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”いのち”の行方 第1回これから何を始めるか?

加部一彦:子どもの生まれる現場から

最先端の新生児医療の現場で、「いのち」を見守りつづけてきた加部先生が、「子ども」と「子育て」をとりまく社会や、生き方について語ります。
 ベビカムマガジン創刊以来、「こどもの生まれる現場から」というタイトルで、主に生後1ヶ月頃までの赤ちゃんに関する様々なことを書いてきました。予防接種にしても日常生活にしても、まだまだ取り上げるべきことは少なくないのですが、連載も前回でちょうど30回と区切りのいい所を迎えることができたので、今回から心機一転、新しいテーマで書いて行きたいと思います。

「子どもを育てる」ということ

最近、子どもたちを標的にした悪質な誘拐や殺人事件が後を絶ちません。また、教育の現場でも、「いじめ」の問題が多少その姿形をかえつつも、しっかりと定着しているばかりか、単に「いじめ」に留まらず、クラスや学校そのものの崩壊が取りざたされています。おまけに10代の未成年者が引き起こす凶悪犯罪の連鎖に、私たちは言葉を失うばかりです。この国の子どもたちは一体、どうなってしまったのか、この国の「子育て」はどうなってしまったのか…。「子どもを育てる」ということが、明らかに大きなリスクを背負うこととなってしまった今、少子化が未曾有のスピードで進行しているのも無理ないことと思えます。

これまで、子どもが関係した事件が起きるたびに「親の教育(あるいは「しつけ」)が悪い」とか「心の闇の問題」などと言った言説がマスコミなどでまことしやかに繰り返されてきました。確かに「親」にも「子育て」にも「心」にも、問題はあるのでしょう。しかし、それは一つの「家族」や一人の「子ども」の問題として、片づけられることではないはずです。私たちの住む社会そのものが病んでいることの自覚なしに、おそらくこのような事態は解決しないばかりか、状況はますます悪化して行くのではないでしょうか。

あなたにとって、「子育て」とは?

では、どうしたらいいのか…。一人ひとりができることは限られていますが、「社会」はそんな無力な一人ひとりが集まって形作っているのです。諦めるのは、そして、誰かに任せてしまうのは、早すぎはしませんか? 私たち一人ひとりのあり方が問われ、それが子どもたちに影響を与えているのだとしたら、まず、身近な所から、もう一度、子育てや子どもを見直してみたい。それを通じ、大人のあり方を考えてみようではありませんか。

新生児医療の現場で直面する

私は小児医療の中でも、最も生命に対するリスクが高いといわれる新生児の医療に従事しています。そこで出会った数々の「むき出しのいのち」のたくましさ、また、もろさに、時に感動し、時に憤り、時に涙して対峙してきました。だれもが一つしか持ち得ない「いのち」。それなのに、今、大切にされているとは言い難い「いのち」。新しい連載では、この「いのち」の行方について、様々な事例を元に考えていきたいと思っています。読者の皆さんは、赤ちゃんが生まれてくるのを楽しみに待っている方、生まれたての赤ちゃんに戸惑いながら日々奮戦している方、自我を張る我が子を前に途方に暮れる方など、様々でしょう。状況は違っていても、皆さんと一緒に「子ども」と「いのち」をキーワードに、社会とか人生とか、考えていければと思います。
 今回は最初と言うこともあって、ちょっと抽象的な話になってしまいましたが、次回からはできるだけ具体的に考えて行きたいと思っています。幸か不幸か、題材には事欠かないですからね。
これまで同様、あるいは、これまで以上に、連載に関する皆さんのご意見をお待ちしています。

(2006.08)

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