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予防接種について-その4
病気別にみる予防接種の事情 ツベルクリンとBCG-2

加部一彦:子どもの生まれる現場から

「出生から生後1カ月前後までに赤ちゃんが出会うことがら」を中心に、新生児集中治療室で多忙な日々を送る加部先生の、分かりやすいお話を展開していきます。
今年は例年になく、台風が日本に接近、上陸し、各地で被害が続出しましたが、皆さまがお住まいの地域はいかがでしたか。これも地域規模で起こりつつあると考えられている気象変動の一環との見方がありますが、流行する病気に関しても、これまで日本ではほとんど見ることがなかった病気が流行ったりする可能性が指摘されています。この先、何がどのように変わって行くのか、注意深く見守る必要があります。

結核の予防方法

さて、前回は「結核」が決して過去の病気ではない、という話をしました。「過去」どころか、最近でも年間4万人近い新たな患者さんが生まれ、治療の面でもこれまでの抗結核薬に耐性をもった耐性結核菌が増えてきているという話でした。今回は結核の「予防」について考えてみたいと思います。

これまで結核の予防として、ツベルクリン反応(通常「ツ反」と略されます)によって「結核に対する免疫」の有無をチェックし、赤ちゃんでは「ツ反陰性」の場合にBCGの接種が行われてきました。前回も触れたように、結核の予防方法に関する見直しが行われた結果、今後、赤ちゃんに関しては「ツ反」を省略し、最初からBCGを接種することになりました。現在、BCGはスタンプ法で行われています。赤ちゃんの左右どちらかの二の腕にBCG液を湿布して、上から針を押し当てる方法です。スタンプ針は2カ所に並んで押されますので、通常は上下に並んでBCGの接種跡ができます。

接種後の免疫反応

BCGを接種した部位で免疫反応が起こる関係で、他の病気の予防注射に比べると皮膚の反応が強い傾向があります。このため、接種後1カ月近くジクジクしていたり、かさぶたになったりということもありますが、特に心配はありません。
また、まれにBCGを接種した側の脇の下のリンパ節が腫れ、しこりに触れることがありますが、これはBCGが「生ワクチン」に分類されるワクチンで、結核菌に感染した場合と同じ免疫反応が起こった結果であると考えられます。通常の場合は、3ヵ月程度のうちに自然になくなってしまいます。ただし、接種部位がただれて化膿したり、脇の下のリンパ節が次第に大きくなったりするようであれば、必ず小児科医に相談してください。

担当医と十分な話し合いを

BCGの接種場所は、左右どちらかの上腕部にと決められていますが、時々、足の裏やおしりに接種したいと希望されるご家族があります。これは接種跡が残ることを嫌ってということが理由のようです。もちろん、医学的な意味においては、接種場所が必ず上腕の外側でなくてはいけない・……ということではありませんが、何事にも保守的な医学界ですので、決められたこと以外の希望を実現しようとするとけっこうストレスのたまることだと思います。予防接種は、結核に限らず他の病気のものでも、家族と医師との間に意見の食い違いが生じがちなイベントではないかと思います。予防接種を受ける赤ちゃんは自分の意見を言えませんし、また、すでに起こってしまった「病気」に対する治療と異なり、「これから起こるかもしれない病気」に対する対策であるという点に、様々な意見の食い違いが生じる要素があるのでしょう。最近は集団接種ではなく、個別接種ができるので、普段からかかりつけの小児科医と十分、話し合いをしてほしいと思います。

BCGは世界中、すべての国で接種しているわけではありません。このため、日本でBCG接種を受けた赤ちゃんが、外国へ行ってたまたま「ツ反」を受け、その結果「陽性」と判定され(BCGを接種されれば、「ツ反」は当然、陽性になります)「結核に感染している」と大騒ぎになった……などという話も耳にします。海外で生活される機会がある場合、お子さんの予防接種歴に関しても、事前にかかりつけの小児科医と相談した方がよいでしょう。

(2004.11)

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