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堀口貞夫:幸せなお産
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妊娠と薬-飲んでも大丈夫?それとも-

堀口貞夫:幸せなお産

普段から薬に頼らないことが望ましいことですが、なかなかそうもいきませんね。 妊娠がわかってから「あの時薬を飲んでしまっていたが、大丈夫だろうか?」とか、「薬を飲む必要があるが妊娠のこの時期に飲んでも胎児に影響はないだろうか?」と心配になるのもよくあることです。そんな時の基本的な考え方を、整理してみます。

1.こんな時、心配は不要

妊婦さんが飲んだ薬は、血液の中に吸収されて全身に回ります。これが胎児の血液に入らなければ、胎児に影響することはありません。したがって、受精卵が子宮に着床する受精後7日(最終月経後21日=妊娠2週の終わり)までは、妊婦さんの血液に溶け込んでいる薬物が受精卵に影響を与えることはないのです。

他方、内服した薬は代謝・排泄され、長くても数日のうちに有効血中濃度以下に下がってしまいます(だからこそ、治療のためにはこの有効血中濃度を下げないために薬は毎日、1日に3回、あるいは4時間ごとに飲まなければならないのです)。ですから、薬剤を内服してから何日か後に受精・着床しても、以前に飲んだ薬の影響を受けることはないのです。安心してください。

2.薬が胎児に影響を与える―催奇形性

他方、内服した薬は代謝・排泄され、長くても数日のうちに有効血中濃度以下に下がってしまいます(だからこそ、治療のためにはこの有効血中濃度を下げないために薬は毎日、1日に3回、あるいは4時間ごとに飲まなければならないのです)。ですから、薬剤を内服してから何日か後に受精・着床しても、以前に飲んだ薬の影響を受けることはないのです。安心してください。

薬物は、決まった作用を持っているのですから胎児に移行したからといってすべて影響を与えるわけではありません。ある薬が効き目を現すのは、それがある決まった作用を持っているということですね。胎児への悪影響についても同じです。例えばサリドマイドという薬剤の場合には四肢短縮症という決まった異常を起こしました。「その薬物には催奇形性がある」というのは以上のようなことなのです。動物実験で催奇形性があるとはっきりしているものは数多く見られます。しかし泣き所はすべての薬についてヒトで実験をするわけにはいかないということです。(a)長年の臨床経験の積み重ねからヒトで危険の証拠があり妊婦に使用することの利益のないものとして、卵胞ホルモン剤、放射性ヨード、ビタミンA、アミノプテリン(抗がん剤)、ワクチン類の一部などがあります。(b)次に鎮静剤の大部分、抗痙れん剤の大部分、抗うつ剤の一部、利尿剤の一部、糖尿病用剤、黄体ホルモン剤、抗がん剤、テトラサイクリン系の抗生物質などのように胎児への危険があっても妊婦への効果の方が重要と容認される場合に限って使用できるもの。(c)抗痙れん剤の一部、精神病用剤、自律神経系用剤、強心剤、冠動脈拡張剤、不整脈用剤、利尿剤の一部、血圧降下剤、鎮咳・気管支拡張剤、下剤、副腎ホルモン剤、ビタミン剤の大部分、血液凝固阻止剤、抗ヒスタミン剤、抗生物質の一部などのように、動物では胎児への有害作用が認められているけれども、ヒトでは明らかではないもの。この場合は薬の有効性が、動物実験で認められている胎児への危険性より大きいと考えられる場合に使用可能です。(d)その他のものとしては動物の胎児への危険性も証明されていないか、危険はあるがヒト胎児では実証されていないもの。

したがって、一般論としては(a)は妊娠中には使用できないもの、(b)(c)は薬剤の使用の有効性よりも胎児への危険が大きいと考えられる時には使用できないものということになります。この(b)(c)が大部分です。

3.臨界期―いつ飲むと影響があるか

奇形発生は妊娠の全期間を通じてということではありません。胎児のいろいろな器官が造られていく時期(器官形成期:妊娠4週はじめから妊娠16週終わりくらいまで)の間に薬剤を使用した場合に危険があるのです。この時期を臨界期とも言います(下表参照)。

赤ちゃんの器官ができる期間

表:赤ちゃんの器官ができる期間

例えば赤ちゃんの中枢神経は、妊娠週数4週から8週の間にできあがります。 つまり、該当時期に中枢神経に影響のある薬を飲んだのでなければ、異常が起こりにくいと考えておいていいでしょう。逆に考えれば、やはり4週から16週までの、器官形成の時期に飲む薬については慎重に考えたいものです。

4.妊娠中、常に留意したい薬

この時期をすぎれば一部の胎児毒性を持った薬剤を除いて危険はなくなります。この胎児毒性を持った薬剤に属するものとしては非ステロイド性消炎鎮痛剤、抗生物質(テトラサイクリン系・アミノグルコシッド系・マクロライド系・クロラムフェニコール系)、サルファ剤、男性ホルモン、抗利尿ホルモン、抗甲状腺剤、副腎皮質ホルモン、ベンゾジアゼピン系トランキライザーなどがあります。

5.対応を考える

妊娠初期の催奇形性を考える場合、薬剤を飲む前と飲んでしまってからでは別に考える必要があります。

薬剤を飲んでいいかどうか? 薬剤を飲むことによって得られる利点が、その薬剤が持っている副作用(催奇形性)より大きいか否かを検討して決めます。

すでに飲んでしまった場合の心配は? 内服した妊娠週数と薬物が何かによりますが、2で述べた(a)(b)(c)(d)に属する薬剤は個々に検討することになります。(d)の薬剤はまず心配ないと考えていいのです。

胎児の奇形について

自然から授かった赤ちゃんがみんなそれぞれ1人1人違った個性を持っているように、身体的にもその人に固有のものがあるとして、社会全体で受け入れていくのが理想だと思います。

嗜好品摂取についても一言

主要な嗜好品については、妊娠の全期間において、コーヒーは1日に5杯までは影響はなかったこと、タバコは1日に30本以上では低出生体重児・早産の頻度が高くなること、アルコールは大量の飲酒(慢性アルコール中毒の状態)では胎児アルコール症候群が発生する可能性があることなどが分かっています。

嗜好品摂取についても一言

主要な嗜好品については、妊娠の全期間において、コーヒーは1日に5杯までは影響はなかったこと、タバコは1日に30本以上では低出生体重児・早産の頻度が高くなること、アルコールは大量の飲酒(慢性アルコール中毒の状態)では胎児アルコール症候群が発生する可能性があることなどが分かっています。

それでも心配な時

妊娠初期に薬を飲んでしまった場合、このような基準で担当の医師から説明を受けても、まだ妊娠を続けるのが心配という場合があるかもしれません。そのような場合には次のところへ相談するという手段もあります。いずれにせよ、自分が何の薬を飲んでいるのか、処方箋を保管するなどして把握しておくことが必要ですね。

薬についての相談先:

虎の門病院 薬剤部 医療情報科

相談の手順

1)電話で申し込む:03-3588-1111(代表) 受付時間:月~金 9:00~16:30

2)郵送されてきた申込用紙に薬剤名と内服期間を記入し、返送

3)7~10日後に連絡を受けたら虎の門病院産婦人科外来を指定の日に受診

(1998.09)

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