こんにちは。あっという間に年の瀬が押し寄せてきましたが、みなさんはいかがお過ごしですか? 前回は産院での赤ちゃんの「母子同室」と「母子別室」についてお話ししましたが、赤ちゃんにとって、そして自分にとってどちらが都合がいいのかよくわからなかったかもしれませんね。前回も書きましたが、双方のメリット・デメリットを考えた上で、産院のスタッフともよく相談して決めてください。
「赤ちゃんは、水筒を持って生まれてくる」ということを知っていますか? 生まれた直後の赤ちゃんの変化、それは、ある生理的現象によるものです。これを理解していれば、赤ちゃんの変化に対してむやみに心配することも少なくなるでしょう。
さて、今回は生まれた直後の赤ちゃんによく見られるふたつの「現象」についてお話ししたいと思います。?
「生理的」なふたつの現象って?
生まれたての赤ちゃんには「生理的」と称されるふたつの現象が見られます。ひとつは「生理的体重減少」、もうひとつが「生理的黄疸」です。この場合、「生理的」というのは、「病気ではない」(「病理的」の反対の意味で)という意味だと理解すればいいかと思いますが、生まれてまもない赤ちゃんの体調は、ただでさえ気になるもの。一生懸命授乳しているのに体重が減ってしまったり、日に日に皮膚の色が黄色くなっていくのを見ていると、どうにも心配になってしまうのは仕方がないでしょうね 。
「水筒」を持って生まれてくる?
赤ちゃんの体重は、出生後の数日間に3%から10%前後まで減少するのが普通です(もちろん、中にはほとんど体重減少が見られない赤ちゃんもいますが、これも心配はいりません)。体重減少の程度は、赤ちゃんが成熟児か未熟児かとか、授乳の方法(母乳か人工乳か)などによって変わってきますが、通常は日齢3?5日頃から体重の増加が見られるようになるのが普通です。赤ちゃんは大人に比べかなり「水太り」の状態で生まれてきます。細胞の間質に多量の水分が存在していて、出生後にこれがおしっこや汗になって排出されるため、結果として体重が減少するのです。赤ちゃんが「水っぽく」生まれてくることは、特別心配することではありません。出生後の最初の何日かの間、母乳の出方が悪かったりして十分な水分を補給できなかったりすることがあるのですが、このような場合でも、間質に十分な水分を持っていることから脱水症に陥ったりしなくてすむ訳です。そう、「赤ちゃんは水筒を持って生まれてくる」訳です。
体重は、いずれ必ず増えてくる
出産後の入院期間は通常1週間程度が普通ですから、退院が近くなる頃には赤ちゃんの体重も増え始める、すなわち、授乳もとりあえずスムーズに行えるようになります。もっとも、どの赤ちゃんもみんなそうだという訳ではないんですね。中には、体重があまり増えなかったり、減ったまま退院を迎えてしまう子もいます。でも、心配しないでくださいね。とにかく、定期的に赤ちゃんが泣いておっぱいを元気よく飲んでいる限り、体重はいずれ必ず増えてきますから。 中には、毎日赤ちゃんの体重を計るお母さんも見かけますが、これはおすすめしません。体重の増え方は毎日一定ではないし、第一、体重測定の前にオシッコやウンチをしただけで、平気で40?50g減ってしまうことだってあります。「心配のあまり毎日体重を計っていたことがかえって心配の種になってしまった」なんて方を外来でお見かけします。とはいっても、どうしても赤ちゃんの体重を計って、大きくなっているんだということを感じたいあなた! そういう方には、毎日ではなく何日かごとに計ることをおすすめします。例えば、毎週土曜日にはお父さんに早く帰ってきてもらって、赤ちゃんをお風呂に入れてもらい、湯上がりにふたりで一緒に体重を計ってみる…なんて、いかがでしょうか? お父さんにとっても、我が子との貴重なスキンシップの時間になることでしょう。
トラブルがあったら遠慮なく相談を
生後2週間もすると、授乳の間隔や体重の増加も落ち着いてきます。でも、最初におっぱいや体重の増え方に関するトラブルが発生するのもこの頃でしょうか。母乳だけで足りない子、飲んでいるわりに体重の増え方が悪い子、何で泣いているのかわからない子などなど。そんな時には、遠慮なくお産をされた医療機関のスタッフに相談してみてくださいね。きっと、いいアドバイスがもらえるでしょう。
と、いうところで今月はオシマイです。来月は、もうひとつの「生理的」な問題、黄疸についてお話ししましょう。みなさんのご意見をお待ちしています。
(1998.12)