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名前が変わりました 妊娠高血圧症候群

堀口貞夫:幸せなお産

妊娠高血圧症候群=妊娠中毒症

妊娠中に起こる合併症の中で怖いものの一つといわれていた「妊娠中毒症」の名前が変わりました。

妊娠中毒症の特徴は「むくみ」、「タンパク尿」、「高血圧」であることは多くの人が知っていますね。研究が進んで、高血圧を起こす血管の変化が、他の「むくみ」と「タンパク尿」の原因でもあることが分かってきたこと、もう一つ、妊娠中毒症というと「何かの中毒」(食中毒のような)のように思われるのでそれを避けたいというのが、変更の大きな理由です。

病気が変化したのではなく、何故起こるかが今までよりは少し分かって来たので治療法・対処法が変わってきたと言うことです。

妊娠高血圧症候群の場合、受精卵が子宮内に着床して胎盤ができていく時に、子宮側の血管に妊娠に適した変化(血管の壁の拡張)が起こらないことがあるのです。これが妊娠高血圧症候群の始まりです。そのために胎児の発育などに必要な胎盤の血流量が十分ではなくなるのです。そのことが胎盤の中の血管の内皮細胞の機能障害を起こし、さまざまな化学物質が産生され

  • ・血管の攣縮(血管が収縮と弛緩を繰り返しながら全体としては収縮して固まっている状態。がっちりとではなく、動きのある状態をいいます)。
  • ・交感神経系の活性化
  • ・血液凝固系の変化
  • ・脂質代謝異常
  • ・血管透過性が高まる

などの変化がおこります。そのために、血圧の上昇・むくみ・タンパク尿という「よく知られた三症状」が起こることが分かってきたのです。

妊娠高血圧症候群と診断されたら、安静にし、横になっていることは内臓(子宮腎臓など)の血流量を増加させるので、有効です。水分摂取の極端な制限や、初期からの降圧剤の使用は望ましくないのです。食塩の制限も「むくみ」のさらなる増強の予防には役立ちますが「むくみ」の発生を防ぐものではありません。医療の立場からいえば、身体的・精神的な安静、適切な栄養の摂取がまず第一です。極端な高血圧の場合は、子宮の血流量を維持しながら血圧を下げる薬物療法を行ないます。

私たち産科医は、先に述べたような

  • ・血管の攣縮
  • ・交感神経系の活性化による血圧の上昇
  • ・血液凝固系の変化によるDICの進行
  • ・脂質代謝異常
  • ・血管透過性が高まることによる全身の水分貯留と血液の濃縮

など、これらの変化による胎児の健康状態を監視し、状況によって、妊娠を継続させるか分娩させるか、どちらが利点が多いかを判断をすることになります。

幸いにして(と言うべきでしょうが)妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の基礎になる変化は妊娠10週ぐらいから始まりますが、このような判断を迫られる状態は妊娠28週を過ぎてから見られることが多いのです。

体重増加、体重制限は『程々』が大切です

また、過剰な体重は、血圧の上昇、脂質代謝異常を起こし易いのでBMIが「普通」の場合、非妊娠時の体重から7~12kgの増加を目安とすべきでしょう。過度な体重増加の抑制は上に述べた妊娠に適応したからだの変化に支障をきたすことも考えられます。『程々に』あるいは『適切な』が大切なのです。

注)BMI=体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

  BMIが「普通」とは18.5~25.0の数値をいいます。

(2006.02)

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