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加部一彦:子どもの生まれる現場から
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おっぱいを出す赤ちゃん?・赤ちゃんの生理?

加部一彦:子どもの生まれる現場から

今年も猛烈な暑さが続いていますが、皆さんはこの猛暑をどの様に耐え忍んでいらっしゃるのでしょうか。これだけ暑いと、ただでさえ汗っかきの赤ちゃんは水をかぶったかのようにびっしょりと汗をかいているのではないかと思います。汗はシャワ-で流して、さっぱりさせてあげたいものですが、こう暑くては、シャワ-程度ではさっぱりできないのが困りものです。

さて、前回はおちんちんについてお話しましたが、今回は「母乳」(…って、自分で出すのだから「母」乳ではありませんが…)を出す赤ちゃんと新生児の月経についてお話ししましょう。

赤ちゃんからおっぱいが出る?

生まれて2日目くらいの赤ちゃんのおっぱいから半透明~白色の液体が分泌されることがあります。これは「魔乳」と言って、胎盤から分泌されるホルモンの影響によって新生児の乳腺が刺激され「おっぱい」が分泌されたもので、出てくる液体はモチロン、正真正銘の「母乳」なのです。魔乳の分泌は、生後2日目頃から始まることが多く、搾ったりせずに放置すれば1週間程度で出なくなると言われていますが、中には5~6週間にわたって分泌が認められる事もあるそうです。成熟新生児では、生まれた当初から左右のおっぱいが大きな子がいますが、これも胎盤由来のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられていて、この様な場合に、魔乳の分泌がよく認められます。この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子でもおっぱいが大きくなったり、魔乳が見られたりしますが、やはり女の子の方がおっぱいがより大きくなったり、魔乳の分泌期間が長かったりと言う事があるそうです。「魔乳」と言う名前が示す通り、ヨ-ロッパでは昔はこのおっぱいは魔女の薬の材料になるので、魔女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、現在では、おっぱいを搾ることによりかえって乳腺が刺激されていつまでもおっぱいが出続けたり、乳腺にばい菌が入り込んで炎症を起こしかねないことから、搾ってはいけないものとされています。魔乳の分泌は1週間程度、おっぱいの腫脹も1カ月程度で見られなくなってくるのが普通ですが、気になる場合には1カ月健診の時にでも相談してみて下さい。

赤ちゃんの月経?

生まれたばかりの女の赤ちゃんで、時に性器からの出血が認められることがあります。これが「新生児月経」と言われる現象です。出生直後よりも、むしろ生後3~5日目の赤ちゃんに見られることが多く、通常は1週間程度で終わります。出血量はそれほど多くはなくて、もちろん、赤ちゃんが貧血に陥るなどと言う心配はありませんが、場合によってはおむつに血液がつく程度の出血を見ることがあって、最初に見つけるお母さんはビックリされるかもしれません。赤ちゃんに月経がおこるメカニズムは、魔乳同様お母さんのおなかの中にいた時からのホルモンの影響によるものです。妊娠中に多量に分泌されているエストロゲン、プロゲステロンが赤ちゃんの血液にも移行し、その作用によって赤ちゃんの子宮内膜が肥大します。出生後にこれらのホルモンの影響が急速に失われることによりやがて子宮内膜から出血がおこると考えられています。この時期、性器からの出血の大多数はこの新生児月経によるものですが、中には性器の周辺の傷からの出血や、これまたお母さんのホルモンの影響で肥大した処女膜の一部(これを「処女膜ポリ-プ」と言います)から出血している場合もあるようです。血液が膣から出ていることを確認できれば、間違いありません。新生児月経では貧血になるほどの出血はおこらないので、おむつに大量の出血が見られる等ということはありません。もし、その様な大量の出血があった場合には、下血など他の原因を考えなくてはなりません。また新生児月経では、赤ちゃんは腹痛などの異常を感じることもないと言われていることから、万一、赤ちゃんに何らかの症状が認められる場合には、これも別の原因を探る必要があります。

ホルモンと私たちの深い関係…

妊娠の成立から継続・分娩に到るまでは様々なホルモンが複雑に関与しています。これらのホルモンの血液中の濃度はどれもごくわずかなのですが、それでも多くの影響を胎児に与えます。現在、「環境ホルモン」がヒトをはじめとする動物の生殖に影響するのではないかと心配されていますが、それは環境ホルモン(ホルモンに類似した構造の物質の場合もあります)がごくごくわずかな量であっても「雄の女性化」や「精子の減少」などと言った深刻な影響を及ぼしかねないからです。環境ホルモンが本当に生態系に影響を与えているのかについては今の所まだ最終的な結論は出ていませんが、赤ちゃんにみられる「魔乳」や「新生児月経」は、改めて私たちの体がホルモンという極微量で作用する物質に大きく影響を受けていることを示す一つの例であると言えるでしょう。

と、いうことで、今回のお話はオシマイです。この連載も次回でベビカム創刊から通算20回をむかえます。次回は20回の節目になるような、そんな話題を探してみたいと思います。赤ちゃんに少しでも関係することであれば、どの様な事でもかまいませんので、ぜひ皆さんの疑問をお聞かせ下さい。この連載に関するご意見、ご質問、ご要望をお待ちしています!

(2002.08)

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