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妊娠の可能性のある女性と葉酸について

堀口貞夫:幸せなお産

「葉酸」とは?

数年前のことですが、妊婦さんが葉酸を摂取するようにしようという記事がマスメディアに流れたのを記憶しているでしょうか?葉酸というのは、ビタミンの一種です。ビタミンは体内に取り込んだ糖質・たんぱく質・脂質の三大栄養素やミネラルを、私達の体に適した成分に変えていく時の化学反応を、円滑に進めるのに必要な物質で、体の中で作ることの出来ないものです。(同じように大切な役割を持っているけれど、自分の体の中で作れるものがホルモンです)。

葉酸は、細胞の発育および機能を正常に保つために必要で、特に赤血球の正常な形成に大切なものです。葉酸が不足するとある種の貧血をおこすので、もともとは大球性貧血や悪性貧血の治療に使われました。また、この葉酸は、妊娠中、成長期、癌などの悪性腫瘍にかかった時などに消費が増加するために、葉酸欠乏をおこしやすいのです。

葉酸の効果

最近話題となったのは、妊娠の極めて初期に葉酸欠乏があると、中枢神経の奇形が少し増加することで注目されたのです。異常というのは、無脳症、脳瘤、二分脊椎などの神経管閉鎖障害のことをいいます。

日本産婦人科医会は30年ほど前から、生まれて1週間以内に診断できる赤ちゃんの外表奇形の調査を続けています。平成12年と13年併せて18万4657の出産の中で神経管閉鎖障害の赤ちゃんは142例(9.98%)でした。この中で妊娠中に葉酸を積極的に摂取していた妊婦さんは、わずか21人でした。もし葉酸を摂取する人が増えればこのような神経管閉 鎖障害の発生を減らすことができると思われるのです。

実際に、妊娠中に葉酸を摂ることを積極的に奨めているイギリスやアメリカでは神経管閉鎖障害の頻度はおよそ十分の一に減少しているのです。

平成12年12月に厚生省の母子保健課(当時)が「神経管閉鎖障害の発生リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係わる適切な情報提供の推進について」という通達を出したのは以上のような理由によってです。

(ちなみに唇裂口蓋裂の頻度は1,254/162万7954=9.977%です。)

このように大切な栄養素を通常は何からとっているのでしょうか?

葉酸はキャベツ、ホーレン草、パセリなどの緑色野菜や酵母、肉、肝臓など多くの食物に含まれています。従って和食を基本とする日本人の場合、食事の食品構成に気をつければ一日0.4mgの葉酸摂取は可能と思われます。欧米の食事で摂取出来る葉酸は一日に0.2~~0.3mg程度なので、神経管閉鎖障害の発生予防のために葉酸の補充が進められたのです。

神経管の発生は受精直後から始まり、妊娠7週までに終るので、この時期に充分な葉酸摂取が必要ということになります。

妊娠可能年齢の女性に必要なのは、十分な情報提供

通常、「妊娠かな」と疑うのは妊娠4~5週ですから、この時期から葉酸を摂取しても少し遅いので、前述した厚生省の母子保健課(当時)の通達のタイトルのように、妊娠可能年齢の女性に充分な情報提供が必要で、妊娠の重要さについて認識してもらおうということなのです。

これは葉酸に限ったことではなく、喫煙、アルコール摂取、ドラッグ、各種の感染症、治療用の薬物などの影響を避けようと思えば「妊娠可能年齢の女性は」これらのことに注意すべきということになるのですね。

(2004.05)

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