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血液にまつわる話(その1) 血液型いろいろ

加部一彦:子どもの生まれる現場から

猛烈な夏の暑さが過ぎ去り、すっかり秋めいてきました。今年は、火山の噴火や水害などの災害があちこちで発生していますが、21世紀を間近にして、地球もチョット焦っているのかもしれませんね。  さて、今回は血液にまつわるお話をしましょう。

血液型は、ABOだけじゃない

血液と言えば、何と言っても(!?)血液型。病院で調べられる検査項目は数多いですが、血液型ほどポピュラ?に語られるモノは他にないでしょう。何しろ血液型によって、その人の「性格」まで判断されるのですから(それにても、4つしかない血液型で人の性格が分類できるという発想がすごいですよね)。

「血液型」とひと言でまとめていますが、実はこの血液型、一種類だけではありません。そもそも血液型とは、ヒトの赤血球の表面にある「型抗原」という物質を検出して分類したもので、一般に広く知られているABO式血液型、Rh式血液型の他に、MN式、P式など、数多くの血液型が知られています。また、赤血球以外の血液成分である白血球や血小板にも同じように血液型分類があり、特に白血球型であるHLAは、臓器移植の場合の拒絶反応の強さを判定する目的で使われています。とはいえ、血液型と言われて一般に想像するのは、よほどの「血液型マニア」でもない限りABO式とRh式まででしょう。

両親と赤ちゃんの血液型の関係

日本人の血液型の分布は、A型が38%と最も多く、次いでO型が31%、B型が21%、最も少ないAB型は10%となっています。血液型抗原の分布比率は民族によって異なり、それを調べることで民族間のつながりが研究されているほどです。 血液型は通常、A型、B型、O型などと表現されますが、もっと細かく分類すると、さらに遺伝子の組合せによって、A型はAA型とAO型、B型はBB型とBO型、O型はOO型、AB型はそのままAB型という組合せに分けられます。赤ちゃんはこの血液型抗原を母親と父親の双方からもらい受けてきますので、両親の血液型がわかれば、生まれてくる赤ちゃんの血液型はおのずと決まります。例えば、母親がA型で、父親がB型の場合、単純にA型、B型と言っても、遺伝子の組み合わせは、お母さんはAA型もしくはAO型、お父さんはBB型、もしくはBO型である可能性があるので、A型、B型、O型、AB型すべての組み合わせの子どもが産まれる可能性があるということになります。

赤ちゃんの血液型は後で変わる?

この型抗原ですが、成人ではA型の人は抗B抗体を、B型の人は抗A抗体を、O型の人は抗A、抗B両方の抗体を持っており、AB型の人はどちらの抗原も持っていないという特徴があります。血液型の検査はこの抗A、抗B抗体の有無を利用して行っているのですが、生後6か月ぐらいの乳児は、これらの抗原や抗体を十分に作ることができません。そのため、特に生まれたばかりの赤ちゃんの血液型判定は慎重に行う必要があります。時々、生まれた直後に検査した血液型と、数年後に検査した血液型が違っていたという話を耳にしますが、その原因はここにあります。血液型その物は決して変わることはありませんが、新生児・乳児期に限って言えば、検査上、正確な血液型判定ができないことがあるわけです。

Rh式血液型について

通常、ABO式血液型と同時にRh式血液型が調べられます。このRhとはアカゲザル(英語でRhesus monkeyと言います)のことで、このお猿さんの赤血球に反応する抗原を持つ場合をRh+、持たない場合をRh?と表現します。みなさんもよくご存知のように、欧米人ではRh?の比率が高いですが、日本人でRh?の人は数%と少ないなど、ここでも人種による抗原の分布に差があります。Rh式の場合、通常+とか?と言っているのは、全部で5つあるRh抗原のうちのD抗原の有無についてだけであり、Rh式血液型を正確に表現するとC、c、D、E、eのそれぞれについて+と?があり、ABO式よりもはるかに沢山の組合せがあるのです。もちろんABO式同様、これらの組合せを決めているのは、両親双方に由来する遺伝子ですが、Rh式血液型の場合、ちょっと誤解を招きやすいので注意が必要です。それは、両親ともにRh+であっても、Rh?の赤ちゃんが産まれてくることがある、ということ。ABO式と同様に、このRhD抗原も、遺伝子はDDとDdという二つの組合せがあります。両親がDDという遺伝子タイプのRh+であれば(実際には、この組み合わせが一番多いのですが)、産まれてくる子もDDという組み合わせしかあり得ないので、赤ちゃんのRh型は必ず+です。一方、両親ともにDdであった場合、四分の一の確率でddという組み合わせの赤ちゃんが産まれてくる可能性があります。この場合、赤ちゃんのRh式血液型は?です。両親ともRh+だと、赤ちゃんも+だと思ってしまうのは、十分説明される機会がない以上、無理ないことなのですが、今までに何回かRh式血液型が原因で起こった騒動に巻き込まれたことがありました。

さて、血液型が医学的に問題となるのは、この様な血液型の不一致ではなく、血液型不適合で溶血性貧血や黄疸が起こる場合です。というところで、続きは次回にお話することにしましょう。いつもの通り、この連載に関するご質問、ご要望をお待ちしています!

(2000.10)

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