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加部一彦:子どもの生まれる現場から
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赤あざ、青あざ、黒いあざ?母斑のはなし(その2)

加部一彦:子どもの生まれる現場から

20世紀最後の年も早いものでもう4月。めっきり春らしくな ってきましたね。うららかな春の一日、赤ちゃんをつれて外に 散歩に出かけるのも、良い気分転換になりそうです。  さて、今回は前回に引き続き「あざ」(正式には「母斑」と 言うのでしたね)についてお話ししましょう。前回は、日本人を 含めたアジア人によく見られる「蒙古斑」という青いあざについ てお話ししましたが、今回は、母斑の中でもっとも多く見られる赤 いあざについて説明しましょう。

生後1年以内に消える「正中部母斑」

ひと口に「赤いあざ」と言っても、あざが見られる場所やあざの出現する時期などによっていくつかの種類に分類され、先々消 えるものもあれば、残るものもあります。あざのある場所や、いつからあざがあったのか(生まれた直後?生後2カ月頃から?など)によって、ある程度の診断が可能です。

無事に生まれた赤ちゃんを初めて抱っこした時、まぶたに赤いあざ(と言うか、淡い紅色のシミのように見えます)があって驚 いた、と言う経験をされたお母さんも多いことでしょう。これは、その部位の毛細血管が拡張しているために、淡紅色の境目が不鮮 明なあざとなっているためで、まぶたや額、うなじ、上口唇など によく見つけることができます。

これらをまとめて「正中部母斑」と言い、まぶたのあざを「サモンパッチ」、うなじのあざを「ウンナ母斑」と呼ぶこともあり ます。欧米では、コウノトリが赤ちゃんを運んでくるとの言い伝えから、ウンナ母斑を「コウノトリの嘴の跡」とか、赤ちゃんの誕生を祝って天使がつけたキスマークだなどと、洒落た解釈をしているようです。

この正中部母斑は大変ポピュラーなあざで、多くの赤ちゃんで全身に1カ所以上見られると言われますが、顔面に見られるもの は生後1年以内にほとんど消えてしまいます。うなじのあざは1割程度の人で大人になっても消えないことがあるとされています が、普通は髪の毛に隠されているので、ほとんどと言っていいほど目立ちません。

赤ちゃんの背中やお腹に、硬い毛の生えた全体が凸凹した黒っぽい母斑が認められることがあります。これは 「獣皮様母斑」と言われるもので、母斑細胞が一部で著しく増殖しているために、他の皮膚面から盛り上がって、 硬く触れるのです。この母斑は、高い確率で悪性化することや、皮膚だけでなく、腹膜や脳の軟膜にも色素細胞の増殖を起こすことがあるため、慎重な経過観察と治療 が必要となります。

年齢とともに濃くなるあざ

一方、境界鮮明な赤色のあざとして出生時から認められるもの の代表が「単純性血管腫」です。この血管腫は別名「ポートワイン母斑」とも言われ、皮膚面から盛り上がらず、平たんに拡がっ ているのが特徴です。単純性血管腫は自然に消えることはなく、むしろ年齢とともに色が濃くなる傾向があります。  治療としては、カバーマークなどの化粧品で隠す方法から外科的に切り取る方法など、あざの場所や大きさによっていくつかの 治療法を選択できます。最近では、レーザー光の照射による治療も行われています。

この単純性血管腫の特殊なタイプが「スタージ・ウエーバー症 候群(Sturge-Weber syndrome)です。顔面の片側の額からまぶた、ほっぺに大きめの血管腫があり、合わせて、てんかんなどの神経症状や緑内障などを合併する、比較的まれな(出生10万人に1人ぐらいの割合で起こり、遺伝的な病気ではないと考えられて います)症候群です。このような場合には、血管腫の治療だけでなく、合併する症状に対する治療とフォローアップが必要です。

イチゴ状血管腫は消えずに残る場合も

「生まれたときには無かったのに、1カ月健診が近づいて来た頃 になって赤くて表面がつぶつぶした感じの固まりが皮膚の表面から盛り上がってきて…」とお母さんが言うことがありますが、これは イチゴ状血管腫(ストロベリーマーク)の典型的な経過です。イチゴ状血管腫は、生まれたての赤ちゃんから出現するのは2割 程度と言われていて、生後2カ月から9カ月頃にかけてはっきりとしてきます(90%は2カ月までに現れると言われています)。  この血管腫は顔面、次いで背部、前胸部、頭部などに多く見られます。顔面では、血管腫がまぶたや唇にできて、大きく腫れたよう にみえることもあります。一般に、生後6カ月頃までは大きくなる傾向があり、その後は次第に小さくしぼんでいき、自然に消えてし まうことが多いのですが、中には消えないで残る場合もあるようです。自然に消えることが多いので、通常は様子を見るだけで治療 は行いませんが、血管腫の表面から出血を繰り返したり、潰瘍ができた場合、巨大な血管腫がある場合などには治療の対象となります。 最近ではレーザーを使った早期治療を勧められる場合もあるようですが、レーザー治療の効果などについては、現在のところ、まだ評 価が定まっていない状況です。

青いあざ、赤いあざと説明してきたところで、今回もページが尽き たようです。調子に乗って、次回もあざの話を続けましょう。いつもの通り、質問、ご要望を編集部まで遠慮なくお寄せ下さい!

(2000.04)

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