赤ちゃんが生まれた日

加部一彦:子どもの生まれる現場から

こんにちは。
今月から本誌に登場する加部といいます。仕事は、赤ちゃんを専門にする小児科医(日本では、正式な名称としては認められていませんが、仲間内ではホンの少しだけプライドを込めて「新生児科医」なんて称する時もあります…)です。現在の職場は、年間およそ1100人の赤ちゃんが生まれる産科・小児科専門病院ですが、ここで生まれる「正常」な赤ちゃんと、生まれた直後から何らかの医療的なお手伝いが必要な赤ちゃん(例えば「未熟児」と言われるおチビちゃんたちです)のお世話をする病棟をきりもりしています。?

さて、みなさんもご存知のことと思いますが、今、日本で生まれる赤ちゃんの数は年々減少して、東京都に限れば、ついに年間10万人を割り込むところまできてしまいました。そんな中、みなさんは赤ちゃんがやってくることを楽しみに(そして、チョッピリ不安に)待たれていることでしょう。ここでは、赤ちゃんが生まれる周辺で起こる様々なできごとについて、思いつくままに紹介していこうと思っています。その中には、もしかすると産院の母親学級では聞けないような話もあるかも(あまり脅かしてもいけないですね…)しれないですが、できる限り率直に、今、赤ちゃんの周りで起こっていることをお伝えしていきたいと思います。「こんなことが知りたい」、「あんなことも聞きたい」なんてことがあったら、ぜひ、遠慮なくお寄せください。

今日は第1回にふさわしく(?)、「赤ちゃんが生まれる場所」についてお話ししましょう。今、日本では赤ちゃんの大半は産院や病院などの医療施設で生まれています。その他にも、助産院や、中には自宅で生まれる赤ちゃんもいますね。「妊娠・分娩は自然なことであって、病気じゃない」なんてよく言われますが、いやいや、ちょっと待ってください。実は、赤ちゃんにとっては、お母さんのおなかの中から出てくる時こそ、人生で最も「死の危険」にさらされる時でもあるのです。モチロン、だからといって特別に身構える必要なんてないのですが、事実は事実として知っておくことも大切です。妊娠・分娩は、女性の身体に大変な負担をかけます。だから、赤ちゃんのことにあまり思いが至らなかったとしても、ここは目をつぶっちゃいましょう。でも、これだけは忘れないでください。大切なあなたの赤ちゃんが生まれてくる「場所」を選ぶとき、生まれた赤ちゃんが退院までの間をどのように過ごすのか、もし、赤ちゃんに何かトラブルが生じたら、その時にはどんな対応がとられるのか…。医療施設で生む人も、自宅で生む人も、ぜひ、確かめておいてほしいと思います。最近は、減り続ける患者さんを引き止めるために、豪華な食事や設備を売り物にしたりするところもあるようです。これがイケナイっていうんじゃないんですよ。それよりも何よりも、生まれてくる赤ちゃんの「安全」を優先してほしいな…その上で、オイシイ食事ができるんだったらよりすばらしい…ってことです。
なんだか、説教がましくなってしまいましたが…おいおい、詳しくお話ししていきましょう。
では、今月はこれで…。

(1998.8)

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