今回は「麻疹(はしか)」に関連して、来年から導入されることが決まった、新しい麻疹・風疹ワクチンについてお話したいと思います。
2006年の4月から予防接種法が改正されます。今回の改正のポイントは、これまでは個別に接種されていた麻疹ワクチンと風疹ワクチンが、2つのワクチンを混合した新しいワクチンの使用に変更される点と、麻疹・風疹のそれぞれ1回づつで済まされていたワクチン接種が、生後12カ月から24カ月までの第1期と、5歳以上7歳未満で就学前の1年間に行う第2期の2回接種に変更される点です。
1 麻疹(はしか)・風疹の二種混合ワクチンとは?
4月から使用が始まる新しいワクチンは、麻疹と風疹のワクチンが混合された「二種混合ワクチン」です。以前、日本でも麻疹・風疹におたふくかぜ(流行性耳下腺炎)の3つのワクチンを混合した「MMRワクチン」が使われていた時期がありました。しかしその後、このワクチンに含まれるおたふくかぜワクチンによる無菌性髄膜炎が発生し、中には後遺症を残す子ども達が出てきたため、MMRワクチン接種は中止され、現在に至っています。
このときの一連のゴタゴタが、ワクチンに対する不信感を高めたことは確かだと思いますが、一方で、新しいワクチンの導入に及び腰な対応が取られ、必ずしも最新の知見に基づいたワクチンが使えない現状は大きな問題ではないでしょうか。今回は、おたふくかぜワクチンを除く、麻疹・風疹の二種混合ワクチン(MRワクチン)が使われることになりますので、副作用に関しては、まず問題ないと言われていますが、詳しいことは今後の研究や使用開始後の副作用発生状況について、慎重かつ冷静に監視してゆく必要があるでしょう。
2 ワクチンの接種が2回に
もう一つの改正点は、ワクチンの接種回数の変更です。これまで、各々1回接種であったものが、2回の接種に変更されます。せっかく、ワクチンを混ぜて接種するのに、なぜ2回打たなくてはならないのか。それは、1回の接種では十分な免疫ができなかった子ども達が数%存在すると言われていて、この子ども達にも十分な免疫を獲得させることが必要であるためと、さらに、1回のワクチン接種で免疫が獲得できても、その後年数の経過とともに免疫力が低下し、成人になってから麻疹(はしか)にかかる人たちが出てきていることへの対応にあります。
免疫を作る力(免疫産生力)が持続するためには、ワクチン接種で十分な免疫力が獲得できたことに加えて、時々は感染源(この場合はウイルスです)にさらされて、免疫が刺激される必要があります。しかし、最近は麻疹(はしか)や風疹に接し、自然に刺激を受ける機会が減ってしまっているのでしょう。子どもの頃に受けたワクチンによって獲得した免疫産生力が衰えてしまい、大人になって改めて麻疹(はしか)や風疹に感染してしまうのです。この場合、結構キツイ症状が出ることがあり(全く初めての感染よりは軽いと言う意見もありますが)、改めて、より長く免疫効果を持続させるために、接種期間をあけて2回目の接種を行うことになった訳です。
と、言うことで、来年の4月以降、新しい予防接種によって麻疹(はしか)と風疹に対する感染対策が一歩前進する…はずです。ただし、「これから来年の4月までに1歳を迎える赤ちゃんはどうするのか?」という問題もあり、厚労省の方針に対して、今なお議論が続いていますので、この点については次回改めてお話したいと思います。この連載に関するご質問、ご意見をお待ちしています。
(2005.11)