予防接種について

加部一彦:子どもの生まれる現場から

寒さの厳しい日が続いていますが、皆さん、体調はいかがですか?インフルエンザもいよいよ本格的な流行シ-ズンに入りましたし、東南アジアを中心に流行している「鳥インフルエンザ」の動向も大変、気になるところです。

「予防接種」とは?

さて、これまでこの連載では「産まれてから1カ月程度まで」の赤ちゃんに関してぜひ

知っておいていただきたいことを中心にお話してきましたが、今回からしばらくの間、「予防接種」について皆さんと考えてゆきたいと思います。

今年から日本医師会と日本小児科医会は3月1日から7日までの1週間を「子ども予防接種週間」と定め、共同で予防接種を推進するためのキャンペ-ンを行なうことになりました。「予防接種週間」は、未だにはしかの大規模な流行が認められ、欧米諸国からは「はしか(麻疹)の輸出国」と強く批判されている日本の現状を踏まえて、子どもを育てている家族だけでなく、一般市民の皆さんにも予防接種に対する関心を高め理解を促し、ひいては接種率の向上を図ることを目的に設けられるもので、市民公開講座などの開催も予定されています。

不安と不信感の高まり…

しかし、これだけ「健康」に対して関心の高い日本で、予防接種の接種率が向上しないのはなぜなのでしょうか? 子育てまっただ中の皆さんは、赤ちゃんに対する予防接種をどのように考えていますか?「予防接種って本当に効果があるの?」、「副作用が結構あるっていう話だけど」など、不安に感じていることはありませんか?多くの小児科医が予防接種を積極的に勧める一方で、「予防接種は必要ない」との意見を表明している専門家もいます。また、実際に予防接種の副作用で後遺症に苦しむ患者さんやそのご家族の話を聞くと、ますます予防接種に対する不信感や不安が高まってしまうのではないでしょうか。

予防接種に関する「不安」の背景には、客観的な事実に基づいた情報が正確に提供されていない、正確な情報にアクセスしにくいと言う事情が存在しているのではないかと思います。予防接種を理解し、正しい判断を行なうためにも、まず、「予防接種」とは何か、どんな病気にどのように行われているのか、日本以外の国でも同じように予防接種が行われているのかなどと言った予防接種の仕組みを知り、そして、個別の病気に対する予防接種に関しての情報を知ることが大切です。

ウィルスと免疫の関係

人間の赤ちゃんはとても未成熟な状態で産まれてきます。細菌やウイルスに抵抗する免疫の仕組みも、産まれた当初の3~4カ月ほどはお母さんからもらった受動的な免疫で守られているとはいえ、基本的には未完成のまま産まれ、出生の直後から細菌やらウイルスやらといった様々な病原体の脅威にさらされるのです。しかし、赤ちゃんの免疫システムが成熟するためには、このような外敵による「刺激」が必要な事も事実です。人間を含め、動物は無菌状態に置かれてしまうと、やがて生命を維持することができなくなってしまいます。私たちの「いのち」は、その存在を脅かす様々な「ストレス」と闘うことによってバランスを取っているのだと言うことです。しかし、いくら免疫システムが発達してゆくために細菌やウイルスに感染することが必要だとはいえ、そのために大切な「いのち」を落としてしまうのでは元も子もありません。感染症といかに対峙してゆくか、近代医学の進歩は、まさにこの感染症との戦いであったわけです。

予防接種が感染症対策の切り札として存在することは確かですが、残念ながら、未だに完ぺきな存在ではないことも事実です。次回以降、予防接種に関する情報をまとめながら、皆さんと子ども達の予防接種、何が不可欠で何が問題なのかを考えてゆきたいと思っています。

(2004.02)

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