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堀口貞夫:幸せなお産
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妊娠・子育て中のタバコの害

堀口貞夫:幸せなお産

若い女性の喫煙率の増加

最近気になっていることのひとつに、若い女性の喫煙の増加があります。20~70歳で半年以上続いている喫煙者の割合は、女性が15%から10%に、男性は75%から60%に低下していますが、20歳台の女性に限ってみると9・8%から20・1%へと増加しているのです。

妊婦さんの喫煙について2999年に行なわれた調査(*1)でも、15~19歳の妊婦さんでは喫煙率が34・2%、20~24歳では18・9%、25~29歳では9・9%、30~34歳では6・6%、35~39歳では6・3%、40歳以上では8・5%で、やはり若い妊婦さんほど喫煙率は高くなっています。

別の調査(*2)によると妊娠前には13・9%だった喫煙率が、妊娠中だと4・4%と少なくなりますが、出産後も5・3%の喫煙率が続いています。妊娠したことで胎児への影響を考えてタバコをやめる人も多いのですが、喫煙を続ける人、あるいは“つわり”による嗜好の変化のために喫煙を始める人も、少数ですが見られます。

調査(*1)では妊婦さんの夫(および同居者)の調査もしています。それによると喫煙率は45・7%です。

胎児への影響を考える場合、日本の女性の喫煙率は欧米諸国に較べて低いのですが、他人のタバコから上がるけむり(副流煙)=受動喫煙の影響も明らかにされており、家庭では夫からの、職場では同僚からの受動喫煙も考えなければならないのです。

タバコが与える胎児への影響

タバコを吸っていると、赤ちゃんの生まれた時の体重が小さいと言うことはお聞きになったことがあると思います。1日に10本以上吸うと平均299gm小さく、低出生体重児の生まれる割合は2倍になります。流産率は1・5倍になり、お産時の異常は、前置胎盤が2・9倍、常位胎盤早期剥離が1・8倍、出血が1・5倍となってしまいます。このため、周産期死亡率は1・2~1・4倍の増加が見られます。

このようなことが起こるのは、ニコチンの血管収縮作用が子宮の血流量を減少させること、一酸化炭素は血液中のヘモグロビンとの結合力が強いため酸素の運搬能力が落ちてしまうことが原因です。言うなれば子宮の中に供給されるべき酸素の量が減って、胎児や胎盤の低酸素状態を起こしてしまうために、上に挙げたようなさまざまなお産の異常を起こす可能性が出てくるのです。

妊娠前に禁煙すれば、このようなことは起こりません。また、喫煙していて妊娠に気がついた時、妊娠3~4カ月までに禁煙できれば低出生体重児のリスクは下がることがわかっています。先天異常についてはまだ結論は出ていないようですが、“口唇・口蓋裂”と“心臓の異常”には喫煙が関係するのではないかと疑われています。

夫がタバコを吸っている場合、妊婦の頭髪のニコチン濃度が高いこと、低出生体重児発生の相対危険度が1・7倍になると言う報告があります。

タバコが与える新生児、乳児への影響

タバコが与える新生児、乳児への影響については、母乳を通しての影響と受動喫煙の二通りについて考える必要があります。

授乳中の母親がタバコを喫うと、乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)濃度が低下し、母乳の分泌量が減る可能性があります。また母乳中のニコチン濃度は喫煙本数が多ければ増加し、一日に20本以上喫うと、その母親の母乳を飲んだ子どもは不眠、嘔吐、下痢、頻脈などの症状を示すことがある、と言う報告があります。

受動喫煙では、肺炎・気管支炎に罹りやすくなります。片親が喫煙している場合だと喫煙しない家庭の1・5倍、両親とも喫煙している場合では喫煙しない家庭の2・3倍かかりやすくなるという報告があります。また、蕫乳児突然死症候群の発生する確率(危険度)﨟はタバコを出産後に吸ったグループでは、吸わないグループの2・2倍に、妊娠中と出産後を通じての喫煙している場合では吸わないグループの4・977倍になります。

また両親、あるいは片親に喫煙の習慣がある場合、子どもが喫煙習慣を持つようになる頻度が高いことも明らかになっています。これは将来の喘息、肺気腫、慢性気管支炎や肺ガン、喉頭癌、萎縮性胃炎、歯周囲炎、骨粗鬆症、心筋梗塞などの虚血性心疾患の頻度を高くすることになります。

母親自身にとっても、喫煙者が卵胞ホルモンを服用すると、虚血性心疾患の頻度が3・2~4・4倍になるために経口避妊薬やホルモン補充療法への道を閉ざされるのです。

参照:

『たばこがやめられる本』斉藤麗子、女子栄養大学出版部 2999年2月

『乳幼児身体発育調査』厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課 2991年(*1)

『女性の喫煙対策』 斉藤麗子 日医雑誌 116ー4ー491~494 1996 (*2)

「喫煙と健康」喫煙と健康問題に関する報告書 第2版 厚生省編 1993

(2002.02)

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