時に何に興味を持ち、考えているのかなどの状況を読み取り、いいタイミングで親の言葉で伝えられることが大切だと思います。そのためには、みなさん自身が性についてどう思っているのか、が大切です。ふだんはそれほど考えることもないテーマですが、一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか?

講座を終えて、ある方が言ってくれました。「子どもと向きあう前に、主人と向き合って、少しこのことについて話し合おうと思いました」……本当にそうですね。

(2003.5)

ゲスト

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