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山本智美:助産師日記
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【第17回】お産の感動を呼び覚ますワークショップ

山本智美:助産師日記

6月23日に東京都児童会館で、私が講師となり、「わたしの宝物ワークショップ」という講座をしました。今回この児童会館の紹介を兼ねて、私が行なった講座についてお話ししたいと思います。

遊びのデパート・東京都児童会館とは?

東京都児童会館は渋谷区にあり、とても交通の便がよい所です。地下1階から5階屋上まである大きな建物で、そこには木工作・パソコン・ミニシアターや造形や音楽コーナー、図書や情報のコーナーなどいろいろなコーナーがあり、幼児~高校生までが自由に参加できます。また、臨床心理士が子どもや家族の相談も受けています。

さまざまなコーナーでは、専門職員がかかわっていて、子どものための遊びや学びのデパートといった感じでした。私は都内の病院に勤めていますが、このような会館があることすら知らなかったのです。また施設の利用は基本的に無料、本当に感動ものです!

子育ての出発点に立ち返るために

私が担当した講座は、月1回行なわれている「講座こども」のひとつ。「わたしの宝物ワークショップ」の主旨は、妊娠・子育て・育児の思い出にひたりながらメモリアルグッズを制作し、子育ての出発点に立ち返ってもらいたいということです。

当日は、お子さんとお母さん、お父さんら10人が参加、みなさん写真を持ってきたのでフォトスタンドを木工で制作しました。

 

まず私は、高校生を対象に思春期講座をやっている体験から、ほとんどの高校生が自分の産まれたときのことを、きちんと聞いていない現実を話しました。よく高校生は、「自分なんか産まれてこなければよかった」、「自分は意味のある人間か」などと、悩むことがあります。そんなとき私は、出産の現場について、また彼らのお父さん、お母さんがどのように出産に取り組んでいるのかを話します。すると高校生たちは、静かに、そして真剣に耳を傾けます。

また小中学生の子どもを持つ経産婦さんは、自分の子どもにお産の大変さを強調しすぎてしまっていることを、話しました。お産をした瞬間は誰もが感動していますが、その感動は時間とともに薄れてしまい、逆に嫌だったこと辛かったことは、ずっと残っているものです。そして、時間が経過した後も、自分のお産について、わだかまっていることや疑問は解消されずに残っていることが多いのです。

そんなときには助産婦とお産を振り返ることで、今まで見えなかった入り口が見えてくることがあることを話しました。

フォトスタンドの制作を通じて

思い出の写真を見ながら、お産のときの感動を呼び覚ましながら、フォトスタンドの制作はスタートしました。制作は、木工作の専門職員が担当してくれ、みなさん思い思いのものを作り始めました。当初は、作っている間に、それぞれのお産に対する話をたくさん聞こうと思っていたのですが、制作に夢中で、みなそれどころではありません(笑)。

そんな中、「お子さんを小さく産んで大変な思いをし、今やっと落ち着いてきた」とか、「お産から15年以上も経っているが、陣痛時にひとりぼっちにされ淋しかった」などの話も聞くことができました。

作られたフォトスタンドを見ていて、大人と子どもとでは、作るものが違っていることに気づきました。大人のものは、フェルトやひもを中心にしていますが、子どもはビーズやボタンなどが多く、独創性が感じられました。フォトスタンドには言葉を入れるスペースもあり、そこにひと言を添えてみんなの前で発表しました。子どもへのメッセージを書いた人、自分がそのときに感じていたことを書いた人など、本当に聞いていてほのぼのとした気持ちになりました。

子育てをしていると、何かと子どもに期待しすぎることがあります。またつい、手順や手技などのハウツーに走ってしまいます(私自身もときどき病院で、妊産婦さんたちに向かって、ハウツーを中心に話をしてしまうことを反省します)。

大切なことは、子どもとじっくり向き合うことだと思うのです。そのためには、自分自身に余裕が持てるようにすること。子どもと自分だけのカプセルに入り込まないように、サポーターが必要であること。そんな話を最後に付け加えました。

お産のときの感動を呼び覚まそう

参加者からは、「2時間があっという間だった」、「こんなに集中してものを作ることは久しぶりだった」、「子どもが散らかしても怒らないですむ環境で作ると、自分も楽しめた」、「知らず知らずのうちに、子どもには期待している」などなど、さまざまな感想が寄せられました。

ときどき、昔の写真をめくったり、思い出の品物を見ながら、ぜひお産のときの感動を呼び覚ましてみてください。また新たな気持ちで子育てに取り組めると思います。

(2001.8)

ゲスト

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