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山本智美:助産師日記
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【第23回】年はじめのひとり言

山本智美:助産師日記

みなさん、昨年はどのような年でしたか?そして今年は、どのような年にしたいですか。今回は、年はじめから、怖いような重い話になりますが、ちょっと真剣に考えてみたいテーマからスタートします。

マダガスカルのお産

昨年の秋に、私がお世話になった大先輩助産師(シスターです)がマダガスカルから一時帰国しました。お産は、世界中どこでもありますが、マダガスカルのお産についてお話を伺いました。

マダガスカルって、ご存じですか?アフリカにあり貧しい国のようです。

医療も充実しておらず、お産をする際は、医師はほとんど立ち会わず、助産師だということでした。産む女性は、命がけでお産をし、子どもの生死は、そこに立ち会う助産師の知識と技術・子どもの生命力と母子の運によることを知りました。

また、「シスター、マガダスカルの更年期ってどうですか」と聞いたら、「マダガスカルでは、更年期という言葉は聞いたことがない。だって、50歳くらいで死んでいくから」と。納得…

先端医療の中にいる私としては、信じがたいことでした。しかし、これが、マダガスカルの現実なのです。

命に対する考え方が国によって違う…

日本では、人生80年。60歳から第3の人生なんていう言葉もあるくらいなのに、かたやマダガスカルでは、50歳くらいで人生の幕を閉じることになるのです。世界をみても、クローン人間誕生かという記事から飢餓で子どもが亡くなっている記事まで。生命というのは、平等であるのに、どうなっているんだろう。と思います。だからこそ国によって、命に対する考え方というか受け入れ方も違うのでしょう。

マダガスカルでは、赤ちゃんが亡くなったとしても、悲しむが「よくここまでがんばってくれました。ありがとう」と死を受け入れていくそうです。その状況におかれた中で最大限できることを、おこなうことで認めているのでしょう。

日本では

日本は、妊産婦死亡率や新生児死亡率などは低く、高いレベルにあります。しかし、全くゼロではありません。今の医療を最大限に屈しても、無理なこともありますが、あきらかに回避できたケースもあります。

もう少し都心なら、違う施設だったら、産む側にもう少し知識があったら・・・・と悔やんでも悔やみきれないケースもあるのです。

最近、自己決定という言葉を聞きますが、どこまで自分に責任をもっているのでしょうか?

私自身に自問自答しますが、私ははっきり肯定できません。あまり難しく考えていたら、生きているのも大変ですしね。(でも、考えていかなければいけないことのようにも思います。)

ただ、日本の中だって地域や施設ごとによっても状況は色々違ってきます。産む方も、お産に対する考えや姿勢は違います。

安全だからといって、全ての方が大きな施設を選ぶのがよいかと言えば、それも違います。設備が整っているというのは、一つの条件ですが、それ以外にも大切なことはたくさんあります。

生命が宿った時こそ命について考えるチャンス

産み育てるということは、単に生殖だけではなく、そこの地域やその方の生き様など文化的なことも影響することは、日々現場にいると感じます。

そのためにも、産む方はいろいろな視点から産むこと、育てること、生命について考える必要があると思います。「日々そんなこと、考えてもいなかった」という方が大半だと思いますが、生命が宿った時、産んだとき、育てている今が、じっくり考えるチャンスかもしれません。

今は、マニュアル時代でHOW TO本が売れている時代です。実際「赤ちゃんはどのような時にだっこしたらいいですか」「いつ、オムツを替えたらいいですか」などびっくりするような質問が聞かれます。情報はたくさんあるけれど、ありすぎて惑わされる時代です。

目の前にいる相手と向きあう時に、相手のことを想う創造性を身に着けて生きたいものです。

ニュースでは、児童虐待など悲しい記事が日常茶飯事になってきました。

今後どのような時代になるのだろう……。ちょっと不安に思っている今日この頃です。

みなさんは、どう思いますか?

(2003.2)

ゲスト

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