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血液にまつわる話(その2) 血液型の不適合

加部一彦:子どもの生まれる現場から

いよいよ21世紀まで残り1か月をきりました。子どもの頃、21世紀なんて言うと、はるか遠い彼方の夢のような世界を想像していましたが、いざ現実になると、「ばら色」とばかりは言っていられないようです。確実に21世紀を生きることになる子ども達のためにも、私たちは地球の未来をもっと真剣に考えないとならないですね。

さて、前回は血液型がどうやって決まるのかについてお話しました。今回は、血液型が医学的に問題となる場合についてお話しましょう。

血液型の不適合とは

最近、医療事故が数多く報道されていますが、その中でも「血液型を間違えて輸血してしまったと」いう事件が数多く起こっています。自分の血液型と違った型の血液を輸血される(これを「異型輸血」と言います)と、多くの場合は、間違って輸血された血液に対する「抗体」が作られて赤血球が破壊されてしまい(「溶血」と言います)、気がつくのが遅れると命をも失う結果となります。

でも、お母さんとお腹の赤ちゃんの血液型が違うということは珍しいことではありませんよね。お母さんと赤ちゃんの間で、「異型輸血」のようなことはおこらないのでしょうか?  もちろん、血液型の異なるお母さんと赤ちゃんの血液が混ざり合うことがあれば、輸血の事故と同様のことが発生する可能性はあり得ます。これまで、普通の状態では、赤ちゃんの血液がお母さんの血液と混ざり合うことはほとんどないと考えられてきました。しかし今では、混ざり合うことは、以前考えれていたほど希ではないとわかり、お母さんの血液の中に混ざり込んでいる赤ちゃんの血球成分を取り出して、出生前診断に利用する技術なども開発されています。

「Rh式血液型不適合」について

Rh不適合は、お母さんがRh?、赤ちゃんがRh+の組み合わせの場合に発生する可能性があり、しかも、問題となるのはほとんどの場合、2回目以降の妊娠です。

1回目の妊娠で赤ちゃんの血液がお母さんに入り込んで抗Rh抗体を作ると、2回目以降、もし再び血液が混ざり合うことがあれば、抗体が最初の時よりも容易に作られてしまうのです。このために、Rh?のお母さんがRh+の赤ちゃんを生んだ場合には、出産後に抗Rh抗体を中和するための注射が出産後24時間以内に行われます。Rh不適合はABO不適合に比べて重症であり、時には胎児に対して強い溶血や、それに伴う貧血を引き起こすこともあります。

そのため、Rh不適合が疑われる場合には、妊娠中はもちろん、出生後も早期から貧血や黄疸のチェックを行い、必要に応じて早めに治療を始めることが大切です。また、Rh不適合の場合、黄疸の治療後も長期間にわたって貧血が続くことがあるので、こちらのチェックを続けることも必要となります。

ABO不適合とRh不適合が同時だと?

時に、ABO不適合とRh不適合が同時に起こることがあります。例えば、お母さんがO型でRh?、赤ちゃんがA型でRh+などの場合です。この場合には、さぞや重症の黄疸や貧血になるのではないかと思いますが、むしろ単独にRh不適合が起こった場合よりも軽く済んでしまうことが知られていて、血液型不適合によって作られる抗体の量の問題と考えられています。

赤ちゃんの黄疸に関しては、この連載のずっと前の回で取り上げましたが、多くの場合はいわゆる「新生児生理的黄疸」と言われるものや、母乳で育つ赤ちゃんに見られる「母乳性黄疸」で、適切な治療が行われれば、新生児期を超えて問題が残ることはありません。

しかし、今回取り上げた血液型不適合の場合には、溶血とそれによって引き起こされる貧血が長引くこともあり、ある程度の期間はキチンとフォローアップを受けるのを忘れないようにしましょう。

というところで、今回は紙面が尽きました。次回は、血液にまつわる話の3回目として赤ちゃんの「貧血」についてお話したいと思います。

いつもの通り、この連載に関するご質問、ご要望をお待ちしています!

(2000.12)

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