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加部一彦:子どもの生まれる現場から
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赤あざ、青あざ、黒いあざ?母斑のはなし(その1)

加部一彦:子どもの生まれる現場から

早いもので、今年ももう残すところわずかになりました。来年はいよいよ2000年。明るい話題の少ない今日この頃ですが、せめて新しい千年紀は晴々した気分で迎えたいものです。  さて、今回は「あざ」(正確には「母斑(ぼはん)」といいます)のお話です。

赤ちゃんのあざの種類はいろいろ

赤ちゃんの皮膚に「あざ」を見つけることは、それほど珍しいことではありません。ひとくちに「あざ」と言っても、色調や大きさ、母斑が見られる体の場所などは実にさまざまです。また、治療や詳しい検査が必要なものから、そのままにしても自然に消えてしまうものまで、性格もいろいろ。でも、これらの母斑の多くは、生まれた直後から赤ちゃんの皮膚にはっきりと見られるので、それを見つけたお母さんの落胆や心配は、傍から見ていて逆に心配になってしまうほどです。  そんな母斑の中でも、最も多く見られるのは赤色のもので、ついで青色、茶褐色、黒色のものがあり、白色の母斑は比較的珍しい存在です。それぞれ名前が付けられていますが、なかでも有名なのは、何と言っても「蒙古斑」でしょう。これは赤ちゃんの背中、特に腰から下、おしりのあたりによく見られる青色の母斑です。

自然に消える蒙古斑

蒙古斑は私たち黄色人種にはほぼ100パーセント近くに認められますが、逆に白色人種には10パーセントほどにしか見られない、いわば「アジア人の証」とでもいうような母斑です。

通常、蒙古斑の色調は色調の濃淡の少ない、単一の淡い青色で、時に1歳頃までは青みが増すこともあるものの、その後4?5歳までに徐々に薄くなっていき、自然に消えてしまいます。ほとんどの場合、大人になっても残るようなことはないのですが、かといって、すべての人でなくなってしまうわけでもないようで、成人の約4パーセントに残っていたという報告もあります。しかし、たとえ消え残る場合でも、赤ちゃんの時のままの形で残ることはなく、大きさは直径1?2センチ程度、色もかなり薄くなるようです。

皮膚が青く見えるのは、皮膚の中でも「真皮」といわれる部分に「メラニン」という黒い色素を持つメラノサイトという細胞がたくさん存在するためで、このこと自体は生理的な現象であると考えられています。メラノサイトが皮膚の深い所にあれば皮膚の色は青く見え、表面近くに存在すると、メラニンの量に応じて茶色、褐色、黒色に見えます。

蒙古斑とそうでない母斑

時に、蒙古斑がおしりの周辺だけでなく、手足、顔面、体などに見られることもあります。これは「通常見られる場所と違うところにある」という意味で「異所性蒙古斑」と言われます。一般に、腰からおしりにかけて見られる通常の蒙古斑よりも大きいことが多く、消えるにも時間がかかりますが、最終的に消えずに残るのは1パーセント程度であるとも言われており、必ずしも「消えにくい」とは言えないようです。しかし、異所性蒙古斑となると、それが本当に蒙古斑なのか、それとも別の種類の青い色の母斑なのかを診断する必要があります。

蒙古斑、特に範囲が広い異所性蒙古斑では、当然、それが「消えるのかどうか」が大きな問題となります。通常、多くの小児科医は「蒙古斑は自然に消えるので、様子を見ましょう」とお話していることと思います。これは今まで説明したように、もともと蒙古斑は自然に消えていくことがわかっているということに加えて、色調が淡くて、場所も顔面などの目立つところにあることが少ないという事情からです。

ただし、青い色の母斑がすべて蒙古斑ではありませんので(たとえば、異所性褐青色母斑のように、治療が必要な病的な青あざもあります)、色が濃いものや、周囲から少しでも盛り上がっているような場合には、専門の医師に診断してもらう必要があるでしょう。

蒙古斑は、基本的には治療はしないのが原則ですが、母斑の場所や大きさによってはレーザーによる治療を行うこともあります。ただし、治療の必要性や、何歳ぐらいで治療を行うのが最も効果的なのかなど、今のところきちんとした結論の出ていない問題でもあるので(それに、年齢の小さいときにはレーザー治療に際して麻酔をかける必要もあるので、そのリスクも考え合わせる必要があります)、治療を考える場合には、十分に主治医の先生と相談をしてから結論を出して下さい。

ということで、今回は「あざ」の中でも特に青い母斑、蒙古斑のお話をしました。次回も「あざ」の話を続けたいと思います。

(1999.12)

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