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予防接種について-その3
病気別にみる予防接種の事情 ツベルクリンとBCG-1

加部一彦:子どもの生まれる現場から

連日30度を超える猛暑が続いていますが、皆さんいかがお過ごしですか。この季節、体温調節がまだ十分にできない赤ちゃんは、脱水から「夏季熱」といわれる発熱を起こすことがあります。水分補給は大人以上に配慮してあげてください。

ツベルクリン検査とBCG接種

さて、予防接種の話も今回は個別の予防接種について考えていきたいと思います。
まず最初は、ツベルクリンとBCGについてです。日本では現在、生後3カ月から予防接種を始めるのが一般的ですが、その最初に行われるのがツベルクリンとBCGです。これは結核対策を目的とした予防接種ですが、最近の日本における結核感染の動向にあわせて、平成15年4月から小・中学校におけるツベルクリン検査と、陰性者に対するBCG接種が中止されるなど、変更が話題になった予防接種です。
今、話題の「新撰組!」で活躍する沖田総士も若くして結核で命を落とすなど、結核は太平洋戦争が終わり、本格的な高度成長が始まる直前の昭和20年代末まで、日本人の死因の中でも大きな位置を占める病気でした。しかし、抗生物質の開発と普及の結果、昭和37年(1962年)と平成12年(2000年)の比較では、小児の結核罹患率は約180分の1まで減ったと報告されています。その一方で、今なお、毎年43000人~45000人の新しい患者さんが登録されており、結核は「過去の病気」になったわけではありません。では、このような背景があるのになぜ、今回の予防接種の見直しが行なわれることになったのか。そのことを考えるために、もう少し最近の日本の結核に関する事情を見てみたいと思います。

日本の結核に関する事情

先程、今でも45000人近い結核患者が毎年新たに登録されていると書きましたが、これらの患者さんの年齢分布には特徴があります。活動性結核患者の半数以上は60歳以上の老人に集中しており、15歳以下の小児例は毎年200~230人と随分と少ないことがわかっています。加えて、我が国では、アジアの多くの国で今でも大きな問題となっている新生児結核は皆無であること、感染・発症のパタ-ンが乳幼児型(0~6歳)と成人型の二つに分けられ、乳幼児型が約75%を占めているという特徴が明らかになっています。この乳幼児型結核の95%は家族内感染(父母や祖父母から感染するケ-スです)だというのも大きな特徴です。乳児型結核では、肺に空洞などの病巣を作って菌を排出することは少ないものの、しばしば致死的な重症結核が多いこと、BCG未接種ケ-スに重症例が多いことが特徴です。一方、小学生以降に見られる成人型結核の多くは二次感染(病院の職員や学校の先生からの感染が毎年話題になりますね)で、多くは「肺に空洞を作り、排菌する」という昔ながらの典型的な病像を呈します。

結核予防の現状と見直しの必要

次に、結核予防の現状について見てみましょう。現在、0~3歳の乳幼児でツベルクリン検査を行なうのは年間約120万人で、この検査結果から結核と診断される乳幼児はわずかに十数人であること、乳幼児の結核感染者の大多数は定期健診では無く、症状から発見、診断されていること、家族から感染する乳幼児も、大人の感染者から発見・診断することができていることなどの事情から、現行の予防接種方法や定期健診のあり方の見直しが行なわれることになったわけです。また小・中学生に対しても、現在の結核対策が必ずしも効率よく行われているわけではないと考えられることから、合せて見直されることとなりました。
感染症対策は、時代背景や経済状況などの社会の事情によって見直しを行なっていく必要がありますが、最近は治療に抵抗する耐性結核菌の登場などにも配慮する必要が生じています。また、交通手段の発達により、以前では考えられなかった遠方からでも簡単に行き来ができるようになった今、改めて病原菌の「輸入」についても考える必要が生じています。
と、いうことで今回はおしまいです。次回もツベルクリンとBCU、結核感染について考えたいと思います。いつもの様にご質問、ご意見をどんどんお寄せください。

(2004.08)

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