最近は、市販の妊娠テスト薬で検査をしてから病院を受診する人が多くなっています。そのため産科の外来では、最初から超音波の検査をすることが多いようです。妊娠は確実であっても、異常はないかを確認しておく必要があるからです。しかし、超音波検査が普及していなかった時代にはわからなかったお腹の中の変化がわかることで、かえって妊娠している人が不安を抱いてしまうというケースもままあります。超音波検査で医師は何を診ているか、そして異常を知らされた時、聞く側はそれをどう受け止めればよいかを2回に渡り、考えていきます。
「子宮外妊娠のおそれあり」
まず、妊娠5~6週くらいの時期になると子宮内に胎のうを確認できます。これにより子宮外妊娠を否定できます。しかし、検査を受ける時期が早いと、胎のうを確認できないために「子宮外妊娠のおそれあり」あるいは「子宮外妊娠も考慮に入れておく必要がある」と医師が伝えることがあります。子宮外妊娠の割合は、1%以下とごくわずかなものなので、むやみに悩むのは無用ですが、もし腹痛・肛門部痛を伴う出血があったら、かならず迅速に、医師に診てもらうことが大切です。そのことだけ頭に入れておけば大丈夫でしょう。妊娠6~7週になると、胎のうと、その中の胎児に心拍動を認めることができます。これによって、子宮外妊娠のおそれがなくなると同時に10~15%の流産の危険は1~2%に下がります。そして胞状奇胎もほぼ否定できると言えます。
「卵巣が腫れている」
卵巣が腫れているといわれるものには、次のようなものがあります。
黄体のう胞
妊娠中の卵巣刺激ホルモンによる過剰刺激が原因と考えられています。5センチ以上になることは少なく、妊娠10~16週までに縮小し、あるいは消えてしまいます。ですから、黄体のう胞と言われても、16週頃まではあせらず、検診の度に行われる検査の結果を待てばよいのです。
卵巣のう腫
妊娠とは無関係に発生するもので、一般的には5~7センチ以上の大きさになると手術をした方がよいと考えられています。悪性のものである可能性と自然分娩の時に悪影響がある可能性があるからです。手術をすることになるのは、全妊娠比で見るとわずか1%以下です。
卵巣腫瘍
妊娠とは関係なしに発生します。腫れた卵巣の中味が液体であることが確実であれば、卵巣のう腫と言われるのですが、あまり厳密な区別をせずにこの言葉が使われることも多いようです。実質性の腫瘍であることは稀ですが、5センチ以上の場合には手術となります。
手術が必要との診断を受けた時
手術の麻酔、抗生物質、痛み止めなどの赤ちゃんへの影響を心配する必要はありません。しかし時に、手術中に子宮周辺を触ることが刺激となって子宮の収縮が強くなり、それをどうしても抑えられず流産・早産になってしまうこともあります。それでも万が一、卵巣腫瘍が悪性である場合には、起こりうる危険が大きいので手術が選択されるのです。医師はそういったことを考えて判断をしているのです。また、卵巣のう腫や腫瘍と診断されても手術をしない場合には、普段どおりの生活をしていればよいでしょう。
「胎のうの周りに血腫がある」
胎のうとは、赤ちゃんが入っている袋のことです。
自覚症状は?
症状は何もないこともありますが、少量の赤い~褐色~黒褐色のおりものが続くこともあります。この血腫が原因で痛むことはありません。
経過と対応
胎盤ができ始める時にできやすい血液のプールで、流れ出したり吸収されたりして、妊娠11~16週までにはなくなります。胎児が順調に発育しているようならば心配はありません。無理なことをしなければ、普通の生活を送ってさしつかえありません。新鮮な赤い色の出血がある場合は、診察を受けてください。
(1999.08)